残りの入院生活

 朝のうちに尿道に入っていた管を抜いて、手術着から自分のパジャマへと着替えていた。この時にお湯で濡らしたタオルで体を拭いてくれる。

 

「ゆっくりでいいですから、起き上がれますか」


 と、促されたので、点滴の管に気をつけながら起き上った。

 寝返りの時も思ったけど、お腹に傷があるはずなのに全然痛くない。ひょいと軽やかに起き上がれたので、看護婦さんにも意外そうな目で見られた。

 この時から、痛み止めはすぐ出しますから、我慢しないで言ってくださいね。と、何度も言われるのだが、お腹は痛くないので迷う。嚢胞を切除した所は膣口に近いので、座ってる角度によっては傷に触って痛かったりするけど、それは痛み止め云々じゃないし。


 着替えの時は点滴の管を外して袖を通す。途中にジョイントがあって、色々つけ外しが出来るようになっているのだけど、昔の人間なのでこれがちょっと怖い。空気入っちゃダメじゃなかったっけ! とか思ってしまうのである。

 看護婦さんも慣れた様子なので大丈夫なんだろうけど。


 身体を拭いて、着替えも終わってさっぱりすると朝食の時間になる。

 帝王切開の後は重湯から始まった食事を思い出したので、朝食もおかゆとかかなぁって勝手に思ってた。

 運ばれてきた朝食は量も内容も普通の朝食だった。ご飯とサケの切り身とブロッコリーのあえものとか、そんな感じ。牛乳は毎朝ついていて、デザートにゼリーやフルーツがつくことも。

 普通に食べていいんだ、と謎の感動をしたけど、術後だからか食欲はあまりない。均等に半量を食べてお終いにした。


 午前中に医師の回診があるのだけど、担当の先生ではないし、軽く様子見という感じで慌ただしく去っていく。ベッドの上で起き上がって本を読んでいた私を見て「おっ。いいね」と一言残していったくらいだ。

 管が取れてしまうと動いた方がいいらしいのだが、点滴しているとあんまりうろうろするのもどうかと思ってしまう。手術の次の日だから、ベッドで起き上がっているというのも動いてることになるのかもしれない。


 昼食はお蕎麦だった。

 これなら食べれるか? と頑張ったけど全部は無理だった。頑張りすぎてちょっと気持ち悪くなったり……無理はするもんじゃない。

 晩御飯は8割食べられた。昼に食べ過ぎてなければ全部いけたかもしれない。ともあれ、回復を実感する。




 術後2日目。この日は金曜日で、退院が日曜になるので支払いをしなければいけない日だった。カードも使えるので現金が無くても大丈夫。自分で行っても良かったけど、旦那が休みを取っていたので払いに来てもらった。


 お腹の傷は下腹部左右1ヶ所ずつと、右腹に1cm〜2cm程度、どれもサージカルテープのような絆創膏で留めてあるだけ。おへそも奥の方に赤く血の跡が見えたけど特に何かしていることはなかった。こちらの傷は順調に回復してると思われる。(痛みが無いので傷が開かなければ大丈夫だろうと思ってる)


 膣内部からの分泌物は、褐色のものに少量だが鮮血が混ざったりしていた。量は多くないのでそんなものかと思いつつ内診へ。

 先生に経過を診てもらうと、一部傷の治りが遅くじゅくじゅくとした部分があること、嚢胞は実は3つあって、一番奥のものは切除ではなく切開して内容物を出したこと(場所的に他の臓器を傷つける可能性があったためと説明を受けた)、その切開した傷から血が染みだしている事を伝えられた。

 多量ではなかったため、圧迫のガーゼを入れて様子見。この内診が入院中一番痛かった。傷に触るのでちかちかした痛みがあったのだ。


 この日で点滴も終わり。抗生物質の最後のパックが無くなったら抜きますからね。と言われていたのに、なかなか終わらない。落ちるスピードもゆっくりになったりするようになっていて、針を少し動かしたりしたのだけど改善せず。残り3分の1くらいだったので、看護婦さんが先生に確認を取って、終わりになった。血管が固くなって液が入り難くなっていたようだ。


 点滴が外れると気分もスッキリする。

 看護婦さんに洗髪もしてもらえて、よりスッキリ。1階のコンビニまで買物に行ってみたりもした。




 術後3日目。

 抗生剤の内服薬が処方され、シャワーも解禁。

 先生の診察では昨日の傷も閉じて来てるようで大丈夫でしょうということだった。その後、手術の経過について写真等見せられながら説明を受けた。

 摘出した子宮は220g。通常は30g程度とのことなので3倍もあったことになる。写真ではカットして出したため、丁度モツみたいになっていた。

 嚢胞の話ももう1度聞かされ、退院後の生活についてと次回の予約日を決めた。


 この日はお昼頃に両親と妹がお見舞に来てくれた。

 面会室で一緒にお昼を食べて(お弁当持参できてた)しばらく雑談をかわす。

 用事が別にあるらしく、すぐに帰って行ったけど、会話が出来たのは楽しかった。




 退院。

 ナースステーションに挨拶でも……と行ってみるも、みんな忙しいのか、日曜だからか、人がいない。仕方ないと諦めてそのまま退院してきた。

 家に何もないだろうと、スーパーに寄って食材を仕入れる。次の日お弁当を作らなければいけなかったので。でも、晩御飯は外食にした。退院当日くらいはいいだろう。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る