2話 わたくしの住む世界

 この国は、シャンデリー王国という名の国です。王族が統治する王制の国家なのです。王族の名は勿論、シャンデリーという名の一族になります。そうです。この国は、貴族が存在する国なのです。わたくしの家も他でもなく、貴族の一族です。然も運の良いことに、上位の貴族なのです。


この国の貴族は、王族、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵の順に位が分けられていて、王族が一番上で、男爵が一番下となっておりますのよ。わたくしの家は侯爵家となりますので、上から3番目の位になるのです。2番目の位の公爵は、同じ読み方となっておりますけれど、意味は全く異なります。その為、位の順位も変わってしまうのです。


公爵家とは、王族の方々が王位から離れる時に、授かる位なのです。王族出身の方を、我が侯爵家に嫁入りさせたとしても、公爵とは名乗れないのです。

つまり、王族と一番血の繋がりが濃いのが、公爵家となる訳ですね。その点から言いますと、王族の血の繋がりがなくとも、王族以外の貴族では一番上の位になるのが侯爵なのですわ。わたくしは、その侯爵家の1人娘なのです。


貴族の位が低くなる程、身分だけではなく、裕福かどうかという、家の金銭具合も変わって来ますのよ。伯爵までは案外裕福なのですが、子爵や男爵の位になると貧乏過ぎて、下手をすれば商人の家の方がお金持ち、ということもあり得るのです。勿論、に、商売を始めて成功したという子爵家や男爵家も、稀にありますが。ただ自分の領地を治めているだけでは、裕福度が伯爵位までとは、断然違ってくるのですよね。領地の大きさも豊かさが、ず違いますからね。


王家から領地を賜った当時に、高位の順で豊かな領地を配分されていくのですから、低い位になればなるほど、領地の豊かさが悪くなって行く訳ですのよ。

そうなれば当然の如く、採れる作物の量も異なりますし、天候次第では大きく左右されたりしますし、なるべく豊かな土地の方が優位ですわね。うちの領地は広くて実り豊かないい土地ですから、領地経営だけでも十分やっていける、というお家柄ですわね。


という訳で、わたくし自身も、高位のお嬢様として既に扱われておりますのよ。

わたくしには生まれる前から、婚約者となるべくお方が、既に決まっておりましたわ。一応、婚約者候補ということになっておりましたが、いずれは正式に決まるというものでして、わたくし個人では断ることが出来ないぐらいには、決定しているのですのよ。ただ表向きには、まだ正式には発表されておりません。


この国での婚約というものは、一度正式に決まってしまえば、例え本人であろうと、お家同士のですから、婚約破棄にするのも大変なことなのです。

然も、この国での女性の扱いは、婚約破棄は今後の人生を左右する、と言っても過言ではないのですわ。それだけに、女性にとっては一生を変えてしまうものなのです。ですから、我が侯爵家もお相手がお相手ですから、まだ正式には発表したくないと隠しているだけなのです。実際のところは……。


わたくしのお相手の婚約者様(仮予定)は、何と公爵家のご長男で、嫡子なのですのよ。将来、公爵家を継がれるお方ですから、わたくしは公爵家に嫁ぐこととなりますわね?…つまり、わたくしは、将来の公爵夫人という訳なのです。公爵夫人となれば、色々と先頭に立って目立たなければなりませんから、覚悟だけでは出来ないこともありますでしょうね?まあ、わたくしは…そのようなお勉強を、既に受け始めておりますけれど。自信があるかないかでしたら、とお答えしますわ?


因みに今は1人娘のわたくしなのですが、実はお母様は妊娠中なのです。まだお腹に宿ったばかりとのことですから、生まれてくるのはまだ先なのですが。

わたくしは一人っ子でしたから、兄妹が出来るのは初めてなのですよね。

……というか、わたくしが一人っ子?……前にも?まるで…あの夢の続きのような記憶…?また…混乱して来そうです。


わたくしは、物心ついてから、ずっとこのような調子なのです。突然降って湧いたような、が時折混じってくるのです。両親も我が家のメイド達も、皆さん困惑したようにわたくしを見るのです。そんな時に、わたくしのお話を唯々、黙って聞いてくださる方が、お1人だけいらっしゃるのですが、わたくし本人からしても、本当に途方もないお話を良く聴いてくださるかと。逆に…いつも感心致しますのよ。わたくしにとっては、有難いことなのでしょうけれど。






