入学式

あぁ〜なぁ〜た〜ぁに

会いたくて〜ぇ

会いたくて〜ぇ



Ipodから流れる音楽を聴きながら、携帯電話でメールを打ち込んでいた。

莉奈から朝のおはようメールが届いていたので、返信をしていた。


「おはよう♡今日から入学式やね( ^∀^)友達できるかな((´・ω・`)?」

「おはよう。莉奈はすぐに友達できるで」

「ほんまに?明里や紗江も同じ高校やったからよかったわ♪( ´▽`)」

「俺は誰も中学の友達おらんから一からやわ」

「ほんまやね(T . T)かみじゅんこそすぐに友達できるでっしょ(^∇^)かっこいいんやから☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆」

「とりあえず席の近くの友達と仲良くなってみるわ!」




朝から元気なメールが1分以内に届いてきた。

普段はテレビ見たり、漫画見たり、ゲームしたりするから、そんなに早く返信をしていないが、

莉奈は、いつも返信が早かった。

私とメールする以外何してんだろうって思っている。



JR京都線の電車の中は、会社員や学生でいっぱいで、正直窮屈すぎる。

京都駅から乗るわけではなかったので、新快速のような押しに押されながら、電車に乗ることはないと思っていだが、

朝のラッシュ時間は、どの電車に乗ろうが、人の混み具合は変わらなかった。

入学式ということで、両親も一緒に乗っていたが、

夏なのかと思わせるぐらい汗だくになっていた。

朝の電車の中はこんなに臭うのかっと思った。




私の自宅から最寄り駅の長岡京駅までは自転車で10分ほどかかる。

家の近くには、長岡公園という大きな公園があり、スポーツ設備も整っている。

公園内に長岡天満宮があり、そこにはいろんな種類の梅の木が植えられていて、

京都と言えば、桜ではあるが、梅の木も捨てたものではないほど、いい香りと華やかな彩りを楽しめる。

梅の香りが好きで、私の好きな場所だ。



高校は、大阪府高槻市にある私立高校に入学した。

中学2年生の頃、進路をどうするのか、先生と相談することがあった。

おそらくみんな経験したことがあるだろう。

私は大阪の高校に行きたいと思い、家からさほど遠くない電車通学が楽な高校はどこかなと

調べていたら、最寄りのJRで通える学校があった。


ただ偏差値が尋常じゃないほど高かったが、大学までエスカレーターでいける魅力があったので、

中学2年生の秋頃から塾に通うことにした。

個人で営んでいる塾で、非常にユーモアがあり、フランクな塾の先生だったので、

嫌いな勉強も楽しくすることができ、なんとか合格することができた。




電車に揺られること10分、JR高槻駅に到着した。

たった10分、されど10分。

朝の電車にこれから毎日のように乗車しないといけないと考えると億劫になってきた。




私は、均等に感覚を開けて、植えられている『さくら』を眺めながら、

周りの生徒を見ていた。

この中に今日から一緒に勉強する仲間がいるのかと思い、

小学校の友達もいるかもしれないと期待しながら、入学式の会場に向かっていった。



学校の正門近くまで行くと、

後ろから声をかけられた。



「じゅん。じゅんやんか!」




身長は180cmほどの長身で、堅いがよく、眉毛が太く、丸みのある顔立ち。

太い声で、中学生上がりとは思えないほど威圧感のある男性が私の方に近づいてくる。


誰だこの人と思いながら、見たことある顔に驚いた。


小学生の頃は、私より身長が小さく、丸坊主で、鼻から鼻水をよく垂らしてるようなお調子者。

いつも自分で面白いこと言ったあと、自分で笑う陽気な男の子。



幼稚園の頃から、いつも遊んでいたノリだった。




「ノリ。ノリか!めっちゃ見た目変わったな。てか同じ高校なんかよ。」

「じゅん見つけて、俺もビビったで!まさか一緒の高校やとはな!オカンも驚くで!」

「ノリの両親は来てるの?」

「来てるで!なんか駅前のコンビニ寄ってるわ!あっ、お母さんお久しぶりです。」



