彼女みたいになりたい
教室をでた彼女が校長室の方向とは逆の方向へ迷いなく進んでいくのが、廊下側のすりガラス越しに見えた。
「ちょっと田中さん。どこへ行くんですか?」
「今なら帰ってもばれないかな、と思いまして」
優等生の彼女らしからぬ、いやしかし、言ってしまうところが彼女らしいともいえる。
廊下の様子を見ようとした同級生が廊下側の窓を開けた。
「ダメですよ。ちゃんと校長室に行ってください」
彼女はちょっと思案しているような表情を浮かべて立ち止まった。
どこからともなく大きな足音が聞こえてくる。そのあとに、その足を止めようと焦っている声もついてきている。
彼女の表情が引き締まった。
「お前のせいで察につかまったんだ、どうしてくれるんだ」
「あなたの自業自得でしょう? 暴れると罰金だけではすまなくなりますよ?」
「うるせえ、おまえのせいだ」
うるさいのはお前のほうだ、といいたくなるがじっとこらえる。
彼女があんなでかいやつに立ち向かって警察に送り込んだなんて、見た目からは想像もつかない。
「なんで? 私はあなたのおねがいをかなえてあげたのに…」
その時、でかい奴が彼女に殴りかかった。
教室にどよめきがおき、教師は取り押さえようと近づいた。
「先生、邪魔です。近づかないでください」
彼女の声が廊下に響き、じりじり、という音がした。
次の瞬間には、男の分厚い上半身が廊下の仕切りで見えなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます