第8話 気分転換

 退勤時間になった。

 毎日の仕事量が段々増えてゆくので一日があっという間だ。

「碧、今日寄り道していかない?」絢芽に声をかけられた。

 深田さんで嫌な思いもしたし、気分転換しよう。

 

 六月の仙台は結構暑かった。

 私たちはどの飲食店に入ろうか、迷っていた。

 そこへ岸田さんが来た。

 皆同じアパートに住んでいるのだから、同じような時間に駅にいるのは当然だろう。

「岸田さんもご一緒しませんか」

 私と絢芽、どちらが先に言ったのか解らなかった。


 私たちはお洒落なカフェに入った。

 お店の看板メニューを頼んだ。

 簡単に言うとシェークみたいなシャリシャリ感のある冷たい飲み物に、生クリームやクッキーがトッピングされている。

 見た目が派手だった。

 トッピングを追加で選べるらしく、私は苺とチョコレートを追加した。

 絢芽は生クリームを倍にしていた。

 岸田さんはフルーツをたくさん載せていた。凄いボリュームになっていた。


「夜ごはん前にそんなに大丈夫ですか?」

 私は本気で心配していた。

「平気よ、私食べる量が凄いの」

 岸田さんは、にこにこして答えた。

 おっとりそうに見えて大食いなのかぁ。

 そういえば岸田さんとあんまり話したことがない。

 会社にいる時は皆自分の仕事に追われているし、昼休みは絢芽と過ごしている。

 

「新川さんは一緒じゃないんですか?」絢芽が岸田さんに聞いた。

「新川さんは会社の人と飲みに行ってると思う。よく誘われているみたいだから」岸田さんは微笑んで答えた。

 会社の人? 誰だろう。

「多分データの人か、設計の人か。若くて可愛いから色んな人に誘われているみたいよ」

 岸田さんが私の疑問を察知してくれた。


 そうなのか、私の知らない間に東北支社の人たちとそんなに仲良くなっていたのか。

 若くて可愛いだけではない、彼女の人なつこい性格もあるのだろう。

「ふーん、なんか面白そう。今度私たちもついてこうね」

 正直でマイペースな絢芽の発言には自然と笑みがこぼれる。


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