初めてのトライアル

ドリ場の仕事はお酒やジュースのドリンク提供と


帰ってきたコップを洗うのが主な仕事


ソフトドリンクはドリンクバーで見るような機械のボタンを押すだけだから楽だけど


お酒の作り方や分量はお店によって変わるから難しい


そして今日僕に指導してくれるのは21歳の


大学4年生になる前に休学しワーホリに来たパイセン


「今日トライアルする子?よろしくお願いします。

俺より若く見えるけど何歳..?」


驚きに好奇心を乗せた顔で質問をしてきた


「いま19歳っす!大学1年だけ通って休学しちゃいました」


「はっや!19の時とかひたすら酒ばっか飲んでたんだけど」


ドリ場のパイセンはそういう


「僕も廃墟に住んでた時死ぬほど飲んでたんで同じですよ」といった


「は?廃墟?」そのあと続けて「その冗談全然面白くないよ」と言われた


全然冗談じゃなくて本当なんだけどな


仕事を教えてもらいながらいろんな人から挨拶を受ける


この30分と短い時間で10人近くの人とあいさつをして

その半分以上は日本人だった


働くことにおいては何も苦労しなさそうだなと


でも日本語の環境にどっぷりつかるのは嫌だけどお金がないのはもっと嫌だ


better than nothing(無いよりはマシ)


ワーホリの仕事においてはこの言葉より心に刺さるものはないだろう


仕事を教えながらパイセンは暇を持て余してるホールの女の人と雑談をしている


「ワーホリしてて一番つらかったとかやばかったことってある?」


僕はヤンキー10人に囲まれて割れビン突き付けられたことかなぁって


2人逮捕されて事情聴取されてって


あれ、あれからまだ1か月経ってない...?


その事実にコップをゴシゴシ洗いながら驚いた


「わたしはねー。外人の男に言い寄られて...へへへへー」


「え、うらやましいぞ!俺言い寄られたことないんだけど

言い寄られて何?」


ドリ場のパイセンが言う


「色々すごかったことかな。へへへh」


「えーずりぃー!!」とパイセンは反応する


なにがずるいのかよくわかんないけど


僕はコップについた洗剤を洗い流しながら

その彼女が言った言葉もパイセンのずりぃーも排水溝へ流した


「俺が1番やばかったことはあれだな。パスポート落としたこと!」


「あぁー言ってたね!見つかってよかったよね!

見つかんなくてもし悪用とかされてたらこわかったね」


他の人も僕みたいなドラマが起きているのかと思っていたが

割とそうでもなくて普通の人生を送れているのか?


ふつうに羨ましいと思いながら

コップを片付ける場所が分からず話してる2人に質問をした


「奥の棚の上だよー」と教えてもらい


僕は奇麗になったコップを元の場所へ戻して持ち場に戻った


「君は?なんかやばかったこととかあった?まだ2.3か月だったらないかな」


ホールの女の人に質問を振られる


「僕はヤンキーに絡まれた事ですかね。本当に死ぬかと思いました」


「え、ヤンキー?どこで?」


「Putaruru(プタルル)っす」


「ホビットの近くか!聞いたことあるくらいだけどそんな治安悪いんだねー」


ホールの女性はそういうが


「オークランドはまだしもそんな田舎で絡まれるわけねぇーじゃん

廃墟に住んでたとかわっけわかんねぇこと言ってるし」


パイセンには僕のこれまで起きたことを信じてもらえてないみたいだ


確かに僕のワーホリ人生はにわか信じがたいことの連続だ


まぁ、誤解されても仕方ない。


深くない仲の人に自分を理解してもらう努力はしなくていいなと

その人が攻撃的だったらなおのこと


2時間が経つか経たないかのとこで店長がドリ場にきた


「よーし今日はもういいよ。仕事はどうだった?」


「ドリンク作るのは初めてだったんですけど楽しかったっす!」


「ならよかった結果は3日後にメールか電話で送るね。

制服は更衣室にある制服たくさんある棚に置いといて。」


「わかりました!ありがとうございました!」


これで僕の初めてのトライアルは終わった

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