第8話 霊のおかげでバイトGETだぜ!
週が明けた学校。
教室に入ると沢木さんがやって来た。
「おはよう、月宮くん」
「おはよう、沢木さん」
クラスメイトからの視線がすごい。あの沢木さんが嬉しそうに僕に話しかけてくるのだ。男子からの羨ましそうな熱い視線が心地いいぜ。
教室の中で話をする内容ではないので、放課後に前回の喫茶店にいって話を聞く約束をする。
放課後になり僕と沢木さんは喫茶店に赴く。
「沢木さん、あれからどうかな?」
「うん、気配や視線を全く感じないよ。お父さんもお母さんも妹も大丈夫。置いておいた水晶も色は変わってなかった。水晶は庭の花壇に埋めちゃったけどいいかな?」
もう何も感じないか。もう大丈夫だな。
「もう大丈夫だと思うよ。もしまた何かあったら声かけてね。すぐに対応するからね」
沢木さんなら24時間対応だよ。お題はおっぱいで。
「次の土曜日は時間ある?」
「今の所予定は入ってないな」
「よかった。晩御飯を作りに行っていい?頑張ってすっごく美味しいご飯作るよ」
おお、手作りご飯の約束か。僕はすぐにOKした。
「月宮君はいつから除霊のお仕事してるの?」
「高校入ったころから。知り合いの紹介とHPで相談をうけてだね」
幼少の頃から霊を知り、小学校の頃にはもう除霊をしていた。血を薄めるとどの位の効果があるか?保存はどれくらいまでなら大丈夫か?色々と試した。
「今は不動産屋さんの紹介が多いかな。事故物件って聞くでしょ。霊がでると売れないからね。不動産は単価が高いからね。何百万、何千万の損が出るかもしれないからみんな必死だよ。紹介にで実績をつむと、知り合いの知り合いってどんどんネットワークが広がっていくから。依頼も沢山になる。実入りもいいよ。親の年収なんてすでに超えてるし」
高校生なのにそれだけ稼いでいるのを知って沢木さんもビックリしているようだ。
「月宮くんって凄いんだね。優しいし、人を助ける仕事をしてるなんて」
「できる範囲でだよ。僕も聖人君子じゃないしね」
僕はすべての依頼をこなすわけじゃない。他県からの依頼も多いけど面倒だから断ることも多い。だって仕事内容は辛くないけど、行き帰りとか一人で移動してもつまらないし辛い。だから県内の仕事ばかりだ。
「やっぱり仕事でトラブルちかあるの?」
「たまにあるね。霊ってほとんどの人が目で見えないでしょ?だからお金をだまし取るんじゃないかって疑う人もいるよ。そんな感じの人の依頼は絶対に受けないけど」
そういうタイプは除霊前の打ち合わせメールなんかでだいたいわかるから。ある程度信じてもらわなきゃやってられない。その分、不動産屋の紹介案件は楽でいい。金払いも最高だし。
「除霊できなかったことはある?」
「最終的には無いかな。出直したことはあるよ。霊が強すぎて手持ちの道具で対応できなかった。消すつもりで出かけたのに、弱らせることしかできなかったから焦ったよ」
あの時は廃寺だったな。関係者が何人も倒れて工事がストップしていた。僕の前にも何人かの霊能者がチャレンジしたみたいだけど、すべて失敗したらしい。それで僕に依頼がきたんだ。
いつもは血を薄めた富士山麓の天然水だったけど消しきれなかった。掛けても消えずに薄まって逃げられたのだ。後日、濃い目の天然水と血の原液を少々用意して再度アタックして祓った。ちなみにその時の収入は500万円也。
「沢木さんも連れて行ってあげたかったよ。あの独特な雰囲気は慣れると癖になる。いや、やっぱならないか」
霊は祓えるのがわかっているから怖くはない。ただ突然壁から出てきたり、振り向いたらいたりとか心臓が止まりそうになる。ビックリ系は何回やっても慣れないな。
「このお仕事でつらい事は?」
「それは断トツで寂しくなる事かな。仕事中や行き帰りが辛い。独り言が多くなる自分が嫌かな」
仕事仲間がいないのが辛い。たまに現地で他の除霊師や霊能者に会うと嬉しくなる。話し相手ができるからだ。1人の時は黙々と作業になるからね。
「あはは、独り言が多くなるのは嫌だね。それじゃ、私が時間がある時は同伴してあげるよ。話し相手がいれば辛くないでしょう」
え、本当に?マジで?沢木さんと除霊デート?最高じゃないか。
