第11話 恋愛事情
七月になった。半袖の人が増えてきた。
新川さんは、小泉さんと海老原さんと三人でしょっちゅう合コンに行っているらしい。
合コンと言ったら語弊があるだろうか。
ほぼ会社の人との飲み会らしいが。
なんといっても美女三人組だ。彼女たちとご一緒したい男子社員が後を絶たないらしい。
私は東北支社の人たちとも飲みに行く回数が増えて、段々仲良くなってきた。
さすれば恋愛事情もちらほら聞こえてくる。
ある日、絢芽が残業になったので私は一人で帰っていた。
何百人の社員が一斉に帰る。
私の後を歩いている女子社員二人の会話が聞こえた。
「ああいう子が好きなんだね」
女子社員二人は、小泉さんと海老原さんだった。
ああいう子、とは多分新川さんのことだろう。
そして、小泉さんと海老原さんが深田さんに想いを寄せているのも知っている。
私は地獄耳なのだ。
次の日の夜、絢芽が私の部屋へ来た。
明日は休みだからお酒を飲もうと言い、つまみとお酒を持参している。
何か話したいことがあるのだろう。
どうやら絢芽も深田さんを良いと思っているらしい。
どうして皆、深田さんが良いのだろう。
確かにルックスは俳優レベルだし、仕事もまぁエリートだろう。
けれども一緒に仕事をしたら一発で目が醒めると思う。
そこはやんわりと言っておいた。
「仕事は仕事、別だよ」
絢芽はそう言ったが、私と同じ状況になったら絶対に絢芽はキレるだろう。
そこは言わないでおいた。
何故か私の仕事だけ、深田さんが関わる率が高い。
他の人に「いいなー」と言われるので本気で変わろうかと言いたくなる。
しかし今から変わっても大変なのでそれは冗談としておく。
「深田さん、新川さんのことが好きぽいんだよね」
絢芽の洞察力は物凄い。予知能力があると言ってもいい。その絢芽が言うのなら間違いないだろう。
先日聞いた小泉さんと海老原さんの発言は、私の予想通りか。
よし、岸田さんも呼ぼう。三人で飲むことにした。
「岸田さんのお気に入りのメンズは誰ですか?」
絢芽がいきなり聞いた。
岸田さんの答えた人が、よく解らない人だった。
私は関わりがない人だったが、絢芽は知っているようだ。
たくさんのヒントをもらい、なんとなく予想がついた。多分あの人だろう。
来週出勤したら、第一にチェックすることが決まった。
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