第10話 恋ってツライ
いつもと同じ帰り道、いつものようには会話が弾まない僕達。
気まずい……。
「ルナちゃんて可愛いかったね」
「あっ……ああ」
「奏さん、ルナちゃんの前でガチガチでしたよね」
「そ……そんな事はない」
さっきから、こんな会話の繰り返しだ。
……本当に気まずい。
でも……。
でも、もし……。
僕が本気でルナちゃんの事を好きになったら、2人との関係はどうなるのだろうか。
2人の事は大切だ。
これは間違いない。
恋愛対象になるかと聞かれれば、間違いなく恋愛対象になる。
ただ、それ以上に今の関係が心地良いってのが本音だ。
2人にはオンラインで随分お世話になっている。むしろ2人が居なかったらオンラインでも誰ともコミュニケーションを取らなかった可能性まである。
だから2人のうちのどちらかに恋心を抱いたとしても、僕はその気持ちを打ち明けることができないだろう。
少なくとも今は……。
でも、ルナちゃんのような第三者だった場合、2人は僕の事を祝福してくれるのだろうか。
もし僕とルナちゃんが付き合うようなことになっても、2人はこれまでのように僕と仲良くしてくれるのだろうか。
まあ、オフラインは無理だとしてもオンラインで……。
そんな事を考えている間に駅に着き、今日は解散した。
2人のことを見送る僕に、2人は示し合わせたように『あっかんべー』をしてきた。
リアルであっかんべーを見るのは小学生の低学年以来だった。
女子高生のあっかんべーは……『あり』だ。
このシーンは僕の宝物になるだろう。
——家に帰ると、酷い倦怠感に襲われた。
何もやる気が起きない。
毎日の習慣になっているギターを練習するも、身が入らない。
これが恋の副作用なのか……。
噂では聞いた事があったが、我が身に降りかかると恐ろしまでのマイナス作用だ。
——何をやっても落ち着かない。
食事も喉を通らない。
眠ろうとしても眠れない。
心がずっとざわざわしている。
ヤバイ、恋って本当にヤバイ……。
今僕の身に起こっていることは、一般的に恋に落ちた時の症状と照らし合わせても何ら特別おかしなところはない。
分かりやすいぐらい恋の症状だ。
恋をしてるやつは、皆んなこんなに辛いのか。
皆んなこの辛さを乗り越えて恋をしているのか。
どんなメンタルしてるんだよ。
皆んなこの落ち着かない気持ちと、どうやって向き合っているんだろう。
そうだ! こんな時こそネット検索だ!
——早速検索してみた。
『友達に相談したらスッキリしました』
『友達に話したらちょっとマシになりました』
『友達とカラオケで発散しました』
……詰んだ。
相談できる友達なんて僕にはいない。
気軽に話せる友達なんて僕にはいない。
カラオケなんて家族以外と行ったことがない。まさか今から母さんとカラオケに行って発散するなんて出来ない。
辛い。
本当に辛い。
本当に誰か助けて欲しい。
こんなにまで辛い思いをして、なぜ人は恋をするのだろうか。
まあ、僕の場合、恋をしようと思ってしたわけじゃない。
気がついたら心が奪われていたのだ。
本当に奪われたって言葉がしっくりくる。
考える間も無く好きになっていたのだから。
どうしよう。
ルナちゃんに会いたい。
会ったからと言っても、どうせ何も話せないんだろうけど……。
それでも……。
それでもルナちゃんに会いたい。
ん……そういえば……。
あんな子うちの学園にいたのか?
あれほど可愛かったら既に噂になっているはずだ。
窪田衣織の相手を務めるほどなんだから尚更だ。
そもそも何年なんだ?
少なくとも2年ではない。
いくら僕が陰キャでも、あれほどの可愛い子を見たことがあるなら覚えているはずだ。
となると3年の線もない。
可能性があるとすれば1年だけだ。
明日……それとなく五十嵐さんに聞いてみよう。
そして……軽音部。
見学だけでも行ってみよう。
僕はうだうだと眠れぬ夜を過ごした。
せめて夢の中でルナちゃんと会いたいと思いながら。
結局朝まで一睡もできなかったのは内緒だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます