4. むらさき


「待ってたなんて、言わないでよ」



 向かうみちの中


 かげで不満気に ひそくいろ


 私が待っていたのは果楽のほうだと


 目を逸らして



 夢や幻みたいな肌の色にその指が触れている


 風が夏羅からと、切菜とをなぶるのに


 あなたたちは消えなかった




 待っていた


 夏の陽射しに


 揺れない


 かげろう


 そこに


 確かに


 在る


 かげ を。




「待ってた」




 あなたのいる夏を 恋しく


 私たちが集う日のことを 愛しく思って



 きっと




「あなたのことも、待ってたわ」




 花色の瞳が太陽を、この景色を、わたしを映していた


 あの窓辺で見た同じ眸を


 わらった表情を


 憶えている



 だからもう、


 同じだ なんていわないで



 もう一度


 ひとつずつ


 私とあなたが出逢えるように。


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