第5話 霊がいるか確認

除霊に使うのは、僕の血とミネラルウォーター、水晶のさざれ位だ。

沢木さんの家族に霊の存在を分かってもらえるように、普段あまり使わない小道具の用意をする。

そして沢木家に用意してもらうのは折り紙。

まず、折り紙で皿を作ってもらう。小さめの皿ね。

その皿に水晶のさざれを入れる。500円玉位の量で十分。

水晶入りの皿を各部屋、廊下、水場、玄関、庭などに配置。

水晶の濁りを見てもらうためだ。

目で見れば一目瞭然でわかりやすいからね。


「水晶の透明具合を覚えておいて。そしたら霊のいる場所って言うか、濃い場所!?がわかると思うよ」


彼女に各部屋に皿を置くように依頼した。

その後は学校の話題や勉強の話をしているうちに父親が帰ってきたようだ。


「初めまして。里奈さんのクラスメイトの月宮忍といいます。今日は沢木家に起きている現象について話がありきました。お父さんにも聞いてもらいたかったので、彼女達にも詳しい話はしていません」


父親、母親、里奈さんと僕の4人で夕食を頂きながら話をすることにした。ちなみに妹は夕方に食事をとり、今は部屋で勉強をしている。余計な話を聞かせないように配慮した。

夕飯はトンテキだった。分厚い豚肉をニンニクと一緒にとろみとコクのあるあましょっぱいタレがかかっている。実に美味そうだ。肉厚で”THE肉”って感じの見た目も食欲をそそる。

食事をしながら父親にいくつかの質問をした。

最近この家で変わって事はないか?体調はどうか?

父親はどこまで現状を把握しているのだろうか。


「最近、ふと気づくと誰かに見られている気がする。風呂に入ってる時に、鏡越しに人影らしきものも見た。私は今まで超常現象的なものは信じてなかったが、さすがにおかしいと思うことが多くなったよ。お祓いをするべきかと色々調べていた」


ふむ、お祓いまで考えているってことはヤバさに気づいてるんだな。


「僕が気づいたのは10日くらい前です。里奈さんに霊が憑いていました。クラスメイトに霊が憑いた状態を放っておくのは嫌だったので除霊しました。もちろん里奈さんには内緒です。その3日後、祓ったばかりの里奈さんにまた別の霊が憑いてました。其の霊も祓いました」


僕は水を飲み一息つく。

そして話を続ける。


「短期間に2回祓い、そしてその3日後にはまた新しい霊が憑いている。普通じゃないです。おそらく何回祓ったとしても同じことを繰り返すだけです」


父親、母親、里奈さんの顔を見ながら言葉を区切る。


「なので僕は里奈さんに尋ねました。人の気配や視線を感じないかと。彼女は学校でも霊の気配を感じてるのか、何度か視線を向けていました。見えていなかったと思いますが、まさに霊がいる場所を見ていたのです。なので見えるのか?聞こえるのか?と尋ねたんです」


僕が声をかけて悩み事を理解した。

信じてもらえないと思っていたことに理解者でできた。

安心して涙を流す里奈さん。涙が零れるのも無理はないだろう。


「3回目の除霊を行いました。原因究明が必要と思いましたのでご自宅に伺ったという訳です」


父親は少し考えて、


「君の話は理解した。原因は我が家にあったのかい?」

「この家にいくつか道具をセットしています。里奈さんお願い、2階の皿を持ってきて」


数分後、2階の各部屋においてあった水晶入りの皿を並べる。


「元の水晶はこれです。2時間位放置しましたが比べてください」


元の水晶を一掴みテーブルに置き、各部屋の皿と比べる。


「少し曇っていますね。里奈さんの部屋の水晶が一番色がくすんでますね」


同じように1階の水晶を持ってきてもらう。

1階の水晶はバスルームが一番くすんでいた。


「バスルームが1階で一番ヤバい場所ってのがわかります」


父親は、


「バスルームに原因があるのか。しかし原因は思い当たらないが。お前たちはどうだ?」


父親は母親と里奈さんに原因を聞いている。

まぁ、思い当たらないだろうけど。

僕がビンビンに感じているのは庭だ。庭のある場所に居座っている霊が原因だろう。


「里奈さん、最後ね。玄関外と庭の皿を持ってきてくれるかな。ごめんね動かしてしまって」


最後の水晶を持ってきてくれた。

まずは玄関外。透明さは失われている。テーブルの水晶とはあきらかに違う。

そして庭の水晶。黒っぽく変色し、欠けてしまっているの水晶もある。これを見れば原因の場所ははっきりわかる。


「見てのとおりです。原因は庭ですね。実は僕にはすでに見えています。ただ、僕がいきなり霊がいますと言うより、水晶を使って、曇り具合を見てもらったほうが、わかりやすいと思ってこのように説明しました」


確かにそうだと同意してもらった。


「それじゃ実際に庭に行ってみましょうか」


原因を見てみようじゃないか。

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