滝修業

滝つぼに近づくにつれて深さが増していく


みぞおちくらいまで水に浸かりそろそろやばい


というところで僕は修業することができた


ギリギリ修業できる


と判断して僕はおててのしわとしわを合わせた


しかし、水音という名の轟音が耳を刺し


頭上はるか遠くから落ちてくるこの水量は


僕を沈めるのに長い時間を有さなかった


ぶぁ!!あぶぶぅぅ!!!


顔を出そうとしても滝から落ちてくる水水水が無駄無駄無駄と顔を出させてもらえない


マジで死ぬ!!!!


一度、滝つぼの半分より後ろまで避難して対策を練る


あの叩きつけ方は滝が僕を殺しにきてる。


ニュージに来てから感じた2回目の殺意

ヤンキーどもとはまた違う角度からの殺意


滝修行とは殺しにかかる自然に立ち向かう行為なのか


僕はかつて殺意に負けた。そして警察という半分チートを使った


また負けて、負けたままでなんて終われない。


僕は仁王立ちで、パンイチで滝に向かって言った


必ず、必ず、お前に滝修行をつけてもらうと!!


滝から聞こえてくるのはゴォーという轟音だけ


後ろから聞こえてくるのは相変わらず


「look him! he is almost naked 」だけ

(彼を見て! ほぼ裸じゃん!」


さてどうしたもんか、なんて考えていると僕は


ここで4つ目の閃きをした


滝の横っちょなら滝つぼは浅い


気づいた理由は簡単明白で


水の色の濃さの違い、水の色が薄いとこより濃い方が深い


ただそれだけ


でもこれならテレビで見るような修業を出来るかもしれない


第2の戦場(横っちょ)へいざ行かん!


バザァン バサンと僕の前にたち広がる水をかき分けた


そして僕の予想通り横っちょは中心部に比べて浅かった。


さっきはみぞおち位まで漬かったけど今は太ももくらい


これはいける。


僕は両手で合唱をして修行を始めた

人生で初めての滝修行は想像と全く違った


まず滝の音だけで形成される轟音


日常耳にするのは誰かの足音やテレビ、車の音などのたくさんの小さな音


それが雑な音と呼ばれているけど、ここから聞こえるのは滝の音のみ


耳から1つの音しか聞こえてこない


数十秒が過ぎて呼吸が苦しくなり耐えきれず滝から離脱する


足りなくなった息を吸ってまた吐いて、人生で初めてできた滝修業の

まだ残っている滝に打たれた余韻を全身で感じていた


顔にかかった水を手で払い、薄めで開けた瞳の奥、向こう側で他の観光客の姿が見える


大きく手を振る者、笑う者、同じく服を脱ごうとして母親に叩かれてる者


僕は手を振ってくれた者に同じく手を振り返しながら

バザァン バサンと僕の歩みを阻むものをかき分けながら陸地へ向かった


手を振りながら僕は思った


修業をしたという功績を讃えてもらうために人は修業をするのだなと


少ししてフランスのいるとこまで帰ってきた


時間としては10分も経ってないけど久々にフランスと会った気がする


「long time no see」(ひさしぶり)という僕のセリフに

「Shot time no see」(ひさしぶり)と返された。


少しの沈黙の後、フランスはもう一度口をひらく


「かわいいblondのヒトいてたよ」


「ん?何を」


「カレはswimwear(水着)じゃなくてunderwear(下着)だって」


なんと...


金髪美女に海パンではなく下着と認識されて僕のパンツを見られてしまった

女性は気づかないと思ってたのに海外の女性は甘くなかった


「あとワラってたよ」とフランスは丁寧に教えてくれた。


それを聞いて僕は思った


金髪美女に笑ってもらうために人は修業をするのだなと


僕は金髪美女の笑顔のため、いつかまたパンイチで滝修業することを決めた

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