第19話 夏・海・BBQ
放課後。
本田君が嬉しそうな顔で話しかけてきた。
「喜べ月宮。参加者8人になったぞ」
「え、日程とか決まったの?」
「7月最後の週末だ」
僕は何も聞いてない。里奈は聞いてるのかな?って言うか、上原さんのお爺さんにちゃんと聞いたのだろうか。
「上原さんがさっき電話して聞いてくれたよ。いつでも大丈夫だって。一応、仮予定を入れてもらってる」
「みんなはその日でOKなの?」
「だからお前にも聞きに来た。平気だろ。月宮も参加な」
勝手に決めないでもらいたい。僕も予定があるかもしれないだろ。親の許可も取らないといけないし。
「沢木さんもお前に合わせるって言ってたよ」
え、そうなの?里奈のほうを振り返り見ると爽やかな笑顔で頷いてる。
「はぁ、一応親に確認してみるよ。参加できなかったらゴメンね」
平気平気と本田君は帰っていった。何が平気なんだか。
「里奈、本当に行くの?なんかどんどん話が進んでいってるけど」
「多分平気なんじゃない?琴ちゃんに聞いたら泊まるのは大丈夫みたい。庭でBBQもできるし海も近いって」
「親の許可はでるの?」
「忍も一緒なら大丈夫だと思うよ」
「他に参加するのは誰?メンバー8人集まったって言ってたけど。そんなすぐに集まったの?」
朝決まって放課後にはメンバー8人ってすごいな。
「予定では本田君、琴ちゃんとうちのクラスの神崎君、あと琴ちゃんのクラスの今井さんと中川さんと津山君だって。あ、あと私たちね」
「本当に集まったんだ。とりあえず親に聞いてみないとわからないからね」
本田君の行動力を舐めていた。まさか一日でこんなに話が進むなんて。8人位だったら参加してもいいか。同じクラスの神崎君なら少しは話をする仲だし、上原さんと同じクラスの今井さん中川さんは話したことないけど知っている。津山君も同じく名前だけ知ってる。
「里奈はみんな知ってる人?」
「うん、全員知ってる。琴ちゃんのクラスの子たちは去年同じクラスだったメンバーだよ。津山君も同じクラスだったよ」
「そうなんだ。僕は上原さんしか知らないけど大丈夫かな」
「平気だよ。みんな性格のいい人たちだから」
それならいいんだけど。
家に帰り母親に旅行の話をした。特に反対されることなく許可が下りた。里奈にラインで報告する。里奈も許可を無事に取れたらしい。上原さんにもラインチャットでよろしくお願いしますといっておいた。
翌日。
放課後に旅行参加者の集まりがあった。まずは顔合わせをして大まかなスケジュールを決める。もう本田君がスケジュール決めるのでいいんじゃないかな。本人もやりたがってるようだし。
「それじゃ、旅行グループってライン部屋作ったからな。みんな参加していい案を出し合おう」
夜までに旅行案をだして夜にチャットする約束をした。
そしてその晩。
本「最高の夏になるような意見が欲しい」
神「海水浴」
上「泳ぎたい」
本「今決まってるのは海水浴、BBQ、肝試しだ」
中「肝試しやる場所あるの?肝試しってなにやるの?」
本「ペアで山中の神社に行く。神社の境内に何か置いておくから取ってくる」
津「ちょっと怖そうなんだけど」
上「小さい時によく遊んでたよ。家から10分位。山の中は真っ暗」
神「聞いただけで怖い」
沢「みんなで?一人で?」
本「2人づつで」
今「BBQはいつやるの?」
本「初日の晩」
本「流れ。出発→泳ぐ→BBQ買い出し→BBQ→肝試し→就寝」
本「起床→なんか→なんか→帰宅。てな流れだ」
沢「なにか??」
本「まだ決めてない。その意見を求む」
上「じゃぁそれは当日までに決めるのね」
月「最終日にお土産屋行きたい」
中「私も」
今「同じく」
神「同じく」
沢「同じく」
津「同じ」
本「おな……ってわかったよ。予定に入れておく」
本「しっかり考えてくれ。君たちの声がこの夏を作り上げるんだ!」
上「はーい」
それからしばらく雑談をしてチャットは終了した。
その後風呂に入り部屋に戻ると、スマホにメッセージが届いていた。里奈だ。
”旅行楽しみだね。また浮き輪でのんびりしようね”
それは楽しみだ。
”僕も海や温泉が楽しみ”
”そうだね。露天風呂一緒に入る?”
