第5話 最初の一週間

 東北支社に来て最初の一週間はあっという間だった。


 これから仕事で関わる人たちとの顔合わせ。

 担当になった仕事の説明。

 東北支社でのルールなど。

 歓迎会も開いてくれた。


 アパートは、一人一部屋。四人とも同じアパートで心強かった。

 今まで実家暮らしだったので、家事に追われていた。

 なるべくたくさんの具材を煮込んだりして一皿で済ませるようにしていた。

 栄養と時短、両方を叶える為に思いついた精一杯のアイデアだ。

 お茶はインスタントを飲んでいた。


 東北支社は、昼休みが長かった。

 青森支社よりも十五分長かった。

 昼食を終えた男子社員が、中庭でスポーツをしている。

 ひなたぼっこしている人もいる。

 なんて健康的なのだろう。

 女子社員はトイレでお化粧直しの時間だ。

 ドラマでよく見る都会のOLだ。


 通勤時の服装もドレスコードがあった。

 オフィスカジュアルとかいう、スーツより少しカジュアルめな服装。

 社内では制服に着替えるのだが、近隣住民の方に良い印象を与えるためにドレスコードが設けられている。


 私はユニクロで揃えた。線が入ったアンクル丈のズボンにブラウスにジャケット。

 靴はローファーを履いている。無難だろう。


 新川さんはよくスカートを着用していた。

 先日、春の風が吹いた時、新川さんの白いチュールスカートがふわっと巻き上がった。

 新川さんはスカートを押さえようともせず、平然としていた。

 

 一週間ほど経つと、少し周りが見えてきた。

 東北支社の人たちはコミュニケーション能力が高い。さすが都会、さすがエリート。

 他部署の人とも関わることが多いので、居室の中は様々な部署の社員がいる。

 皆和気あいあいとしている。

 この時の私にはまだ、暗い影は見えなかった。



 

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