アンノーン・レディースハーツ
手紙は朝の登校の時に渡した。
私は、手を肩におき、照れながら、
「しゃべらなくてごめん。さくらのおかげで元気でたよ。」
と伝えた。
さくらは、
「よかった。じゅんくんは元気じゃないとね。」
と笑顔で返してくれた。
家から学校までは約20分程度。
短い時間だけど、
今までで一番楽しい登下校の時間を過ごしていた。
今日は、しーちゃんの家にお邪魔になった。
私だけでなく、母親にも友達がいる。
その一人はもちろんしーちゃんの母親だった。
久々にしーちゃんの部屋に行った。
部屋に入ったのは、2年ぶりくらいだろうか。
いつもしーちゃんの家族とご飯を食べるときは、私の家が多くて、
たまに母親がしーちゃんの家に遊びに行くときに、他の友達と約束がなければ、ついていくだけだった。
部屋は以前と違い模様替えされていて、
ベッドはピンク色のディスニーのキャラクターで描かれたベッドカバーで可愛らしく飾られていた。
机は昔のままで、木でできた学習机だったが、ポケモンのシールや、セーラームーンのシール、たまごっちのシールなどいろんなところに貼られていた。
机の隣は高さが150cmぐらいの本棚になっていて、少女漫画から少年漫画までびっしりと置かれている。
小学生らしい部屋だ。
唯一違和感を感じるのが、本棚の横にテレビとゲーム機が置かれている。
てかゲーム機が確実に増えていた。
本当に生粋のゲーマーなのだろう。
ご飯ができるまで、プレイステーションのゲームにダンスダンスレボリューションで遊んだ。
ゲームセンターにあるゲームで、家庭でもできるように発売された。
コントローラーで操るのではなく、専用のマットがあり、画面に出てきたマークと一緒のボタンを足で踏んでいくゲームだ。
音楽に合わせて、いろんなボタンが次々と出てくるのはいいが、私は反応が遅くて、最後までいかず、いつも終わってします。
それに比べて、しーちゃんはすごい速さの音楽とボタン表示を軽やかなステップで捌いていく。
なんでSランクが取れるのか不思議だ。
ゲームセンターでもやっているんだろうなっと心の中で思った。
その姿を想像して、笑けてきた。
「なに笑ってんのよ!」
しーちゃんは少し怒り気味で、私の肩を叩いた。
大阪のおばちゃんやな。
これは流石に口には出さなかった。
踊りすぎて疲れたから、休憩した。
しーちゃんは私の方を見て、何か言いたげそうだった。
「しーちゃんどないしたん。」
「じゅんちゃんはさくらとどういう関係?」
なんか怒っているのか、拗ねてるのか、わかりにくい表情で私に問い詰めてきた。
「え!なんでそんなこときくん。」
「だってずっと朝一緒に登校するやん。小学校2年生の時からやし、家が近いからわかるよ。でも林間学校が終わったあたりから、最近さくらの方ばかり見てるし、
さくらもじゅんちゃんの話になると、前のめりになって、話聞いてくるし、あんたたち付き合ってるの??」
えらい直球で聞いてきた。
しーちゃんにはさくらのことを話すつまりは全くなかった。
さくらの仲の良い友達にも、今後のさくらのことを頼もうかと思ったけど、
ノリがうまく女子から聞き出して、助けてくれるだろうと思ったから、
女子には相談するのをやめていた。
「さくらと付き合ってるというか、友達以上というか、昔から仲が良い友達だからな〜。」
「はぐらかさないでよ。誰がどう見ても付き合ってるようにしか感じないんだけど。」
『完全に問い詰められているな、これ。』
ここまで聞かれたら、正直に話さないといけないけど、本当はさくらが話した方が良いような気がする。
どうしようかと思ったけど、嘘はよくなかったので、言葉を選んで、話をすることにした。
「うぅ〜っと。ぼくはさくらのことが好きになっちゃって、さくらに聞いたら、さくらもぼくのことが好きだったみたいで。
気持ちを伝えあっただけで、何か変わったかと言えば、今まで通り、朝一緒に学校行ったりとかは一緒やし、変わってないよ。」
「なにそれ。好き同士なら付き合ってると変わんないじゃん。」
「まぁ〜そうかもしれないけど、より仲良くなれたみたいな。」
「なにその中途半端な言い方。なんかムカつく。さくらがかわいそう。」
「なんだよかわいそうって。なんでしーちゃんにそんなこと言われないといけないんだ。」
「だって。。。」
しーちゃんは、下を向いて、今にも泣きそうになっていた。
いきなり怒り出して、いきなり泣き出しそうになったから、
わけがわからなかった。
本当に女子の考えることはよくわからない。
当時の私はしーちゃんの気持ちを全く分かっていなかった。
しーちゃんとは少し気まずくなった。
夜ご飯を食べている時も、私にそっけない態度を取る。
昔ながらの仲だから、あまり気にしていなかったが、泣きそうになっていたことが気になり、
帰り際に、「しーちゃん、なんかごめん」と伝えた。
「いいよ。もう。」とだけ伝えて、しーちゃんは私と目を合わさなかったが、次の日は昨日のことがなかったかのように、笑顔で接してきた。
『昨日はなんだったんだ』と思いながら、さくらには、どこまでしーちゃんに話したのか、ちゃんと伝えておこうと思い、登校の時に話した。
さくらは、「少しは私たちのことを話しておいた方がよかったのかな」と反省していたが、「そこまで気にすることはない」と伝え、
「今まで通りしーちゃんと接したらいいよ」と答えた。
しーちゃんとは、いざこざがあったが、私は水曜日、木曜日と他の友達と遊び、多くの思い出を作った。
大人になって、小学生の頃を思い返すと、あまり多くを思い出すことができない。
年齢を重ねるごとに、小学生時代の思い出は厳選されていく気がする。
けど最後まで残った思い出が、一生の思い出として、死ぬまで保管されるのだと思う。
良い思い出も、悪い思い出も。
あいつは元気にしているのか。
こう思えるだけで、その人は幸せな人生をあるんできた証だと私は思う。
金曜日。
さくらとの思い出を作ることにした。
これからも一生残る大切な思い出を作りに。
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