第2章

第4話 地味系ストーカーギャル参上である!

まだ肌寒く感じる春の昼休み。

2人でこの倉庫でご飯を食べるのは3回目になっていた。


もう甘奈に昼はまかせ切ってしまっている。

いやもう完全にカップルそのものだ。


この弁当の美味しさは一回堪能したら依存するまである。


一昨日、昨日のように甘奈が来れば陽が倉庫にあたる。

だけど今日は何か様子がおかしい。

その様子には甘奈も気付いているようだ。


「あんた、たいがいにせぇーよ」


突然甘奈が口を開いた。


「どうした、和泉?」


甘奈は立ち上がり扉を開いた。

だが、扉を開いた先には誰もいなかった。


「ん?さっきから視線を感じたんよ、けど気のせいやったみたい」


「確かに視線は俺も感じたな」


それはきっと甘奈のストーカーだろうそれもスパイ級だろうな。

てか、ここで昼食べていること先生に言われたら反省文書かされるじゃん!それはけたい。

不安に身をけずらせながら昼を食べ終わり倉庫から出た。


「ん?これは女子のネクタイ?」


倉庫を出て扉を閉めたら女子のネクタイが見事にドアノブに引っかかっていた。

なかなかいないだろうネクタイをドアノブに引っかからせて忘れて置いていくなんて。


確認しなくても普段から真面目に制服を着こなす甘奈ではないし、男性用のネクタイは違う色の青だ、だが今ドアノブに引っかかっているネクタイは女性用のネクタイのピンクだ。


「やっぱり誰かいたんやね」


俺たちの感は当たっていたようだ。


「なぁ、和泉、たまには女子と昼食べればいいじゃん」


3日間ずっと俺に付きっきりで女子とのコミュニケーションを厳かにしてきたのだろう。

女子も京都から来た女神と親睦しんぼくを深めたいに決まっている。


「ふふっ、どの口がゆーてんねん」


「…いや俺はお昼購買で十分だから」


別に俺は甘奈の弁当を食べられなくなるから嫌だとは思ってないからな!


