第3話 大和撫子の彼女が許嫁である!

あの転校生による疲れによりぐっすり今日は寝られた。

目覚めの朝はすごく気持ちが良かった。


田舎にあるホテルだから何の音も聞こえなく評判のいいホテルだ。

問題点は観光地が周りにないことだ。

近くに動物園くらいしかない。

それも動物がなんかぐったりしてやる気がないのよ。


そんな事はさておき、


「何であなたがここにいるの?」


なんと言う事でしょうあの女神甘奈様が我が家に降臨しています。


「何で、とは何どす?」


まるで当たり前かの様に甘奈はリビングにいる。


「質問を質問で返さないでくれるかな?」


「ふふっ、ほんまいけずやね」


こんな可愛く笑われても腹立つものは腹立つ…まぁいっか。

会話成立してない気もするが。 


「で、和泉さんはどうしてうちを知ってるんですか?」


「それはもちろんあなたのお嫁さんやからよ」


軽くウィンクをする甘奈。

まったく可愛い…いや可愛くない。

意地でもこいつに誘惑されてたまるか。


「え?和泉さんが俺の嫁?」


「おじい様から聞いてないの?」


「あれか…」


昨日の事なのにすっかり忘れていた。

あの迷惑な約束だ。

薄々は俺自身甘奈が許婚相手ではないか?と感じとっていた。


「あー、すいません。それ断ります」


「え?」


甘奈の表情が固まった。


「そんな…」


わざわざ北海道まで引っ越して来たというのに申し訳ないが俺はこの件を無かった事にしたい。


「わかりました。お邪魔しました」


甘奈はどうやら素直に納得してくれたらしい。鞄を持って家から出て行った。


ずいぶんと呆気なかったような気もするが、一見落着だ。


    ⭐︎     ⭐︎     ⭐︎



すぐに理解してくれてありがたいものだ。

問題の一つは解決した。


本当に申し訳ないな、今日から北海道の魅力を教えてやろうかな。


そう思い鞄に北海道のここ十勝の牛の牛乳、五葉牛乳を入れて学校に来た。


ちなみに俺は牛乳は大っ嫌いだ。

あの胃に膜が張られている感じと飲んだ後の後味が嫌いだ。


だから小学生の頃、バス学習で五葉乳業に行った時は牛乳を先生にバレない様に隣の子にあげた思い出がある。


俺は教室に入り甘奈の前に立った。


「和泉さん、今朝はすいませんでした。よかったらこの牛乳飲んでみて下さい」


甘奈はプイと知らないフリをした。

また可愛くほっぺたをふくらましちやって。


「あのー和泉さん?」


反応なし。


「うち牛乳は間に合ってます」


何が言いたいのかわからないが何か含みのある言い訳だ。


「もしかして牛乳嫌いだった?」


「優気様、うちの事ひんにゅーとか思ってんちゃいます?」


なんと、良かれと思ってやった事が裏目に出るとは…まぁ、おっきい方が…何考えてんだ俺。


「いやいや違うって、十勝の牛乳美味しいんだって!」


飲んだことないけど。


「うちは隠れきょにゅーや」


いや、そういう事を聞きたいわげじゃなくて…絶対嘘ついてるな。


「今嘘ついとるなーって思ったやろ?」


「…いえいえまったくもって思ってませんよ」

 

甘奈は俺に初めて睨む様な目つきをした。

何の仕草をやっても可愛いな…。

ってあれ?俺って女子恐怖症じゃなかったっけ?


「ほら、触ってみー」


「は?」


なんと言う事でしょう。

大胆発言。

しかも大きな声で甘奈は言ったため周りから。俺は罵声を浴びせられた。


    ⭐︎     ⭐︎     ⭐︎


昼休み、結局甘奈は牛乳を飲んでいた。


「おいしぃ〜ありがとうね〜優気様」


何と簡単に機嫌が治りました。

思ったよりか単純な女の子でした。


気のせいか甘奈の肌が艶々のになっている様な気もする。


「おう、こちらこそ弁当ありがとう」


もう敬語を使うのもバカらしい関係だと思い俺は敬語をやめた。最初甘奈はすごく喜んでくれた。


今日は甘奈の弁当オンリーだ。

元から今日は購買でパンを買おうと思ってから丁度いい。


「ふふっ、優気様に味気に入ってもらえてすごく嬉しいわー。うちをお嫁さんにどうですか?」


さりげなく嫁アピールをする甘奈。

何故こんなにも俺との結婚を望んでいるのかわからない。


「間に合ってます」  


「うちは諦めへんよ」


どうやら元々諦めるつもりはなく、いったん引いて逆に俺を近づかせる作戦だったのだ。


「うち、優良物件やと思うけど」


「自分で言っちゃうかい。まぁ確かにそうだけど」


「何でなん?嬉しくないん?」


正直言って実は嬉しいとは最初から少し思っていた。

だが許嫁とは悪いイメージで無理やり好きでもない人と結婚すると言う感じがして嫌だ。

そもそもが俺たちの意見は通らない。

我ながら皮肉なものだ。


彼女もきっと普通の恋愛がしたいに決まっている。


「まぁね…でもね、普通に恋愛がしたいんだ。気持ちわかるでしょ?」


「気持ちはわかります、せやけどおば様に迷惑はかけたくありません」


おば様のいいなりか、俺も同じ様なものだけどね。一家の存亡もかかってるししょうがないか。


「そっか、お互い苦労するね」


「ふふっ、全然。おば様が大好きやから苦じゃありまへん」


なるほどおばあちゃん子らしいな。

この笑顔には偽りは一切ないであろう。

彼女の家の考えは大体予想はついた。


彼女の家は祖父から老舗和菓子屋と聞いていた。

きっと経営が厳しいのだろう。

源田ホテルは京都にも拠点を置いている。

そしてなんかの縁でこう言う話になったのだろう。そして結婚すれば和菓子屋は維持できる。


京都は腐るほどに和菓子屋ありそうだしな。


…俺は今後何が起こるか分からないがとりあえず甘奈の弁当を味わった。


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