”そのつもりだよ”
”だーめー”
”なんだ、つまんないな”
”忍、エッチすぎ”
”水着もタオルもかわらないでしょ。僕は大人な男だからいつだって平常心だし”
”忍は子供だと思うよ。私のほうがお姉さんだから。背中流してあげるよ”
”期待しておく。おやすみ”
”おやすみなさい”
メッセージを終えてベッドに入った。
旅行当日午前8時。
僕たちは駅前に集合している。
これから電車に乗って2時間弱の移動である。
「よし、全員集まってるな。そんじゃいくぞ!」
「おー!」
本田君の声に上原さんだけが返事をする。お前らノリ悪いぞとブツブツ言ってるが、駅前の人通りが多い場所で叫ぶなんて僕にはハードルが高すぎだよ。
切符を購入して電車に乗る。座席は半分くらい埋まっていたが全員が座ることが出来た。女性陣は固まって座っており、男性陣はバラバラだ。
座ってるだけなので自然に僕は眠っていた。電車に揺られ1時間程で目が覚める。隣に座っていたおばちゃんがいつの間にか里奈に代わっていた。
「一人で寝てたから隣に来ちゃった」
周りを確認すると乗客はかなり減っていた。現状は4人席に女子3人と男子1人が。2人席に男子2人、あと僕と里奈が座っている。そしていつの間にか手をつないでいた。これ、バイトの時の癖だな。電車ではよく手をつないでるから。毎度なので里奈も慣れてしまっているのだ。
あと、40分ほどで目的地に着く。それまでは里奈と雑談しながら過ごそう。
目的地の駅に到着。
駅からお爺さんの家までは歩いて10分。駅前のロータリーを超え、まっすぐ海に向かった先にあるそうだ。お爺さんの家は海沿いあるそうなので、海水浴には丁度いいかも。
歩いて10分でお爺さんの家に到着。お爺さんの家は海水浴や釣り人を相手に民宿を経営していたみたい。お爺さんとお婆さんが高齢になったので、今は民宿の営業はしていないと。民宿の看板などはまだ残っている。ちょっと大きい普通の家みたいな感じ。まさに観光地にある民宿だな。
正面玄関を入るとロビーになっており、ソファーと大画面TVが置いてある。お爺さんとお婆さんが出迎えてくれた。
僕たちはお世話になりますと全員で挨拶をする。部屋は2階の大部屋2室を使うことになった。残念ながら男女別だ。温泉は24時間好きな時に入浴可能とのこと。露天風呂もあるらしい。温泉とかめっちゃ楽しみなんですけど。
荷物を置いて水着に着替えた僕たちはさっそく海に向かった。道路を渡るとすぐに海水浴場。最高の立地だろう。
「今は11時だ。泳ぐ前に昼ご飯食べるか?それとも混雑が終わった後の14時位にする?」
リーダー本田の問いに皆は昼食を所望。地元の食堂か海の家のどちらで食べるか悩む。せっかく海に来たのだから定番の美味しくないカレーやラーメンを食べる事となった。
海の家に入りそれぞれが注文をする。僕は定番のラーメンとおにぎり。里奈は焼きそばを注文する。
すぐに注文したものが出てくる。みんなでさっそく食べる。うん、普通に美味しい。
「美味しいな。海の家だからクソまずいのを想像してた」
神崎君の言葉を聞き、僕も同じことを考えていた。美味しくない料理が海の家の醍醐味だと思っていたが、やっぱり美味しいにこした事ない。
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