こうして引き金は引かれた
Side 闇乃 影司
――殺してくれて・・・・・・ありがとう。
――どうしてこんな目に・・・・・・
――なんで、産まれてきたのかな・・・・・・
必ず悪夢が蘇る。
実験と称して処分してしまった人間達の最後が蘇る。
それだけではない。
凛堂学園での霞と小春の死
それを引き金とした暴走。
自分は今何をしている?
何のためにこんな事を?
仲間のために?
倉崎 稜のために?
自分のために?
セレナのために?
分からなくなってきた。
答えは誰も出してくれない。
自分で出すしかない。
だが出してしまったら――セレナが死ぬ。
そんな確信めいた予感があった。
セレナはなぜ死ぬ?
どうしてだ?
☆
Side 浅野 セレナ
耐えられなかった。
何度も何度もレイプされた。
この悪魔の施設で出来た仲間も殺すハメになった。
地獄よりも地獄かもしれない。
そんな場所で生き抜いた。
私がここに来た理由はお金と妹のエミの治療費、治療方法の提供。
悪魔の誘いと分かった時には既に遅し。
本気で後悔した。
妹と心中した方がよかったのではないかとも思った。
そして――限界が来た。
簡単だ。
エミは治った。治療された。
そして見せつけるように慰み者になって壊れてしまった。
セレナはエミを抱きしめる。
「この妹すぐに壊れちまってよ」
「真実明かしてもお姉ちゃん、お姉ちゃん助けてっていってさ――」
「その動画あるけど見せてやろうか?」
私は迷うこと無く、刃向かった。
だが体に痛みが――電流が走った。
「まあお前も貴重なサンプルらしいしな。なにしろ闇乃 影司って言う化け物と直接交わった人間だ」
「あいつは――」
私は言った。
「あいつは化け物なんかじゃない!! お前達の方がよっぽど化け物だ!! 地獄に落ちろ!!」
そして再び電流を流される。
「ちっ、科学者のお気に入りだからっていい気なもんだぜ。お前も替えが効く一山幾らの人間でしかないのによ」
それでも私は刃向かった。
もう死んでもいい。
刃向かって刃向かって刃向かい続けた。
このまま電流流され続けてくたばるのならそれでもよかった。
「おい、電流流れ続けてるんだよな!?」
「どうしてだ!?」
「まさかこいつ――闇乃 影司に抱かれまくった影響で――」
奇跡が起きた。
電流を浴び続けても痛みが――いや、電流その物がエネルギーに変わっていく。
「はははは・・・・・・もう私には守る物も何一つ無い・・・・・・殺してやるよ」
「ま、まままま待て、闇乃 影司がどうなっても――」
周囲の大人達は先程までの高圧的な態度が嘘のようだ。
だがセレナは鼻で笑った。
「それ脅しのつもりか? 効くけどあいつを殺す方法はあるのか? それとも他の連中を脅しの材料に使うか?」
そこまで言って「クソ!! 殺せ!!」と決断した。
瞬間に次々と狂ったようにセレナは素手でグシャグシャにしていく。
人体改造され、サイボーグとなり、闇乃 影司の御蔭で突然変異した自分の体は変身前のセレナでもこれぐらいは容易く出来た。
「ははは・・・・・・こんな奴達の言う事に従っていたのかよ」
「た、頼む――殺さないでくれ――」
「そう言ってきた奴をお前は何人殺した?」
そう言ってセレナは命乞いした奴の頭を潰した。
そのところで警報が鳴り響いた。
「あの世への門出には相応しいじゃねえか・・・・・・一人でも多く道連れにしてやる!!」
セレナは生きてここから脱出出来るとは思っていなかった。
一人でも多く道連れにする。
その事しか頭になかった。
☆
Side 闇乃 影司
闇乃 影司もまた暴走が始まっていた。
キッカケは簡単だ。
自分の体はこの短期間のウチに変異、成長を繰り返し、今では基地のネットワークに接続し、基地の監視カメラの画像をハックできるまでになったのだ。
そこでセレナの暴走の一部始終を垣間見た。
――これは地獄の始まりでしかない。
――死んだ方がいい地獄の道は続く。
――それでも足掻き続けろ。戦い続けろ。
――それが闇乃 影司の宿命だ。
自分の声とよく似た誰かの声が影司の耳に届いた。
だがそんな事はどうでもいい。
自分に仕掛けられた"安全装置"を痛みに構わず全部破壊し、
邪魔する奴は殺し、時には壁を破壊してショートカット、
白い二本角、悪魔のような顔、ポニーテールにして垂れ流した白い髪の毛、長いサイドヘア―、大きな肩のプロテクター、昆虫のような羽。有機的な背格好でヒーローと言うより悪魔、あるいは凶悪な外観の地球外生命体と言う言葉が相応しい外観となりー
最短で、一直線で、セレナのもとに向かう。
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