第4話 霊のおかげで弁当GETだぜ!

彼女と別れて家に帰る。

少し濃い目の血を放てるようにしておこう。

部屋にある医療用の針で指を傷つける。

このちくっとするのは何回やってもイヤだな。

小豆5個分の血を絞り出し、ミネラルウォーター1リットルにまぜアトマイザーに入れる。入りきらないのはペットボトルに。

血をまぜる液体はなんだっていい。コーヒーやオレンジジュースに混ぜて実験した事もある。それでもちゃんと除霊できた。

水道水でも問題なかったが、気分的なものでミネラルウォーターを僕は使っている。銘柄:富士山麓の天然水

道具はこれだけなんだけど、ハッタリで水晶のさざれを持って行く。

通販で1キロ2000円なり。この細かい粒を撒いたり、皿に盛って置いたりする。それっぽくやったほうが顧客満足度が上がるからだ。

見えない霊を祓うのだからお客さんが少しでも安心、納得できるように小道具を使っている。

おっと、悠長にしてる場合じゃないか。

原付バイクに乗って沢木家に向かうか。



事故らないように慎重にバイクを運転する。

スマホのアプリで沢木さんの家の場所はバッチリ。

目的地まであと少しという所で沢木さんに電話した。

彼女は家の前で待っていてくれるらしい。


「月宮くん、ここです!」


静かな住宅街の戸建ての前に沢木さんが立っていた。

制服から薄いブルーのワンピースに着替えていた。めちゃくちゃ可愛いな。大きく手を振る沢木さんのおっぱいの揺れを脳内フォルダに保管する。

さて、沢木さんの可愛さに見とれるのは終わりにしよう。

さっきから僕の霊感センサーがビンビン反応している。

原因の場所も間違いなくここだな。

だってそのあたりの空気の色が違うもん。


「家に母と妹がいますが大丈夫でしょうか?母には今日の話をしてあります。最初は半信半疑でしたが、思うところがあったようです。霊的な現象を否定しませんでした」


なるほど。確かに説明しておいたほうがいいかもね。


「わかった。じゃぁまずはお母さんに話しようか。いきなり家の中を歩き回ったら気持ち悪いしね」


沢木さんに連れられて玄関をくぐった。

靴を脱いで家に上がった。

家の中の雰囲気はよくない。明らかに影響受けてるよなぁ。

リビングに案内されたが、そのリビングにも数体の霊を見ることができる。

意思を持たない低級な奴だな。部屋の隅で佇んでいやがる。


「初めまして。クラスメイトの月宮と言います。いきなりお邪魔して申し訳ないです。今日は彼女の依頼により来ています」


お母さんに、ここに来るまでの出来事を説明する。

霊を呼び込む原因があるはずだ。そしてこの家に原因があるではないかと。最近変わったことがあるにではないかと。


「お母さん、この場所には沢山の霊がいます。いや、場所じゃなくて家ですかね。リビングに2体、玄関入ってすぐにも1体。あと上や庭からも感じます。はっきり言って異常だ。お母さんも視線や気配を感じているんじゃないですか?」


お母さんの話を聞くと、やはりお母さんもおかしいと感じていたようだ。

家の中で話声や気配を頻繁に感じるそうだ。ここ2~3週間の出来事で、過去にそういった体験はしたことはないらしい。


「敷地内の霊を消すことはすぐにできます。原因はまだわかりませんが、原因の場所は何となくわかっています。どうしますか?すぐにどうこうなる状態ではないので、ご主人が帰られてから説明してから除霊をするのも手だとは思います」


ご主人に説明したほうが何かあった時にトラブルになりにくい。

別にお金取る気もないから勝手に除霊してもいいんだけどね。

沢木さんとは今後も仲良くしたいし。家族にもちゃんと説明してからのほうがいいよね。

沢木さんもお母さんも僕の提案に納得をした。

ご主人が帰宅するのは21時位。現在の時刻は18時過ぎだ。

時間が少しあるので夕食を頂くことになった。用意ができるまでは沢木さんの部屋で待機だ。


「お邪魔しまーす」


おぅ、女の子の部屋だ。なんかいい匂いがする。

部屋はきれいに片付けられておいる。ゆっくり部屋を見回すと女の子の部屋にそぐわない物を見つけた。


「沢木さん、そこの壁から顔がのぞいてる。高齢の女の人でじっと見つめてる感じ」

「部屋でいる時や寝ている時にその辺りから視線を感じます」

「この人だろうな。意思みたいなものは感じられない。ただ見てるだけなんだろうけどね」

「祓うのはお父さんが帰ってきてからでいいよね」


すぐに悪さをするわけでもなさそうなので後回しでいいだろう。


「沢木さんの部屋はきれいに片付いているね。僕の部屋と大違いだよ」


床の座布団に座り込み答える僕。

あんまり見ないでと、恥ずかしそうな沢木さん可愛い。


「月宮くん、今回の件はすぐに解決するの?」


うーん、なんて言おうか。

正直に言うととっても簡単な仕事だ。

ただ、除霊って簡単なんだぜ!って思われるのもイヤだな。


「多分、解決はするよ。ただ繰り返さないか経過をみたりするのは、ある程度の日数が必要だね」

「私、除霊の相場がわからないんですが。いくら位用意すればいいのでしょうか?」


今回の件が全くの他人だったら20万位かなぁ。何体も除霊しなきゃならないし、原因の処理もあるしね。

まぁ、沢木さん価格なら100円でいいよ。


「一般的な除霊師やお寺でのお祓いだったら20~50万位じゃないかな」


金額を聞いて顔を青くする沢木さん。

そんな金額言われればビビるよね。


「でも、僕は家族や仲のいい友達からはお金貰わないんだ。沢木さん、僕たちの関係はクラスメイトだけど、もう一歩踏み込んで仲のいい友達になろう」


手を出し握手を求める。


「私、何としてでもお金を用意するので少し猶予が欲しいです」


僕の手を握り返してきた。

一歩進み、正面から彼女にハグをする。彼女は動かない。やべ、すごくいい匂いで柔らかい体です。ヒューッ、最高!

耳元で、


「仲のいい友達からはお金はとらない。沢木さんは僕の友達だ。ハグするほどのね。だから料金はいらないよ。サンキュー忍って言ってくれればそれで充分だよ」

「友達でも報酬は必要だと思いますが」


そうか、20万が無料とか怪しすぎるか?


「じゃあ、お弁当でも作って。学校で総菜パン食べるの飽きたから。沢木さんの美味しいお弁当を期待している。それを条件にするよ」


それで何とか承知してもらった。経費も特に発生してないからね。

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