寿司 スシ sushi

「ほんまにどないしましょか」


自分に問いかけても、答えは


「ほんまにどないします?」


質問に質問の応酬


暦は7月、季節はほぼ冬


仕事を待つ仕事をしてはや2日


その短期間で他の人が続々と仕事が見つかっていく中


自分だけが見つからない。


その環境に焦りを感じる。


ニート(仕事を待つ仕事)をしている僕を見て


「my friend is looking for job」

(俺の友達が仕事を探してるんだけど)


ベンが畑仕事のスーパーバイザーに訪ねてくれてたらしい


そのことをマリアーノから聞いた。


一見、冷めている風に見えて優しいベン


心がじんわりとして、仕事もらえる!?という期待感に心が躍った。


が....


「this is physical job so friend have to strong body...」

(力仕事だから、力のある強い体が必要だけど...)


そうスーパーバイザーに言われてベンは口を閉じてしまったらしい


ドイツ人やアルゼンチン人より華奢な日本人


その日本人の中でもさらに

華奢な僕の体では確かに口を閉じてしまう。


ベンの優しさに触れただけで満足だと

今は英語を勉強するための期間だと


自分に言い聞かせて


僕はベットの上で野球ドラマのズーキールを英語字幕でみて


「夢にときめけ! 明日にきらめけ!」と自分を鼓舞する


コンッコンッ


時刻はお昼下がり、まだ2人が帰ってくる時間ではない


不思議に思いながらもベットから立ち上がり、ドアを開けた。


「Hi how`s going?」

(へい、調子はどう?)


目の前に現れたのはロブだった


「Hi I`m no bad」(へい、悪くないよ)


「actually I can give you job tomorrow 」

(実は明日、仕事をあげられるよ)


「え!!」


ベン達と同じあのフィジカルの仕事出来るの!?と

驚きと嬉しさで日本語が漏れた


「that's job is Fish factory」(それは魚の工場)


「ohh...」(おぉ....)


意外な言葉に英語で漏れた


「you are Japanese so you don`t mind it right?」

(日本人だから気にしないよね?)


「yeah」(そうだね)


「cuz we eat ...」 (日本人は...)


「sushi」「sushi」(寿司食べるからね)

(寿司)(スシ)


ロブがにやにやしながら「sushi」という言葉を被せてきた


なぜか僕はそのスシのアクセントが気になって


「shushi」 

 ➚ ➘


アクセントを訂正した


「shushi?」 

➚ ➚


惜しいがちがう


「shushi」 

 ➚ ➘


「shushi?」 

 ➘ ➘


んん...?


限りなく遠くなったし、どうやって今発音した..?


僕はめげずにアクセント練習を続けた

ロブも諦めずについてきた結果


「寿司?」 


「yes! yes! correct!!」(そう!そう!正解!!)


体感10分にも勝る練習の末

ロブはsushiを通り越して寿司と

完璧な寿司のアクセントを手に入れた。


僕らは笑顔でパチンっ!!と部屋に響き渡るくらい

強い握手をして、お互い抱き着いた


「congratulations!!」(おめでとう!!)


僕がそう言うとロブは無言で頷いた


男2人が抱き合うお昼下がり


次の日、僕は魚工場で働いた。


しかしその次の日は働くことができなかった


クビになったのだ。






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