ノリは私の両親に頭を下げて挨拶した。

まさか一緒の高校に通うとは思わなかった。

その前にノリが勉強できることに驚いた。

小学校の時、ノリはいつも宿題をしてこないほど、勉強が大っ嫌いな男の子だった。

テストになるといつも赤点ばかりで、何回も先生に呼び出されて、再テストをさせられていたような男の子だ



「そういえばじゅん。しーちゃんもこの学校やで。」

「まじでか。そんな話、オカンからも聞いてないで。」



私の母親は、引っ越してからもしーちゃんと仲良しであったから、

年に数回、遊びに行っていたほど交友関係は続いていた。

母親は肝心なことをいつも聞かない人だ。

おそらくしーちゃんが同じ高校であることを知らないと思う。

あとでしーちゃんの母親とあった時の母親の反応が想像できた。



知っている人は誰もいないと思っていたが、

これからの高校生活が楽しくなってきた。




私はしーちゃんはどこにいるのかなと周りを見渡しながら、入学式の会場である体育館に入っていった。



1学年の生徒数は、約120名。

120名のうち、約7割方が学校の中等部の頃からエスカレーターで上がることができる。

つまり、高校から入学する人は完全にアウェーということだ。



周りの同級生は、顔見知りが多いのか、楽しそうに話ていて、私やノリは取り残された印象だ。

指定された席の近くで、聞いたことのある女性の声が聞こえてきた。



「もしかしてじゅんちゃん?じゅんちゃんよね??」

「しーちゃん?しーちゃんか!」

「じゅんちゃん、久しぶり!まさかじゅんちゃんに会えるなんて!ノリとはもう会った?」

「ノリには会ったよ!ノリにしーちゃんのこと聞いてたから、声聞いてすぐにわかったよ。てか見た目がもうゲームオタクじゃないな。」

「久々に会ってそれ!信じられない!私も立派な女性へと成長してるのよ!」



身長は160cmぐらいだろうか、髪の毛は昔と同じように短髪だが、少し茶色に髪の毛を染めて、

ナチュラルな化粧を施し、細身だが顔は少しふっくらとして、メガネをしている。

優しい、可愛らしい顔立ちだった。



「それにしても女の子にしては身長伸びたな。化粧までしてそんなに女子って感じじゃなかったやろ。」

「なにゆうてんの?私も化粧ぐらいします。これでも意外とモテるんやからね。」

「うそやん。あのゲームオタクちゃんがまさか自らモテると公言するとは。」

「そんな言い方せんといて。印象悪いやろ。じゅんちゃんがそんな意地悪なこというなんて。わたしかなしいわぁ〜」



しーちゃんに4年半ぶりに背中を叩かれた。

昔と変わらないしーちゃんの接し方に、とても安堵した。

モテるかどうかは、わたしにはわからなかったが、メガネがなかったら、モテるのかなと思ったが、

身体も見た目も確かに変わったが、雰囲気が変わらないので、いつも通りのしーちゃんにしか見えなかった。

ノリもしーちゃんも変わらない性格にわたしは嬉しかった。




校長先生の長い挨拶を、右から左に受け流しながら、

半分寝そうになっていた頃に入学式が終わり、

自分のクラスへと向かった。



自分のクラスには、ノリと一緒のクラスになり、しーちゃんは隣のクラスになった。

どうやら名前の順で席が決まっていたので、私は入り口の近くになってしまった。

正直窓側の席がよかった。

授業が退屈になったら、外を眺めながら、自分の世界に入れるからだ。

学校生活初日からもう席替えしてほしいと思った。



ノリとは席が離れてしまったので、周りには知らない人ばかりだった。




後ろの席の男性から声を掛けられた。


「初めまして、菊池将吾って言います。」

「初めまして、神山純一です。よろしく。」


軽く挨拶した。正直イケメンだった。

身長は175cmほどだったが、髪の毛は黒髮で、ワックスがかかり、少しウェーブをかけているミディアムヘアだ。

顔は面長で、肌が白く、ジャニーズJr系というよりもジュノンボーイ系の爽やかイケメンだ。




担任先生からの挨拶やこれからの授業スケジュールの説明が終わり、