「意地はんなくても大丈夫やよ」


いくら口では強がりを言えても顔は正直だということを今初めて経験した。


「そんなことより職員室にネクタイを届けよう」


「そんなことせんでもええよ」


そう言うと甘奈はネクタイを裏返した。

そうだった、ネクタイの裏には名前を書くところがあったんだ。


最上冷華もがみれいか…誰?」


運良く名前は書いてあった。

たまに名前を書かない人もいるから忘れ物置き場には誰のかわからないネクタイがいっぱいある。


「名前からしてなんか冷たそうだな」


「こら、そんなこと言ったらあきまへんよ」


まぁ名前だけで決めつけるのもダメだよな。


「ネクタイ、2年生のやつみたいだな」


「なんでわかるん?」


この高校のネクタイには学年別の刺繍ししゅうが入っている。

1年生は黄色いガーベラ、2年生はオレンジのガーベラ、3年生はピンクのガーベラの刺繍が縫い付けられている。


全学年ガーベラで統一されている。

ガーベラの花言葉は希望、常に前進だ。

学年によるガーベラの色の違いには意味がある。


1年生の黄色いガーベラは優しさ、暖かさ、日光、親しみやすいと花言葉があり。そこから1年生の目標の親しみやすい仲をつくると意味がある。


2年生のオレンジのガーベラは、あなたは私の輝く太陽、忍耐で、そこから3年生に向けて忍耐力をつける目標という意味がある。


3年生のピンクガーベラは、感謝、思いやりの花言葉がある。これは言わなくても想像つくだろう。


「ほーそんな意味があったんどすか」


わかりやすく甘奈に俺が説明したらすごく感激している様子だった。


「で、どうする?俺たちで本人に届ける?」


「そやね、最上冷静さんに届けに行きましょ!」


俺は先生に届けたかったが、甘奈は即答で自分たちで本人に届けると言った。


    ⭐︎     ⭐︎     ⭐︎



俺たちは最上冷華を知らない。だから片っ端にA組からD組まで聞きに行くことにした。

俺たちはA組だ、最上冷華は聞いたことがないからA組ではないな。


ちなみにこの学校のA組は特別進路クラスとなっていてそれなりにやる気がある人が集まっている。


特別進路クラス以外は不良みたいなやつも結構いる。


「B組C組にいないってことはD組やね」


「あぁ、そうだな…」


甘奈はD組に入り最上冷華を呼んだ。


「最上冷華さん、おりまへんか〜?」


最上冷華からの返事はなかったが化粧が濃く、制服を着崩した見るからにギャルが話しかけてきた。


「冷華は今保健室にいると思うよん」


ギャルはそう俺達に伝えると、俺の顔を真剣に見だした。


今思ったけど田舎にギャルとか珍しくない?


「そうですかありがとうございます」


お礼の言葉に反応をしめさずにギャルはしつこく話かけてきた。


「ねぇ、あんたもしかして優気?」


ギャルは俺を知っているのか知らないのか俺の名前を呼んだ。


「そうですけど、何か?」


「かぁーついに仕掛けたんだなーやるじゃん!」


何か俺の名前と顔の確認がとれた瞬間にギャルはなぜか嬉しそうに笑っている。


「どう言うこと?」 


    ⭐︎     ⭐︎     ⭐︎


ギャルに言われたとおりに保健室の扉の前に俺たちは立った。


妙に緊張感がするんだよな…どうしてだろう。


「優気様?何を立ち止まっとんどすか?」


斜め後ろに立つ甘奈はどういう人か楽しみらしい、何か瞳がキラキラ光っている。

すごく眩しく輝く瞳が俺の胸に刺さる。


「じゃあ開けるぞ」


「はい!お願いしますぅ」


嫌な緊張感を押し切り扉をスライドした。


扉を開けば保健室内にはピンクのカーテンの効果で部屋がピンク色になっていた。

保育園とか保育所みたいな感じのイメージだ。

落ち着いて眠たくなる感じ。


だが人は誰もいなかった。


「なんだ、誰もいないじゃん」


ネクタイを返さなければいけないのにホッと安心してしまった。


「いえ、いますよ」


「え?どこに?」


甘奈はベットにかかるカーテンを開いた。


「どうも、最上冷華さん、はじめまして〜」


めっちゃ驚いている。俺も最上冷華と思わしき人物も。


「君が最上冷華さん…?」


予想どおり…とはいかないがいい点いっている見た目だ。


元からなのか綺麗に茶色に染まった肌、染めたであろう黄色く長い髪、制服はワイシャツの上から3個くらいボタンを外した軽い服装。


ボタンが外されたワイシャツからは茶色に輝く夕陽みたいな2つの山が覗かせていた。


いわゆるクロギャル、嫌な予感的中。

めっちゃ怖い。

でもなんかクロギャルも少し驚いている。


「そうだよ…何か用?」


何か具合の悪そうなクロギャル、最上冷華。まぁ保健室のベッドに横になってるんだもんそれは具合悪いさ。


見た目はクロギャルに反して目つきは優しく感じる。


「あっえ、えっと」


クロギャルが怖くてなかなか言葉が出せない。


「はは、優気怖がりすぎ」


冷華は少し笑っている。


「優気様、人を見かけで判断したらダメどす」


甘奈は戸惑っている俺の背中をバシッと叩いた。

それにより俺は緊張が解けた。


「最上さん、ネクタイ忘れているよ」


ポケットからぐしゃぐしゃになったネクタイを冷華に渡した。


「優気様?人様のものは大事にせんと!すいません、冷華さん」


甘奈に普通に怒られた。


「ん、ありがとう優気」


「あぁうん」


何かめっちゃ愛おしく感じるなこのクロギャル。テンション低めだし。


でもなんで俺と目を合わせようとしないんだ?甘奈とは普通にはなしているのに。


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