はじめてのガレージ

「とりあえず、君が使えるベット案内するよ」とあの4角形のゴツゴツした建物の中に案内された。


なんだ、この人狼(ブラジル人)割といいやつじゃん。


そう思いながら玄関(仮)に脱いだ靴を揃えて、建物の中に入る。


目の前に小さなキッチン?が見える

右手に見える扉は閉められていて何があるかわからない


左手には3段くらいの階段があり、少し降りたところにいくつかベットがある


「ここに水とガス通ってないから料理できないけど

ケトロ使えるからカップラーメンなら作れるよ」


「それで誰かのものが沢山置いているんですね」


キッチン(仮)には服だったり、シーツだったり、キャリーケースだって置いてあるのだ


「そういうことよ」


そうブラジル人(人狼)は言う


僕はカップラーメンのくだりを無視したのだが

このブラジル人狼は気にしていない。


気にしているのは自分だけで少し悔しい


段差を降りてみるとこの部屋を真っ二つに切った所くらいに薄い壁がある。


「ここから右側が男子のベット、左側が女子のベットね」


「壁半分しか無いじゃないすか」


壁にしては薄いし、半分しか無いし中途半端なのだ


半分しかない理由をブラジル人は話す


「全部を壁で仕切ったら女の子、外に出れなくなるじゃん」


この小さな階段は男子のベット側にある


いや、でも、「扉を付ければ良く無い?」


「誰が付けれるの?」


たしかに、誰が付けれるのだろうか。


「誰も出来ないっしょ?だからこうなった」


続けて言う


「でも女子領には一応出入り口があるけどね」


え、でも女子領に出入り口は見当たらない。


「あのゴツゴツしたシルバーのとこ、近く行って見てみな。重くてかなり力を込めないと開かないけど」


女子領、男子寮は行き来が自由だった...


本当に何故、半壁を作ったのか...


ほんとうにツッコミがとまらない。


近づく途中で気づく


一応あった出入り口は外からも見ることができた、あのゴツゴツしたやつだ


そして、ゴツゴツした近くに近づいた


まて...


僕はこれをよく知っている。


日本でもよく見たものだったのだ


ゴツゴツしたシルバーのは上下に開閉するスタイル...


この四角い建物の形...


車を保管したり、止めたりする場所...


...


これはガレージだ


みんなも知っているあのガレージだ。


ガレージの中にカーペットを引いて、ベットとキッチン(仮)を置いて


なんとか人が住める(一応)ようにしただけだった...


廃墟の次はガレージ


僕は一体、いつになったら普通の家に住めるのか


日本にいたらきっと生まれないであろう悩みが生まれた


その横でブラジル人は言う。


「そういえば俺、ジョナサンって言うから

ジョナサンでもジョナサンさんでも好きな風に呼んでね」


うん、分かった


分かったからとりあえず今は黙って


長い夜はまだまだ続く

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