心霊とか吊り橋効果抜群だろう
@250mg
第1話 あっ、霊がいる
観光地の温泉街。
いつもなら観光客で賑わっているはずだが、温泉街の通りには誰もいない。
「なんだよ、何処にもいないじゃないか」
僕、月宮忍(つきみやしのぶ)の呟きだけが聞こえる。
時間は深夜3時。月の光と街灯の明かりで思いのほか明るい。しかし自分以外は誰もいない状況で、少し不気味さを感じる。
探し物が見つからず、もう温泉街を2時間近く歩き回っている。
その時、通りの向こう側に人影を見つけた。その人影はゆっくり道を横断し、温泉旅館の敷地に入っていく。
「あれか。やっと見つけたぞ」
僕は人影に向かい小走りで近づいた。
人影は80代位の小柄な爺さん。4月になったばかりでまだ肌寒い夜に全裸で徘徊している。普通なら露出狂か?と警察に通報するんだが、あの爺さんは通報しても意味がない。だって死んでるから。
旅館の敷地を横切り、工事の資材置き場に侵入した霊の正面に回り込んだ。
「爺さん、服を着ろ。お巡りさんに捕まるぞ。いくら自由になりたいからってはっちゃけ過ぎだろ」
爺さんの霊に話し掛けてみる。反応はない。まぁ、知っていた。
「僕の収入の為に成仏してくれ」
ポケットから取り出したスプレーボトルを爺さんに向ける。発射!
裸の爺さんに特製ブレンドされた液体をかける。
ヴゥォバブゥ&;)#!
「何言ってるかわからないよ。とっと消えて僕の収入となれ」
裸の爺さんは苦しみながら徐々に溶けていく。30秒もしないうちにきれいさっぱり消えてしまう。
「よし、除霊終了」
消えた爺さんがいたあたりに塩を撒く。そして自分にも軽く塩を振る。
この塩を振る行為には意味がない。様式美というやつだ。
これで20万円の収入。美味しいです。
除霊を終えた僕は、温泉協会の事務所に向かった。温泉事務所には2人の男性が僕の帰りを待っていた。
「除霊終了です。なかなか見つからなくて、2時間近く温泉街を歩いちゃいましたよ。爺さんはキレイさっぱりいなくなったので、もう見かけるひとは出てこないでしょう」
「そうですか、お疲れさまでした。月宮さんにお願いしてよかった。旅館の従業員から沢山の除霊依頼がきてたんで助かります。こんなのお客さんに知られたら大変なことになっちゃうから」
「いえいえ、それじゃ本日の料金は5万円。1ヶ月間様子を見て爺さんが出てこなければ残り15万円を振込んでください。きっちり処分したんで出てはこないでしょうが」
「いやー、助かりました。山崎不動産さんに月宮さんを紹介してもらってよかった。もし、他の組合でも困ってるところがあったら紹介させてもらいますよ」
「ええ、是非お願いします。それではこれで失礼します」
事務所の脇に止めてあった原付バイクに乗り、僕は片道40キロ離れている自宅に帰宅する。
高校2年最初の試験が終わった。
初の試験なのでどの位の点数がとれるかわからないが、自分ではかなりできたと思う。周りのクラスメイトたちも試験問題の話や、これからどこに遊びに行こうかといった話で盛り上がっている。僕はそんなクラスメイトたちを見回しながら、みんな青春してるなぁとぼんやりと考えていた。
ある少女に視線が向いたときに、前の席の本田雄介(ほんだゆうすけ)から声がかかる。
「月宮、試験どうだった?俺は最悪だ。やべー、赤点だったらどうしよう」
試験は余裕でしたなんて言ったら嫌味だよね。
「僕は普通?可もなく不可もなくって感じかな」
「勉強できる奴は羨ましいぜ。沢木さんはどうだったんだろう」
沢木里奈(さわきりな)さんは、うちの学校の有名人。
容姿端麗・才色兼備、腰まで伸びた黒髪はサラサラしていて、とてもいい匂いがする。大きいおっぱいの揺れは男子の視線を釘付けにし、すらっと伸びた長い美脚は感動すらおぼえるだろう。めちゃくちゃエロい体をしてるのだ。
そんな沢木さんはうちのクラスのみならず、2年生のいやこの学校全体の中でもずば抜けた人気を誇る生徒でもある。
言い寄る男は数知れず。しかし落とせた男はいない高嶺の花。
実際すげーよ。あのおっぱい揉ませてくれないかな。
……っと。
そんな冗談を言ってる場合ではない。
彼女、沢木さんの後方にグレイの靄がかかって見えた。目を凝らせば人型の何かがいる。
あー、これなんか悪いの憑いてるなぁ。色や雰囲気からすると憑いたばっかりか。
直ちに影響はないだろうけど、このままだったら良くない。
どうすっかなぁ。
僕は霊を見ることができる。
僕は霊を祓うことができる。
特殊な訓練を受けたわけでもない。母に教わり、いつの間にかできるようになっていた。物心つく前から、霊を見ることはできていた。道端や建物に血だらけのおっちゃんや、体が半分溶けたようなお姉さん、毎日同じ場所で突っ立っている子供などが見えるのだ。
見えるのは母親の血のせいだ。母さんや婆ちゃん、曾婆ちゃんやその先祖の人たち。ずっと見えていたらしい。そして祓うことも。
子供の頃のビビリな僕が、狂わずに成長できたのは、霊に理解がある家族がいたせいだろう。
自分だけしか見えてないのだったら、ノイローゼになって病院に入っていたかも。
あいつらこちらを認識したら、しつこく付きまとってくる。だから基本は無視。相手して良いことなんてないから。
こっちにちょっかい出してくるようなら祓う。
祓い方は簡単。ちょー簡単。
お経を読むでも、お札を貼るでもない。
僕の家系が霊を祓う方法。それは血だ。
血をぶつける。薄めた血を放つ。濃い血を放つ。これが奴らに当たると、溶けるように消える。キレイさっぱり。
その辺の浮遊霊や地縛霊なら薄めた血で十分。殺人などの重めの霊は豆粒くらいの血の量で祓える。
いや、祓うとかじゃないな。存在が消える感じか。成仏してるかは不明。多分してないんじゃないかな。
存在というか概念というか、よくわからないけど消える。問答無用に消える。
キレイに消えて復活はしない。と思う。復活したの見たことないし。
今まで500回以上は霊を消してきた僕が言うのだから間違いないだろう。見かける霊を片っ端から消し去ってた時期もあったから。
なので、母親から霊に対してスペシャルな授業受けていたせいで、ちょっとした霊を祓う事はならば余裕でできる。
沢木さんについている霊を祓っておくかどうか。
知らない人ならば当然無視をする。
でも沢木さんはクラスメイトだし、可愛いし。おっぱいでかいし。除霊代金の代わりに揉ませてくれないかな。
あなたに霊が憑いてますとか言っても気持ち悪がれるだけだしな。
ぱぱっとやっちまうか。可愛いから無料で。本人には内緒でな。
僕は鞄から小さいアトマイザーを取り出す。
これは100均の化粧品コーナーに売ってる香水入れを使っている。
普通ならこれを相手に振りかけるのだが、そんなことしたら不審がられるだろう。なので指先にシュシュっとスプレーし、水滴を飛ばして祓ってやろう。
後ろから沢木さんに近づきパパっと水滴をとばす。
ほら、すぐに霊は薄くなり消えていく。
狙ってパパッとするだけの簡単なお仕事です。
無事に霊を祓うことができた沢木さんを眺める僕であった。
可愛いなぁ。おっぱい揉みたいなぁ。
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