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 わたくしの名前は、カノンフィーユ・アルバーニ と申します。今現在の年齢は4歳で、もうすぐ誕生月を迎えます。今は9月なのですが、わたくしの誕生月は10月ですので、あと15日ほどで誕生会を行うことになっています。この国では14歳になれば、大人と同じ扱いとなりますから、14歳の時には盛大にお誕生会を開きまして、その場で初お披露目されるのです。それまでは、お誕生会も家族で行うものか、知り合いのお家でのお茶会ぐらいしか、出席できません。


お友達として知り合いの方々でしたら、自分のお誕生会にご招待できますし、反対に招かれたりもするのでしてよ。但し、14歳のお誕生会には、知り合いではない方々も大勢の方々をご招待して、自分の存在を、自分の家の身分を、大いにアピールするのです。ご招待するのは、この国の貴族を全員招く、と言っても言い過ぎではないぐらい、自分の家に優位な立場になるよう、これまでお付き合いがないお家にも、招待状をお送りしますのよ。


勿論、紹介状が届いたからといって、ご自分に有益ではないと思われれば、断りの返事を出すことも可能ですわ、理論上は。まあ、実際には上位の方からご招待を、断れる家柄の方は少ないでしょうね。実際に断るとするならば、対等の立場の家柄のお家か、若しくは…自分よりも低い家柄のお家でしょうか?それでは、男爵家のお誕生会には、上位の貴族は誰もいらっしゃらないのか、と思ってしまいますけれど、実際には…男爵家がご招待することの方が、難しいというお話なのですわ。


男爵家ともなれば、上位の貴族のようには、沢山のお客様を持て成す為の、資産の余裕が余りないのです。子爵家でも厳しいというお話を、耳にするくらいですからね。では、どうするのかと申しますと、ご自分の家でご招待できる限りの、ご自分の家に結び付くお家の方を厳選して、招待状を送るのです。その殆どは知り合いであり、細くても繋がりがありますから、無下にされることはございませんのよ。


確実に来るお客様だけを呼ぶ形になりますから、お料理も余る程沢山、用意しなくても良いのですし、それだけでも色々と経費も抑えられますのよ。そのことから言いますと、上位の貴族は無駄な出費を、大量に出しているということになりますわよね?から考えますと、本当に…勿体ないことですのよ。…また、わたくしは…記憶が混じっておりますわ。…以前の生活とは……何なのでしょうね?


貴族である以上、14歳のお誕生会の後は、他の大人達に混じって、夜会にも出席しなくてはなりません。全てに出席する必要はありませんが、お付き合いのあるお家が主催する夜会には、全く出席しないという訳にもいきません。特に正式な婚約者が決まっている方々は、2人一緒に出席しなければならないのです。わたくしのように公爵家に嫁ぐ予定があるのなら、特にですわね。公爵家の人間が、他の貴族を無下にするということは、他の貴族もという状況になってしまいます。


公爵家のような王族の血を引くお家は、他の貴族にも多大な影響を与えるのです。

因って、軽々しい行動をすれば、冗談だったでは済まされない訳で。たった1回の失敗が、自分の首を絞める行動にもなり兼ねない、ということも過去にはあったそうでして。この国での貴族の行動は、周りから見張られていると思って、慎重に行動した方がいいでしょうね。財産や勢力を持っている分、何か重要な事態が起これば、責任を負わされるも大きい、というべきでしょう。


公爵家だから見逃されることもあれば、公爵家と言えども処罰を受けることもあるでしょう。それは…決して貴族だけの問題ではなく、王家も許されない問題が起こせば、個人的に処罰も下されるのだと、教育上で聞かされております。富も実力も持っていてしても、大勢の国民という貴族以外の庶民や商人達には、勝てないこともあるのです。貴族以外の国民を本気で怒らせれば、暴動が起こり国が滅ぶ切っ掛けにもなる程の、となることでしょう。


ですからね、貴族として常に、自分の領土の民を大切にする必要があるのです。

国民を守るのは王家ですから、わたくし達貴族は、領民を守るのが仕事でもあるのです。我がアルバーニ侯爵家は、領民の意見にも耳を傾けるよう、努力しておりまして、侯爵領の領民とはとても良い関係を築けておりますわ。流石に、貴族の行事に参加はできませんが、民は民でお祝いに託けて、商売をしたりお祭り騒ぎをしたりしていますのよ。それで、領民達の生活がより潤うのなら、大歓迎ですわ。


わたくしが自分の誕生会に関して、何もすることはありませんが、我が家の従者やメイド達は、忙しく働いております。領民が住んでいる我が領地にある町でも、お祝いという名のお祭りをするそうですから、出店などの準備で、町も賑わっていると、ララが話しておりましたわ。お話を聞くだけで、楽しそうで……。


お祭り…という言葉に、何故なのか、わたくしはとても懐かしくて、それと同時に、程の悲しみが…押し寄せたのでした。

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