「バイトしなよ、マネージャーみたいなの。日給プラス交通費支給、食事支給だよ。お小遣い稼ぎだな。ぼくも寂しくないし」
事務所なんてない。でも沢木さんがバイトしてくれたら、お金稼ぎながらデートできるじゃないか。
「それってどんな仕事なの?」
「除霊時に同行、基本は土日のどちらか。たまに両方。あとは除霊のスケジュール作成とか、HPからくる依頼メール対応とかだね」
「そんなに忙しいの?」
忙しくありません。1人でも十分です。ただ、僕は仕事でデートがしたいだけです。お金は沢山ありますから。
「寂しがりやな僕の同行は楽かな。除霊スケジュールを作るのが大変かも。一日に数件回るときは移動時間とかを考慮しながら計画を立てないといけないから。アイドルのマネージャーみたいな感じかな」
「それって私にできるかな。月宮君のお手伝いはしてあげたいけど。肝心の仕事では役に立てないいからね」
「僕が思うに、除霊作業よりスケジュール管理が大事なんだよね。そのスケジュール能力が僕にはないから。除霊自体は道具があれば沢木さんだってできるよ。霊が見えないとどうしようもないけどね。まぁ、辺り一面全部にシュッとすればいいかな」
そもそも見えないのならば除霊しようと思わないだろうけどね。
「スケジュール管理はどういう事をするの?」
「依頼主と日程調整。場所や霊によって除霊時間も変わるから、そのスケジュール調整かな。大体は不動産屋からの依頼で、1日に1~2件回るんだよ。あとはHP見た人の依頼。これは相談を受けてメールや写真のやり取りでマジな依頼かいたずらかを判断する。そして見積りだね。除霊費用と交通費を計算して、相手が納得したらOK。もし現地に行って霊がいなかったら交通費のみ貰う」
僕は霊は見えて祓えるけど、移動する霊の探索は苦手なほうだ。前に室内にいる霊の除霊の依頼を受けた。メールや写真のやり取りで霊の存在を確信した。しかし現地に行って霊を見つけられなかったことがある。気配は感じるけど除霊できず。交通費だけ貰ってその日は帰った。後日、再出張し無事祓ったけどね。
スマホで僕の除霊HPを見せる。
「ほら、これがHPだよ。料金の仕組みとか相談窓口しかないけどね。依頼は9割が不動産屋ネットワークからの紹介。1割が個人からの依頼かな。僕は霊の話を聞いて優しく成仏させるんじゃないからね。不動産屋は確実に祓う僕を重宝してくれてる」
ちなみに個人だと3~20万位。企業からの依頼だと10~数百万とかなりの金額だ。去年1年の稼ぎはで800万位。今年は紹介も多く1000万は楽に超えるだろう。
「わかった。月宮君にはお世話になったし、バイトとかしたことないけどお手伝いするよ」
やったね。これでデートし放題じゃないか。泊まりの仕事とか作ったら最高。夏休みになんて遠方の依頼入りそうだしな。ひひひ。
「次の土日はどう?」
「うん、大丈夫だよ」
「土曜に靴を買いに行こう。動きやすい格好で除霊にいくからね。靴はスニーカーとかでしっかりした靴を。これは経費で買うから沢木さんはお金出さなくて平気だから。こんどの日曜の除霊予定は山の中なんだよね」
靴を買うのは買い物デートしたいだけです。日曜の山の中の除霊は本当。山の中腹にある祠の除霊だ。
「祠の除霊ってどんなことをするの?」
造成現場にある祠のせいで工事がストップしている。現場作業員が霊をみて怖がって仕事にならなくて、怪我人もでているらしい。重機も動かなくなったりして、工期を過ぎてしまい困ってるらしい。この案件も馴染みの不動産屋紹介案件だ。
「現地にいって霊を探す。作業員もよく見かけるらしいから特定は楽かな。現地いって霊に遭遇できないのが一番つらい。遭遇すればシュシュっと除霊して終わり。あとは1ヵ月の観察期間に復活しなければ仕事終了だね。僕と一緒にいれば安全だから安心していいよ。沢木さんには一緒に歩き回ってもらうけど我慢してね」
仕事内容を簡単に説明した。
「頑張るよ。私も月宮君の役に立ちたいからね」
週末の約束をしてその日は別れた。
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