空想癖

タケノコ

彼女みたいになりたい

優等生の彼女の席に、今日はだれも座っていない。


先生は気が付かないようで、ホームルームは終わってしまった。


いつも彼女はクラスで三番目くらいには学校についているはずなのに、そう思いながら興味のもてない黒板から目をそらした。


学校の校門からかけてくる人が見える。彼女で間違いないのだけれど、いつもは束ねられている髪が今日は束ねられておらず、ぼさぼさだった。


しばらく時間がたって、教室のドアがゆっくりと開いた。

 「おはようございます。田中さん。」

 「おはようございます、先生。遅れてしまい申し訳ありません」

優等生らしくはきはきとした声で言う。

 「珍しいですね。どうしたんですか」

 「腹痛がひどかったので、遅れました。もう大丈夫です」

先生に促されて席につこうと一歩を踏み出した。


キーンコーンカーンコーン…

 「授業中、失礼します。3年Ⅾ組、田中琴音さん、至急、校長室まで来なさい。」

繰り返されるその声は少し焦っているようだった。


 「嘘をつくのは苦手なんです」

放送がおわっても、やけに静かな教室の中で彼女はそう言った。


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