縫い合わせ

「…何でここに来たんだよ…」

叶都と美裂は、官能小説に出てきそうなホテルの前にいた。

「なあ、さっきまで普通にデートっぽいことしてた筈なのによぉ…」

そう。本当に『さっきまで』は普通に過ごしていたのだ。

「それが何で薄い本より薄い展開になりかけてんだよ。」

『…特に理由はない。』

丸文字で書けそうな、アニメキャラっぽい声(ただしすっごい小声…滅茶苦茶注意しないと聞こえなさそうな声)がして、美裂を見ると、美裂の口が動いていた。

「声可愛っ」

「…!!」

素直に褒めると、美裂は顔を赤らめ、

『そんな事…ない…』

と言った。

「いや結構可愛いよ。」

『っっ…』

結局ホテルには入らなかった。

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