うつを拗らせながら生きる36歳の今
シュン
自己紹介ーうつと文章とコロナ
高校三年生の大学受験でうつを発症してからもう18年が経とうとしている。もう、うつとともに生きてきた人生の方が長くなる時期が迫っている。いまだに薬を飲まないと変な症状が出てしまうので、しばらく薬は止められない。
うつになるのが早すぎた。18年ほど前は精神疾患に対する認知度が低く、怠け者とを揶揄されるような世の中だった。そんな中、医師の診察は適当だったし、適切でもなかった。そのせいか、ずるずるとうつが長引き、持病のようになった。
うつのせいで右往左往してきたが、文章だけが生きがいだと盲信して編集プロダクションに入社した。編集業は思った以上にハードでうつを悪化させた。3年間勤めた後、半ば逃げるようにフリーのライターとして独立することにした。
フリーライターとしてはもう9年目。有難いことに仕事は断らなければならないことも多いほど舞い込んだ。文章を書けばいい生活が続いたのは苦しくも楽しかったような気がする。しかしある時から、文章も書けなくなるほどうつが悪化した。
薬も飲んでいたし、原因不明だった。絶望した、何度も。うつを患いながらも、大学時代から文章しかないと思って文芸創作ゼミなどで散文を学んできた。ライターとしてキャリアを積み上げようとした。わずかな文章のセンスだけが私の取り柄だった。
しかし、そのセンスと努力と経験はすべてリセットされた。人生ゲームで言う振り出しに戻る、だ。
様々な医療機関に通った結果、双極性障害へと移行した可能性が高いと判明した。そのせいで薬が合わなくなったというのが自分で得た結論だった。薬を変えたら、多少は改善したが、以前のように文章を書く集中力がない。
それでも、生きていくためには文章を書くしかなかった。塵芥みたいな文章を書いてお金をもらう日々が続いたが、本意でない文章を提出するのが嫌になってライター業を止めたり、セーブしたりした。なぜライターの仕事が来るのか、もはやわからなかった。人手不足なのか、妙な業界だと常々思っている。
今は体調と相談しながらほそぼそとライター業を行う傍ら、パートを行って何とか生計を立てている。正直言えばパートの方がラクだ。決められたことをやればお金が貰える。脳で文章を作り出さなければならないライターとは負担が違う。
パートに出ると、奇跡的に私を好いてくれる人が現れた。絶望の中の一筋の光とはこのことだ。結婚し、今は1児の父であり、妻のお腹には新しい命も宿っている。
結婚も子どもを作ることも、昔からの夢だった。親孝行になるとも思ったし、実際に孫の誕生を喜んでくれている。いつ死んでもいい自分にそんな機会や縁が来るとは思わなかったから、チャンスを逃すつもりはなかった。
憂鬱なのは今後だ。妻や子どもに対する責任がのしかかっている。しかし、そんなのは当たり前だ。自己責任なのだから。勝手になんとかしろ。自分も思うし、他人から見てもそう思うだろう。
しかしこう考えればどうだ。結婚しなければ私は自殺していただろう。何の役にも立てない人間として苦悩した後に。
勝手に自殺しておけよ、と思う人もいるだろう。ただ、私は自殺を決断することはできなかった。親のために、これまで自殺を防ごうとメッセージを出してくれていた人たちのために、尊敬する人のために。
さらに、自殺できなかった大きな要因は、尊敬する人が自殺したら誰とも会えない別の世界へ行くと言っていたことだ。死後の世界など特に信じてはいないが、昔、死んでしまった愛猫に会えなくなることだけはどうしても嫌だった。
自殺を選ばないことは総合的に考えて正しいことだと考えた。そして、自殺しないために守るべきものを作ることが効果的だとも考えた。
結果、私はまだ生きている。
ただし、かろうじて生きてはいても収入は酷いものだ。去年は過去最低を更新したが、年収150万円にも満たなかった。妻の育児休業給付金などもあるから生きてはいたが、今後生まれてくる2人目の子どものことを考えたら、あまりにも侘しい。
世界では新型コロナウイルスが猛威を奮ってはいるが、実は私の場合にはそんなことなど関係なく、元から希望も気力も体力もない。むしろ、コロナで抜本的に何かが変わってくれた方が子どもや妻のためなるかもしれない、と何かしらの変化を心待ちにしているところすらある。
何かをしたい、何かを変えたいとは常々思っている。だが、心がついて来ない。脳が体を動かそうとしてくれないのだ。それでも、できることをするしかない。どれだけみみっちいことであっても、私にできることは私の最善しかないのだから。
うつにまとわりつかれ、こぼれ落ちた文章のセンスを頼りに、これからのコロナ時代を生き抜こうと、ただ文章を書いている。
うつを拗らせながら生きる36歳の今 シュン @kario613
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