クラス全員の自己紹介を行った。


ノリは相変わらず、おふざけな挨拶をかまし、みんなを笑いに持っていっていた。

さすがだと思った。

私にはそのような能力を持っていなかったので、羨ましく思った。



全ての行事が終わり、両親に友達と帰ると伝え、先に帰ってもらった。

明日からの学校生活を少しでも良くするため、第一印象でよかった菊池将吾とノリとで一緒に帰ることにした。

帰り道にあだ名で言い合うことに決め、菊池将吾のことを、ショウゴと呼ぶことにした。



「ショウゴはどこ出身なん?」

「おれは大阪の吹田に住んでる。」

「吹田か。学校も近いな。おれは京都の長岡京ってところに住んでる。」

「おれは大阪市の住之江区ってところに住んでるねん。じゅんとは幼稚園からの友達やわ」

「まじで。じゃあ〜小中高も一緒とか幼馴染やな。」

「中学はちゃうねん。おれ中学の時引っ越したから。ノリとは4年ぶりに今日あった。」

「まじで!それすごいな!」

「あとじゅんだけじゃなくて、しーちゃんっていう隣のクラスの女の子も一緒やで!」

「結構、同中の友達多いな!おれは中学からエスカレーターやから、半分以上友達やな。」

「また中学の友達も紹介してな!」

「わかった。ノリみたいに面白いやつ多いから紹介するわ」

「おれそんな面白かったか。よっしゃ!つかみ成功!」

「ノリは昔からおもろいからな!」

「じゅんは昔からええやつやからな。結構物静かなところあるけど、話たら真面目な奴やで。」

「そうなんや。てかじゅんはめっちゃ目が綺麗で、イケメンよな。」

「そんなことないよ。ショウゴの方がイケメンやん。まじ雑誌とか載ってそう。」

「いちお読者モデルしてるから、雑誌にはたまにのるよ。」

「まじで!かっこええな!ショウゴは、彼女いそうやな。それか遊びまわってるか?」

「嫌な言い方するな。遊びまわってないよ。それに彼女おるし。」

「まじで!どこの子。どこの子。」

「学校におるよ。同じ学年やから同級生。」

「同じ学校か。今度見せてや。」

「わかった。月島って子やから明日教えるな!」


この日、ショウゴとは幼い頃からの友達のように、すぐに打ち解けることができた。

3人で面白い話をしながら、駅のホームに向かい、二人とは方角が違うので、別々に別れた。

向こうの方が先に電車が着いたので、二人に軽く手を降った。



電車が来るまで、待合室に入った。

空調機の独特な匂いが漂いながら、ミント風味のフリスクを口の中に入れて、匂いをかき消そうとした。

携帯電話を開くと、莉奈からメールが届いていた。



「学校どうだった( ´ ▽ ` ?)友達できた??私は、もう新しい友達できたよ(^_−)−☆」



見た瞬間でわかるほど元気なメールが届いていた。

莉奈のことだから問題ないと思っていたから、特に気にしていなかった。

莉奈で地元の駅で会おうと約束のメールを打ち込んでいた時、

向かいのホームに一人で立っている女の子がいる。

その子は、携帯電話に目を向けて、おそらくメールを打っているのだろう。

身長は160cmもないほどで、どこまでも吸い込まれそうな長髪で黒髪をしていて、

肌は白く、小顔の女の子だった。私と同じ高校の格好だったが、同じ学年かどうかはわからない。

足がモデルのようにスラッとしていて、なんと綺麗な人なんだと思った。




私はあの雰囲気を見て、昔のことを思い出してしまった。

夕方の太陽で煌めく長髪の黒髮と、いつ見ても似合っているワンピースを着て、

笑顔で私の方を、深く見つめてくれる女の子を思い出していた。




あの子は今どうしているのだろうか。

元気に生きてるのかな。

母親とはうまく生活できているのかな。

封印していた思い出が、向かいのホームにいる女の子を見ながら思い出してしまった。




『あの子、似てるな。』



『まさかな。』



顔がはっきり見えなかったが、確かに似ていたのだ。




咲良に。。。

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