第2話横取りチャーシュー
うちの喫茶店の近くに昔からある豚肉専門のお肉屋さんがある。
先代と私の父は仲も良く、私のことも子供の頃から知ってくれている仲でもある。
ここのお肉がとても美味しいので今までの特別ランチをリニューアルして今年からそこのお肉を使った特別ランチを始めることになった。
早速常連さん達に「報告と宣伝」という根回し。
みなさん楽しみにしてくれている人がほとんどなんだけど、常連の1人65歳頑固オヤジにも報告したところ…
頑固オヤジ「地元で有名なのさ知ってるけどさ、わざわざ地元のものを地元のお店で食べるのかな?」
と一発くらう。
私「うちにランチに来てくれてるサラリーマンの方は都内から来てくれてる方もいるし地元じゃない人が多いから楽しみにしてくれてますよ。焼くのにちょっとコツがいるからお店で食べれたら嬉しいと思いますけどねー」
と一応相手は客なので弱めに反撃した。
私の反撃に少し納得したのか、勝負にならないと思ったのか、
頑固オヤジ「あー、そこのお肉屋のチャーシューは買うけど美味いよな!親戚にアレを送ってやると喜ぶんだよ。あれは美味いね。すぐ売り切れちゃうんだけど食べたことある?」
と俺は美味いものを知ってるぞ!といわんばかりに言い始めた。
そこで一つ思い出したことが私にはある。
そこのチャーシューを頑固オヤジに教えたのは私なのだ。
頑固オヤジとその知り合いが数年前にうちの喫茶店に来た時、居酒屋まで飲みに行くのはめんどくさいとなったみたいで、ツマミ出してくれないか?と言われ、例のチャーシューを出してあげたらすごく絶賛してくれたのだ。
お肉屋さんのこと、豚肉にこだわってること、チャーシューが売り切れてしまうのでなかなか手に入らないことなど教えてあげたのだが、私が発信したことをこの頑固オヤジは忘れていて「俺・発信のチャーシュー」になっている…
「食べたことある?」なんて私に言うなんて喧嘩売ってんのかコノヤロー‼️である。
私は喫茶店をやる前は美容業界にいたので女性のお客さんと1対1で数時間、話しながら仕事をしなければいけなかった。なので会話で相手を楽しませたり喜ばすことは得意だ。
だいたい週1回というサイクルでお客さんは来るので話のネタも毎週仕入れなくてはいけない。
新聞読んだり、ニュースを見たり、新しいスポットに行ったり努力してた。
おもしろかったことが起こると、今週話す内容ができた!とホッとしたり…。
得意だったけど、女性客は厳しい。お客さんをたてながら話さないと大変なのだ。謙って伝えないと機嫌悪くなって商品が売れない、契約取れない。
そりゃそうだ。私が客でも高いお金払って気分悪くなるようなら二度とその店には行かない、その人を指名しない。
だから、「あ。コレやばいな…」と感じるとすぐ諦めてその話は撤退する。
そんな事がめんどくさくて、気楽にできる価格帯の喫茶店をはじめたのに…。言いたいこと言えると思って喫茶店にしたけど、チャーシューの発信元について客とやりあったって何の得もない。
なので私のチャーシューを横取りされたけど目をつぶることにした。
頑固オヤジはすごくイキイキとチャーシューが美味しいことを私に説明している…
またコロナ感染者増で喫茶店の売り上げが落ちてるので、黙って聞いてあげるのが良い経営者だと思い…その話を聞いてあげた。
おわり
今日の喫茶店営業 ラムネ @rarasan
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