第2話 霊 おかわり

それから数日後。

休み明けに学校にきて驚いた。

沢木さんがまた新しい霊をつけてる。

こないだの霊より重そうな奴。

あの位になると気配を感じることもあるんじゃないか?


「沢木さん、本当についてないな」


ふと口ずさんで気がつく。

運勢は”ついて”ないのに、霊は”憑いて”いる。

ブフッ、、、噴出してしまった。

前の席の本田君が振り返ってしまった。


「おい、月宮どうした。何かいいことでもあったのか?」


むせただけと適当に誤魔化しておいた。

自分で呟いた言葉に噴出すとか不覚である。



しかし不思議だ。

先日、祓ったばっかりなのに、同じ人に別の霊が憑いている。

考えられるの原因は、


①すぐに憑かれる体質

②強烈な霊が彼女の近くにあり、他の霊を呼び込んでいる

③そもそも霊はいなく、僕の幻覚


のどれかだろう。

①は今まで憑いていなかったから違うだろう。

②は家や通学路なんかに原因がいて、もろに影響を受けているケース。

③は僕の頭がついにおかしくなった。僕は病院にいって薬を貰い療養するべし。

最後のだったら困るなぁ。

ぐだぐだ考えていてもしょうがない。


まあとりあえず、近づいてパパッとしといた。

例によって簡単に消滅した。

これ、本当なら5万位貰ってる仕事だ。

沢木さんのおっぱいに免じて無料奉仕である。揉んでないけどな。

可愛い子を助けたという自己満足。僕のカルマも+1されただろう。




さらに数日後。

朝、登校する沢木さんを見て愕然とした。

また憑いている。

今度は太ってるおっさん。眼窩は黒い穴で表情はなし。

ただそこに佇んでいる。沢木さんのすぐ後ろに。

こりゃ、ケース②かなぁ。

本人に確認するかなぁ。

普通は「あなた霊が憑いていますよ」と言われても信じる人はいないだろう。僕が言われてもそう思うはず。

しかし、沢木さんは霊に存在に気が付いているのかもしれない。だっておっさんの存在を肌に感じているようだから。

なぜそれがわかったか?

それは彼女が霊のほうに視線を向けるから。感じるものがあるのだろう。

ギャーとかヒェとか言わないので見えてはいないのだろう。

ただ、何かに見られている。誰かいるような気がする。

こんな風に思っているのかもしれない。



昼休みになった。

弁当を食べてトイレに向かう沢木さんに声をかけた。

彼女はクラスメイトからの突然の声かけにビックリしたようだが不審がってはいない。不審者じゃないのであたりまえである。


「沢木さん、ちょっと話しいいかな」

「月宮くんどうしたの?」


人には聞かれたくない話と伝え、中庭のベンチに彼女をエスコートする。


「突然でゴメンね。ちょっと確認したい事があってね」


彼女は話を切り出した僕を不思議そうにみる。


「ちょっと沢木さんの事聞くね。ごめんね、失礼な事聞くかもしれないけど」


そのセリフに少し真剣になる沢木さん。


「最近、人の気配とか視線、不思議な声・音を聞かない?」


彼女は驚き少し考えていた。

しばらく無言だったけど、彼女は僕を見ながら答える。


「月宮くんは見える人?」


何が?とは言わない。彼女の答えで霊の影響が出ていることがわかる。

彼女の後ろには相変わらず佇むおっさんがヌボーっと突っ立っている。可愛い女子高生をスートーキングするなんて羨ましいだろ。ってそんな場合じゃない。


「はっきり見えるよ。感じるようになったのはずっと前から?最近になって?」


彼女は色々思い出している。そして、


「気がついたのは2~3週間前から。寝てるときやお風呂に入っているときに人の気配を感じて。それから、ふとした瞬間に視線を感じるようになったの。最近では唸り声みたいなのも聞こえることがある」


うん、なるほど。

これ、こんな状態が続くともっと影響がでるかもしれない。だんだん体が対応してきているようだし。


「実はちょっと前に沢木さんに憑いていた霊を内緒で除霊した。10日位前と3日前。内緒にしててごめんね。そんで今日見たらまた憑いているだ。全部違う霊ね」


沢木さんは一瞬後ろをみてすぐに僕を見た。


「今も側にいるんですか?」


僕は大きく頷いた。


「君の後ろ50センチくらい。身長160センチくらいかな。肥満なおっちゃん。年は50代位かな。無表情で君について回っている。先日も2回除霊したのに、また新しいのが憑くなんておかしい。何か原因があると思う」


原因に心当たりはないか尋ねたがわからないようだ。

そこまで話をしたところでチャイムが鳴った。昼休みが終わる。


「月宮くん、もし良かったら放課後に詳しく教えてくれないかな?私は今どんな状態で、これからどうしたらいいのか?私は今までにこんな体験をしたことがないから。色々詳しい月宮くんの話を聞かせて欲しい」


そりゃ心配になるだろう。

放課後に話をすることを了承する。

昼休みが終わりを告げるチャイムが鳴る。僕と彼女は小走りで教室に戻った。揺れるおっぱいに手が伸びそうになったぜ!

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