5. 約束

(まっていて。)



 待っていた


 誰を?




 それは多分 だれでもなくって


 もっと曖昧なもの




(待ってた)



 何を?



ゆう、お茶を用意して」



 あなたが幸せに微笑む日を



「私たちも合わせて、五つ」



 きみが、まぶしく笑う日を。




 ゆう、と呼ぶ声がする


 七花ななかの帰った玄関から 顔を覗かせた黒みどり


 ひとみに遺る宝石の色を


 俺は憶えている



「私、あなたにただいまをいう為に生まれ変わって来たのよ」



 そんな非現実 得意気な様子で


 俺たちが決めたせっかくの内証も明かしてしまう


 難しいことはいろいろどうでもよくなって


 相変わらずだねって 苦笑できることがとても


 幸せだった





「おかえり、切菜」


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