33話 決意。それは少年の意思。
「ほう?貴様は自らが何者であるかの記憶がないと申すのか。それに、連樹子が勝手に作動したと?」
白昼夢の出来事を除いて、ノインは連樹子に関することを全てリヴィアに話した。
「であれば、言えることはその連樹子とエーテルの同時使用はやめるべきじゃ。使えば今回のように連樹子が暴走してしまうだろう。それに、原始術法そのものは連樹子がなくとも使えよう?」
「はい。この魔動器人形の演算機能を使えば可能です。でも、連樹子がまた勝手に動き出すのではないかと不安です」
「ふむ、そうじゃな。では、
リヴィアはノインに向かって自在式により制御式を構築する。ココを強く想えば想うほど、その束縛は重き鎖となりノインを縛る。果たして自在式による領域魔法は完成し魔法の光がノインの心臓に収束していった。
ノインはその光を受け入れて安堵したのか肩の力が幾分抜けたように感じられた。リヴィアはそんな彼に「他に聞きたいことはないか?」と質問を誘う。
「その、それじゃあ、聞きたいことがあるのですが、その・・・聖霊契約での魔術はどうなるのでしょうか?」
「聖霊契約は、お主の代わりに
「分かりました。リヴィアさんに頼むのは、最後の手段としたいと思います」
「そうじゃな。繰り返しになるが、エーテルと連樹子をそれぞれ単独で使う分には系譜浸食は生じない。ノイン、肝に銘じておくのじゃぞ」
リヴィアの指はココの胸の上で止まり新たな領域魔法が紡がれた。その魔法は優しい光でココを包み込み、彼女の胸に吸収されていく。
「ココに吾の加護を授けた。これで多少は回復効果を受け易くはなるであろう」
ノインに告げると、今度は彼の傷口を塞ぐ魔術を放つ。そして、さらに念を押す。
「よいか、ココに対する守護は気休め程度でしかない。だから決して忘れるな。連樹子とエーテルの同時使用は系譜浸食を引き起こすことを」
ノインは深く頷く。
リヴィアは不意にノインから目を離し、彼の肩越しの先にある森を伺う。その見つめる先をノインも遅れて辿った。森向こうから魔獣の群れの反応があるのをノインも感じ取る。どうやら先程の魔法で焼かれた森に生息する魔獣が大きな一団を形成しているようだった。
「ノイン、試してみるがよい」
リヴィアは静かな寝息を立てているココを抱き寄せ、少女の髪を優しく撫でている。ココのことはリヴィアに任せておけば安心だとノインは思う。
―――ざく、ざく
畑を耕す音がする。確かペルンはリヴィアから畑の真ん中に吹き飛ばされていたはず。視線を向けた先では畑の陥没した場所で作業をしていた。崩れた畑の土を鍬を使って猛烈な勢いで搔き集めていたのだった。ココが大丈夫なことを確認していた彼は「畑は一日にしてならねえべ!」そんな文句を鍬に乗せて耕していた。
「ペルン・・・魔獣がすぐ近くで集団を形成しています」
「魔獣がいんのか?集団化している魔獣はすぐに散らけて各地を襲うべよ。そうしたら俺の畑もココの家も荒らされちまうべ。んだから、全滅させねえとな。誰が浮島の支配者か分からせてやるべよ!」
そう言ってペルンは刀を手にする。「ココは大丈夫だ。ユリとウナギが付いてっからな。んだら、ノイン、行くべよ」ペルンの掛け声を合図にしてノインも魔獣たちの塊に向かって走る。
ノインは残っている左腕で鉄の棒を構え、ペルンと魔獣の討伐に向かうのだ。
彼らに対する魔獣の数は30頭。そのなかでも中程度が5つ、群を抜いて強いのが1ついた。
ノインは彼我の実存強度を測る。
実存強度 ノイン :1.370
ペルン :1.031
魔獣 :1.190 × 24頭、1.272 × 5頭、1.705 × 1頭
リヴィア:4.833
ユリ :2.015(X.XXX)
こうして魔獣の群れを全体として感知してみると
もう誰も傷つかせない。
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