初めてのアップルファクトリー

オリエンテーションを終えて説明をしてくれたリーダーを先頭に

僕ら初めまして組は初めて工場の中へ入っていく


実は工場での勤務は2回目の僕


前に1日だけ丸崎製パンの工場で勤務をしたことがある

その時に1つだけ思ったことがある


「もう2度と工場では働かん」


狭い、汚い、臭いの3密に

夜勤、休憩少ない、眠い、マジ卍で


7つ全部を繋げてできた魔の北斗七星が

夜勤の工場の天井に浮かび上がっていた


「もう絶対に2度と工場では働かん」


そんな誓いを立てた去年の僕を裏切って

今年の僕はまたこの密閉空間に来ちゃった


しかし


さすが海外の工場だからなのかな


かつて2度と働かないと誓ったあの工場よりも大きい


その言葉じゃ表せないほど


  大

大大大大大

  大     き い

大   大



天井は巨人さえ立ったまま入れるんじゃないかってくらい高いし

工場の全体的な広さも大海原のようにどああぁと広がっている


そして金属の機械の作業音にフォークリフトの注意音


僕がそれよりも気になったものは

蛍光色のオレンジ制服を着たワーカーたち

100人くらいいるのではないか


そのすべての作業員が蛍光色の服を着てるから

注意を引く蛍光色なのに注意を引きすぎて

「なんなんだこれは...」と僕自身が引いてしまった


蛍光色に頼らなくても引くことは出来た


僕ら初めまして組はリーダの後ろを歩きながら

少し工場内を見学し、見学を軽く終えると1つの作業場レーンに来た


そのレーンの上で流しそうめんのように大量のリンゴが流れている

このリンゴの果てはどこなんだろう


ここで今まで僕らを牽いていたリーダは

目の前にいる新しい人へ進行をバトンタッチして


その新しいニューリーダーが

「○▼※△☆▲※◎★...」とリンゴを持ちながら説明をしている


ん?


さっきの人は英語に聞こえたけどこのニューリーダーの英語は

ニューランゲージに聞こえるぞ?


「ここの上の人フィリピンから出稼ぎに来てる人ばっかだから

フィリンピンのアクセント強い人ばっかだよ」


しおりさんが横でそっと教えてくれた


なるほど、これはフィリピン人のアクセントか


そいや。フランス一家もフィリピン人だったなと

フィリピン人の家を出て、次はフィリピンの下で働く


つくづく、運命のいたずらは面白いものだなと僕は1人思った


フィリピンアクセントには慣れてると思っていた僕も

このニューリーダのアクセントは英語ではなくフィリピン語に聞こえるほど強い


英語を話せてもアクセントが強すぎたら会話をするのは難しいんだなと

ほんの少しずつ英語に慣れてきている僕は


次のステップとしてアクセントを視野に入れた方がいいのかな

なんてしおりさんの横で僕は思った


ジリリッリイ


工場内にアラームが鳴り響く


「お、お昼休憩だね」


しおりさんがそう言ってひょいと何かをしていた 

僕は何をしていたのか分からなかったけど


これからお昼に入れるのだけわかったから

しおりさんと一緒にみんなが歩いてる方へ向かう

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