029 味方か脅威か
忽然と姿を現した燃え上がりそうなロボットに、アミとコトリンが呆気にとられていると。
『刑事さん、助けに来ましたよ〜!』
ロボットが突如、可愛らしい声で叫んだ。
いや、叫んだのはロボットではなく中で操縦する人物。
「もしかして、カミーリア?」
『はい、そうです! エリーも一緒ですよ!』
『すみません、驚かせてしまって……』
カミーリアに続いて苦笑気味に喋るエリー。
二人の声が聞こえるということは、操縦席のマイク越しに話しているのだろうか。
「えっと、このロボットは何かしら……?」
戸惑いを見せつつ首を傾げるコトリンに、カミーリアが答える。
『さっき隠し部屋みたいなのを見つけて、入ってみたらでっかいモンスターに襲われて。それを倒したらアイテムとしてドロップしたんです!』
「なんか色々すごいね……」
前半の話もなかなかの大事件な気がするのだが、本人がさらっと流しているのも相まって、この巨大なロボットがアイテムだという衝撃には敵わない。
『で、その男の人たちどうします?』
エリーが話題を振り向けたのはアミとコトリンを襲撃した三人の男性プレイヤー。いきなりのロボット参上に驚きのあまり腰を抜かしていた彼らは、びくっと肩を震わせる。
「や、やべぇよ!」
「さっさと逃げようぜ!」
「おい、置いて行くなよ!」
慌てて立ち上がり、逃走を図ろうとする三人。
アミは小さく頷き、ロボットに向かって言う。
「倒しちゃっていいよ」
『は〜い、分かりました〜っ!』
元気の良いカミーリアの声とともに、ロボットが大きく上半身を後ろに反らす。
そして、双眸が黄色く発光した直後、そこからビームが発射された。
凄まじい風圧と轟音がアミとコトリンを襲う。
「「「うわぁ〜!!!」」」
直後、屋上から脱出しようと扉に手をかけていた男性プレイヤー三人がビームによって吹き飛ばされた。気が付いた時には、一瞬でHPがゼロになったのか、彼らは跡形もなく消滅していた。
『どうでしたか〜? 必殺目からビーム』
「うん、名前だけちゃんと考えよっか……」
あっけらかんと問いかけるカミーリアに作り笑いで応じるアミ。
絶体絶命の大ピンチを切り抜けこれで一安心と思っていたが、コトリンの表情はどこか険しい。
「コトリン?」
アミが顔を覗き込むと、コトリンは鋭い視線でロボットを睨みつけた。
「ねえ、あなたたち」
『はい?』
「そのロボットなら、私たちなんて一撃で倒せるわよね?」
『多分ですけど』
「なら、あなたたちは私たちにとって脅威だと考えられる。だから……」
コトリンは何が言いたいのだろうか。
アミが不思議なやり取りを訝しんでいると。
「あなたたちが私たちの味方だというなら、今すぐ死になさい」
そう、コトリンの口から信じられない発言が飛び出したのだ。
これにはアミもカミーリアもエリーも一斉に声を上げた。
「えっ!?」
『何で!?』
『コトリンさん!?』
自分で自分のHPをゼロにしろ。
そんな命令は誰にも受け入れられるものではない。
ましてや守ってあげた相手からの言葉だ。怒っているだろうか、悲しんでいるだろうか。ロボットの中のカミーリアとエリーの心情は分からないが、絶対に傷つけたことだけは確かだ。
「コトリン、さすがに今のはひどいよ。誰も信じられる状況じゃないのは分かるけど、カミーリアとエリーは私たちを助けてくれたんだよ?」
「それは、そうだけれど。でも、裏切られた時に圧倒的に不利なのは私たちよ?」
「あの子たちは裏切らない!」
「っ……!」
語気を強めるアミに、コトリンの動きが止まる。
「そんなに裏切られたくないなら、まずは自分が信じてあげなきゃ。自分が信じてないのに、相手にだけ裏切るなっていうなんて、不公平でしょ?」
アミの優しく宥めるような声に、俯くコトリン。
その時、ロボットからカミーリアが叫んだ。
『刑事さ〜ん! ビッグニュースですよ〜!』
「カミーリア?」
傷つくどころかいつも以上に楽しそうなカミーリアに、アミは少し驚いたように、コトリンはばつが悪そうに顔を上げる。
そんなアミとコトリンに対し、カミーリアが言葉を継ぐ。
『ターゲットにされてたヒナさん、無事だったみたいですよ!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます