5人目のハウスメイト

リビングに入るとまず大きいL字の白いソファが見えた


ソファの前には大きいテレビがあって


他の三人がテレビを見てた


見てるのは知らないドラマで

英語音声の英語字幕で見ていて


画面の中で話される英語は


本当に理解のできない小さい子の動きのようだった


「よう、部屋見てきたか」


「うん!めっちゃきれ...」


ん...?


声を掛けるわかの手元に毛むくじゃらがいる


それはきれいに丸まって

頭だけををわかの膝の上にのせて寝ている


知らないにおいを嗅いだせいか

マイクが部屋に戻ってきた嬉しさか


耳をピンと立てて顔を起こす


へッへッへッへッ


荒い息と振動を起こして

こっちの方に駆けて寄ってくる


「たしかドーベルマンだっけな」


わかが言った犬種は大型犬のドーベルマン


僕の前に来て

「welcome to my house」とあいさつをしてくれた

(ようこそ、私の家へ)


大型犬だから僕は体全部を使ってよしよしと挨拶をした


そうすると人懐っこい犬で尻尾をぶんぶん回して

顔中をなめながら跳ねているってか暴れてる


体がでかい分、いろいろと強いけどかわいい


大きい犬と戯れることのなかった今までの自分

体全身をつかって抱きしめることのできる大型犬に

振っている尻尾が力強くて少し痛いことに感動した


「カリーって呼んであげて」


エミリーが名前を教えてくれた


カリーか


それはまるで


「カレーみたい」

「カレーじゃないよ」


ミケーラが日本語で僕と同じタイミングで言った


「カレーじゃないって」って


わかはにやにやしていう


...


「絶対にカレーっていうと思った」


ミケーラとわかが2人していう


...


エミリーが今のやり取りを英語で

マイクに伝えて、2人一緒に笑っている


なんか2組さんラブラブやんって思う1組の僕


エミリーとマイクは悪くないとして


古典2点野郎(わか)に負けてる今の僕は

1人を寂しく感じてしまった


高校生の時、1人も彼女いなかったのに

ガールフレンドシックになってしまった


海外に来て

1度もホームシックは感じてないのに

ガールフレンドシックになるなんて


人として少し弱くなったかな


なんか、彼女っていいな。って思った19歳


ソファとテレビがメインのシンプルなリビングに

なぜか1台のデスクトップパソコンとノートパソコンが

並んで2つの机に置いてあるこの家で


独り身が1人、暮らしていく


ガラガラガラ


ノートパソコンが置いてある机の近くの窓が開く


「泥棒!!?」


身構える僕とは裏腹にみんなはその男を受け入れてる


「おお、出てきたな。こいつがションだぜ」


あ!!


わかの一言で思い出した


そうだ。車の中でもう1人住んでる人がいるって

雑に話していたことを思い出した


ションは独り身で

このカップルしかいない空気の中

1人、暮らしているんだね


この戦場で戦い続けている先輩には

僕から挨拶をしなくては


僕は右手を差し出し言う


「nice to meet you」(よろしくお願いします)


ションの右手が重なる


「nice to meet you too」(こちらこそよろしくお願いします)


わかと再開した時よりもきつくかたい2人の握手


暦は8月に差し掛かろうとしてる冬の

南半球で春風が吹いた気がした。

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