天使が宿る場所
天使とアクマ
そのむこうには、青く
白と青との
ここはミンヨウ大陸トップクラスの高級リゾート地、チョイト。
アデッサとダフォディルはメインストリートのなかほどにある見晴らしの良い公園から、この地方特有の白い家々とミンヨウ大陸最大の湖であるチョイ湖をながめていた。
公園は屋台の店主たちの
さすがは高級リゾート地だけあって行き交う人々もみなお洒落だ。
だが、その
アデッサは寂しそうな目で、その小さな影をぼんやりと見つめている。
「アデッサ。もうお
ダフォディルは冷たい声でポツリとつぶやいた。
アデッサの視線の先の小さな影は、ボロ服を着た
ボロを着た子供を見ると、二人ともどうしてもホイサでのソイヤとのことを思い出してしまう。
ダフォディルだって鬼ではない。優しい心も思いやる心も持っている。ソイヤのことも残念でしかたない。
だが、旅先で見かけるすべての不幸な子供たちをいちいち救っていたのでは
「……うん、わかってる」
アデッサの気のない返事にダフォディルはフッと小さくため息をつく。そして、パッと気持ちを切り替えると、上機嫌の顔を取り戻し、重くなってしまった空気を変えようと――
「ねえ、あそこの屋台で『ドラゴン・チュロス』を買ってくるわ。待ってて」
と、軽い口調でアデッサに言い残し、屋台へと走っていった。
しかし、ダフォディルが去ると、アデッサの寂しげな視線はふたたび、ボロを着た子供たちへと吸いよせられてゆく。
みな、首から募金箱のようなものをさげて行き交う
白い家々と爽やかな青い空を背に繰り広げられるそんな光景に、アデッサはやりきれなさを隠せなかった。
すると――どん。『おまえジャマなんだよ!』と、一人の体格がよい男の子が、小さな女の子をはじきとばすのが見えた。
男の子はすぐに、つぎの旅行者へ向かって走りだす。
女の子はよろよろと立ちあがった。稼ぎが悪いのか募金箱はからっぽで、その表情は消えいりそうなほどに弱々しい。これからどうすれは良いのかわからずに、迷子のように不安げで、目からは涙がこぼれそうになっている。
首から下げられた
女の子の心のなかに悲しい気持ちが満ちてゆくのが見てとれた。
ふわりと、その頭をなでる優しい手。
「大丈夫か」
アデッサは女の子の前にしゃがみ、笑顔でそう言った。
女の子はびくっとおどろいて顔をあげる。そして、目のまえの優しい笑顔に安心して、いままで
その涙をボロ着の袖でぬぐうと、
「ママが病気なの。ママが……ママが病気なの」
声をあげまいと必死にこらえながらも、伏せた目からは大つぶの涙がぽたぽたとあふれていた。
次の瞬間。じゃらりという音とともに、女の子がかかげた募金箱がズシリと重くなる。突然のできごとに、女の子は軽くよろけた。
募金箱に入れられた財布をみて、女の子は目を丸くする。涙はぴたりと止まっていた。
「そのお金でママをお医者さまへ
女の子が募金箱から顔をあげると、目に涙をうかべるアデッサの優しい笑顔があった。
「おねえさん、天使さま?」
アデッサは涙をそっと拭きながら『ふふっ』と笑い、こたえる。
「いいや、普通の人間だよ。いいかい、世の中には悪くて意地悪な人間もいるけど、優しい人間もいるんだ。もし、誰かに優しくされたら、今すぐじゃなくてもいい。いつか君ができるときに、誰かに優しくしてあげるんだ。いいね?」
女の子はだまってうなずいた。
「よし。悪い大人や意地悪な男の子にそのお金をとられないように注意をするんだよ。もし、お金を取られそうになったらこういうんだ。『このお金に手を出したら瞬殺姫に言いつける』と。そして私のところに来なさい」
女の子はもう一度うなずくと、人混みの中を走りさっていった。
女の子の背を見まもるアデッサ。さっきまで曇っていたその顔は、チョイトの青い空のようにスッキリと晴れわたった――のも
「ほほう……」
アデッサは背後に悪魔の殺気を感じてピクリと固まる。
振り返らなくても誰かはわかった。
名物スイーツの『ドラゴン・チュロス』を両手に持ったダフォディルだ。
「いや、ダフォ、これにはわけが……そのぉ、ママが病気で……」
「いくらあげたの」
「?」
「あの子にいくら
「……ぜんぶ」
「?」
「持ってたお金、全部あげちゃった」
「……」
「……」
「いやあああああああ!」
チョイトの
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