030 援軍
陽菜さんが無事だった。
その朗報にアミとコトリンは安堵したが、それと同時に疑問が浮かぶ。
「あなた、どこからその情報を得たの?」
コトリンの問い詰めるような質問に対し、カミーリアがいつもの調子で答える。
『私の仲間です。まだ初心者なんですけど、すごく強いんですよ!』
「仲間? まさかヒナプロデューサーのこと、殺してないわよね?」
より一層目つきを鋭くするコトリンに、エリーが苦笑気味に返す。
『コトリンさん、そんなに心配しなくても大丈夫ですって。その子、お二人には感謝してるみたいですから』
「私たちに?」
感謝とは一体どういうことだろうか。首を傾げ訊き返すアミ。
するとその時、屋上の扉が勢いよく開いた。
「っ!」
また追っ手かと、身構えるアミとコトリン。
だが、そこにいたのは報酬目当てのプレイヤーではなかった。
二人は現れた人物を見て声を揃えて叫ぶ。
「陽菜さん!」
「ヒナプロデューサー!」
「お二人も無事だったみたいで、安心しました……」
そう言ってホッとしたように微笑む彼女は、自分たちと同様にターゲットとしてマツヤに名指しされたこのゲームのプロデューサー、陽菜さんだ。
そして、その後ろには一人の少女が。
「あれ? あなたって……」
彼女の姿に、アミがふと呟く。
「うん。偽コイン、持ってた時に捕まった。でも、そのおかげで今このゲームで遊べてる。ありがとう」
思い出した。
この少女はアミが刑事になって初めて職務質問をして処置を実行したプレイヤーだ。まさかその少女がカミーリアの仲間になっていたなんて。
意外な繋がりにアミが驚いていると、彼女もまた巨大なロボットに驚いていた。
「えっと、何だろこれ……」
ロボットを見上げ、訝しむ表情を浮かべる少女。
お互いの目が合ったところで、ロボットの中のカミーリアがマイク越しに話しかける。
『ランちゃん、ヒナさん連れてきてくれてありがと〜!』
「ええっ、カミーリア……!?」
『ごめんごめん、驚かせちゃったよね? これ、私がゲットした新しいアイテムなんだ〜』
「アイテム、なの?」
ランと呼ばれた少女は、カミーリアの嘘みたいなアイテムに少々引き気味の様子だ。
「カミーリアさん。またラスボス度が増しましたね……」
『いや〜、それほどでも〜』
「褒めてはいないんですけどね……」
陽菜さんとも同様のやり取りを交わし、この場の全員がロボットに引き終えたタイミングで、ロボット内からエリーが声を上げる。
『あの、刑事さん。これだけの戦力があれば、六時まで三人を守り抜くことも出来ると思うんです。もし刑事さんが信用してくれさえするなら、私たちは全力で戦いますよ』
それは、イベント開始前の広場でも提案された共闘、協力関係の誘いだった。
アミは一度コトリンの方に視線を向ける。
コトリンは難しい顔をして何か考え込んでいる。最初は一切周りのプレイヤーを信用していなかったが、少しは気が変わっただろうか。
しばらくして、コトリンは小さく息を吐いた。
「……多分、私たちだけじゃ逃げ切るのは不可能だと思うわ。だから、お願い。私たちのこと、守ってくれる?」
その言葉に、ロボットが機械音を響かせながら大きく頷いた。
『はい、もちろんです!』
『やっと味方認定してくれましたね』
そして、かつてアミが捕まえた少女、ランも首を縦に振る。
「私も、みんなと一緒に戦う。あの時の、恩返しもしたいから」
「ほら、みんな優しくて良い子でしょ? 裏切るはず無いんだって」
アミはコトリンの顔を覗き込み、悪戯っぽく笑う。
「ええ、そうね。私は特別補佐官として警戒していたんじゃなく、ただ人間不信だっただけみたいね」
コトリンはそう言い、数時間ぶりに頬を緩ませた。
逃げ切ることで頭がいっぱいで、緊張状態だったのだろう。
これでようやく陽菜さんとの合流にも成功し、逃走者三人が揃った。
このゲームのラスボスとも称されるカミーリアとその相棒エリー。更には仲間のランも加わった最強の布陣で、アミとコトリンは残り三時間半を生き抜くことになる。
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