第4話 覚悟の違い

 その日は、雲一つない快晴だった。

「秋晴れの見本みたいだな」

 新しく新調したスーツに身を包んだ中村が、俺の横でつぶやいた。

「ああ。本当にいい天気だ。というか、これは突っ込んでいいところだよな。お前、このスーツにいくらかけたんだ」

「いや、あおぞら商店街だぞ。セレブが集いし街に行くのに、いつものおんぼろスーツじゃみっともないからな。お前こそ、ドレスコードに引っかかるんじゃないか」

 中村は、俺の一張羅のスーツを指さした。

「本当は俺も新調したかったんだが、どうしてもお金がなかったんだよ。そもそもチケットにはドレスコードはありませんと書いてあるから、入れないということはないだろう」

「甘いな。そうはいっても、お金持ちの紳士淑女の皆さんは、TPOというものをわきまえていらっしゃるんだよ。ドレスコードがないからと言って、ジーンズにパーカーということはありえないだろう」

「それは分かっているさ。だから、俺だってスーツを着ているんだ」

「まあ、いいさ。俺は、このチャンスを活かしたいと思っているんだ。セレブの皆様とお近づきになる機会を得たいんだよ」

 中村は空を見上げていた。中村の家は決して裕福ではない。大学の学費も、奨学金だけでは賄えないので、いくつかのアルバイトを掛け持ちしている。その上で、勉強にも手を抜かない。俺と見ているものが違うんだろう。何が何でも今の生活から抜け出していきたいのだ。俺はどうだろう。俺の家も裕福だとは言えないが、中村ほどではない。今の生活に不満はあるが、真剣にどうにかしたいと思っていない。中村の気概に俺は少しばかり恥ずかしかった。

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