初めての通訳

普通の家に住むことを一旦諦めた僕は、自分のベットの近くで荷物の開墾を始めた


そういっても少ない荷物


カバンから出すのは洗面道具が入ったケースにシャンプーやボディーソープのビニール袋くらい


着替えは基本キャリーケースの中に入れっぱだからこんなもんだ。


開墾を終えてベットの上でケータイをいじっているとガタイのいい男が来た。どっかで見たことのある顔


求人広告で見た、ボスのマイクだ


「how’s going? Are you new here?」(元気?新しく来た人?)


マイクが僕に尋ねる


「yes nice to meet you」(はい! はじめまして)


「nice to meet you too」(こちらこそよろしく)


そう言ってマイクは右手を前に出し、僕もそれにこたえ握手をした。


強い握手、小学生の頃に聞いた修道士と同じくらい強い、万力のように強い握手だった。


 「you have to write contract for job that's why can you go to the office?」

(仕事するために契約書書かなきゃ行けないからオフィスいける?)


やっべ、なんも分かんない。


kiwiの英語訛りもあり余計何言ってるか分からなくさせる


「仕事するために契約書書かなきゃ行けないからオフィスいける?」


日本語が聞こえた! そしてこの声は...


ジョナサン!


「今のマイクの言ってたことですか?」


「そうだよ」


ジョナサン通訳をしてくれたのだ


「このまま通訳してあげようか?」


「ありがとうです。ジョナサン ジョナサンさん...!」


素直に感謝の気持ちをジョナサンに伝える


「お願いします!愛してます!」


感謝のあまり愛してしまった。


愛するとはこういうことなのだろうと思った


気づけば...


あの時の僕は、きっと正確には、きちんとは愛せてなかったのだろう


あの子と一緒にいたときは、あの子を、いや、君を愛していたと思っていた、でも高校生の僕に君はよく言う


あなたは私じゃなくて、ここじゃなくてどっか見てるって


僕にはその言葉の意味はよくわからない。


君のことを好きと心の底から言えるし、君と帰る駅までのあの道を楽しみに1日を過ごしてたあの日々


その時に付き合ってた彼女のことを思い出し、今もまだ付き合えてたらどんな未来になっていたのだろうと想像した


想像したが


高校生の時に付き合ってた人なんていなく


そんな青春の1ページを妄想をしていた。


「おい、おいおいい」


遠くから声がする


「今から契約書書くってよ」


誰かが何かを言っている


「ほら、早く行って早く終わらせよ」


グイっっと引っ張られた


ジョナサンに現実に引っ張り戻された


どうやら僕は悲しい夢を見てたみたいだ


彼女が1人も出来なかった高校生活を送った男の悲しい夢を...


その夢の主人公はジョナサンと車に乗ってオフィスまで送ってもらう


僕らはバン(車)に乗った

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