第4話 はじめての修羅場
突如現れた
やばい……めっちゃ可愛い。
そんな可愛い年下の彼女がなんで僕なんか探してたんだ。
「あの……「ねえちょっと」」
「あっ……はい」
「あなたいきなり何の用? 今、私たち大事な話ししてるの。見て分かんない?」
あれ、田淵さん少し怖くないですか。
「ご……ごめんなさい」
素直に頭を下げる五十嵐さん。でも、立ち去ろうとする様子はない。
「まだ、何か用なの?」
「その、私も沖さんに大切な話がありまして」
「はあ——っ?」
ひぃぃぃっ怖い。
「
か……奏だと……。
家族以外に下の名前で呼ばれたのなんて、いつ以来だろうか? おそらく物心ついてからはじめての出来事だろう。
女子はおろか、男子にすらない。まあ、友達がいないってのもあるけど……まさか……まさかそんな僕が女の子に下の名前で呼ばれる日が来るとは……感無量だ! 今世界が終わっても僕に悔いはない!
「ねえ奏? なんでまた止まってるの?」
に……2度も呼んだ!
男友達にすら呼ばれたことないのに! って男友達いないんだけど……。
「なんで目を見開いだまま固まってるのよ! しっかりしてよ!」
はっ! ぼ……僕は何を?
そうだ、名前だ下の名前で呼ばれたんだった。
なんて破壊力が高いんだ。しかも田淵さんのような戦闘力53万クラスの可愛い子なら尚更か……。
「あ、ああ……ごめん何?」
「あれ? 何だったっけ? 会話に間が空きすぎるから、前後の話し忘れちゃうよ」
「奏さんが私の知り合いかって聞いてましたよ?」
い……五十嵐! お前もか!
あ、呼び捨ててすみません。
なんて衝撃だ……五十嵐さんにまで下の名前で呼ばれるなんて……こんなことが続くと金色の光を発する伝説の戦士として目覚めてしまうかもしれない。
「奏さん? 大丈夫ですか?」
だ……大丈夫だぁ……って言えるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
僕の死因はノートに名前を書かれたからじゃありません。名前を呼ばれたからです。って意味不明な遺言が必要になるじゃないか!
「オカん!」
「あ……」
「全然話が進まないじゃない……」
「ご……ごめん田淵さん」
「オカん?」
「あ……ああ、なんでもない!」
身バレというかSNSバレなんかしたくない。むしろSNSで身バレするより、リアルでSNSバレする方が恥ずかしいまである。
「い……五十嵐さんのこと……僕、知らない」
「私が知ってます!」
「いや、あなたが知っててもね……」
「お二人のお話が終わるまで私、待ってます」
「え……でも」
そんなこと言われても、僕知らないし。
「ダメ……ですかぁ?」
猫なで声に潤んだ瞳。
アニメでしか存在しないと思っていた。スキの多い主人公ならイチコロでその声と瞳に落とされてしまう。
僕はアニメをみる度に思っていた。
『そんな簡単に人の心は開かないよ』
フルオ——————プン!
こんな可愛い子に猫なで声で、潤んだ瞳で訴えかけられて誰が断れると言うんだ! そんな勇者がいると言うな僕は魔王になる! 魔王になって旅立ちの街で未然に災いのタネを刈り取ってやる!
そこまでして守らなきゃならないんだ!
「ねえ」
「はい」
「また固まっちゃったんだけど」
「そ……そうですね……」
「おーい」
返事がないたただの……じゃない。
衝撃が強すぎてついつい現実に帰る時間が遅れてしまう。
「ねえ、あなた奏とどんな関係なの?」
「関係ですか……」
「そう、2人の関係」
「と言われましても」
「だってさ、普通ねこうやって2人でいるんだからデートかなとか思って声かけるの躊躇しない?」
そ……そうなのか? 普通はそうなのか?
「それでも声かけてくるんだから何か相当な理由があるんじゃないの?」
「そ……そうですね」
「早くいいなさいよ」
「沖奏さんは……」
「なによ、やけにもったいぶるわね」
「沖奏さんは……」
本当にもったいぶるな。
「私のはじめての人なんです!」
「「はあ————————っ!」」
は……はじめての人って何?
僕、彼女に会ったことすらないよね?
あれ……僕……。
知らない間に卒業してたの?
————————
【あとがき】
流石に知らない間に卒業はないと思いますが……。
本作と舞台を同じくしたラブコメを公開しております。
『幼馴染にフラれた僕が何故か学園のアイドルに告白されて平穏な日々を失った』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894733613
同じ学園を舞台にした物語でメインヒロインが奏と同学年で、主人公が芽衣と同学年です。
合わせてお読みいただけると幸いです。
本作が気になる。応援してやってもいいぞって方は、
★で称えていただけたりフォローや応援コメントを残していただけると非常に嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
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