第13話『ワンボックスカー』

 ジマムラ帰りの俺とシキが、

 人気のない公園通りを歩いていると、

 黒塗りのワンボックスカーが俺たちの前で急停止する。


 スライドドアをあけて中から三人の男が出てくる。

 顔面入れ墨の男、金色の鼻輪の男、モジャモジャした男。

 三人とも浅黒い肌で、汚い金髪をしている。



「んだ、てめぇら」


「お前の隣の女を俺らによこせ、そうすりゃてめーだけは見逃してやる」


「大丈夫、孕むまで俺たちと楽しく遊んでもらうだけだから。1年後におまえのもとに利子つけて返してやるからよぉ。きひひ」


「もう――冗談じゃすまねぇぞ」


「んだぁ、テメェ。ママにジャスコで買ってもらったような服を着ながらイキってんじゃねぇ!」


「ちぃっとばかし、タッパが大きいからって調子こいてんじゃねぇぞ。こちとら3人だ。てめぇも、ブチ殺されてぇのか?」



 クソが……、めんどくせぇ。

 せっかく人が楽しく一日過ごしてたのに水差しやがって。


 矯正力とやらがなけりゃ、秒で頭蓋を破壊してたんだがな。

 まっ殺さなけりゃ、大丈夫なんだよな。



「二択だ――。近場の警察に出頭し国の法に則った裁きを受けるか、それとも俺に不自由な体にされた上で、牢屋の中で苦しみと後悔にまみれ過ごすか、今すぐ選べ」


「はぁ? なんだコイツ、ヤクでもやってんじゃねぇか?」


「たまーに格闘技とかかじってる奴とかでこういう奴居るんだよ。そういう奴らの心と体を破壊するのって、すんげー気持ちいいんだよねぇ。ひひひ」


「兄貴ぃ? こいつもさぁ、この前の男のように全殺しにしてバラして売っちゃおうよ? ほら、結構高く売れたじゃん。当分金には困らないよぉ」


「そのまえに、"ビデオ"だ。俺、寝取られモノが大好きなんだわ。この調子こいた男を生かしたまま、目の前で犯した方が興奮するからな」


「ひひっ……、アニキは本当にそういうの好きっすね。"ビデオ"をダークウェブ経由で売れば一儲けできるし、これで数年は金の心配いらねーっすねっ」



 人は、こうも醜悪になれるものか。

 人でありながら、人とは相容れぬ存在。

 この世界のモンスター。

 生きている価値のない汚物。



「マグネロ《広域超電磁波》」



 俺を中心とした半径3メートルを除く、

 50メートル圏内の電子機器をすべて破壊した。


 この世界の監視カメラとスマホは、

 情報が簡単に記録されちまう。

 そうなると、厄介だからな。



「シキ、ここから離れてろ。軽く話をつけてくるから」


「でも……大丈夫?」


「もち。人間、"話せば分かる何事も"って言うだろ?」


「分かった。無理しないでね」


「あいよ」



 シキが20メートルほど距離を取るのをみた後で、

 改めてゴミどもに目を移す。


 シキを俺から遠ざけたのは安全確保のためではない。

 これから起こる残酷ショーを見なくても良くするための配慮だ。



「はあ。きったねぇツラの連中だ。目が、腐りそうだぜ」

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