林間学校
複雑骨折は治るのに時間がかかる。
2週間で退院できたけど、完治するまでは、半年はかかるそうだ!
その間、スポーツは一切できなかったけど、足の怪我だったので、好きなゲームはできた。
当時はニンテンドー64が全盛期だったので、友達の家に遊びに行ったことを覚えている。
俺は泣き虫だ!
ゲームをしている時も負け続けるとよく泣いていた。年齢を重ねてもすぐに直ることはなかった。
泣かなくなったなと思うようになったのは、確か中学生になったころだったと思う。
おそらく中学に入り、新しい友達ができたからだろうか、初対面の相手が多くて、必然とすぐに泣くということが無くなった。
この時自分も大人になったなと思えた。
ゲームはいつもマリオカート64というレースゲームとゴールデンアイというFPSゲームをして楽しんでいたが、ゲームセンスがないのか、すぐ負けたり、倒されたりする。
やはり子供だからだろうか、友達からよく負けた後にいじられた。
いじられすぎて、よく泣いてしまい、友達の母親が友達を叱る場面をよくみた光景だ。
友達の家に行くにも松葉杖を使って移動するから本当に大変で、周りの友達の助けがないと、まともに学校生活ができないことを知った。
階段を登る時も友達の肩を使わないと登れないし、靴を脱ぐ時も周りに支える物がないとまともに脱げないから、周りのみんなに助けてもらえた。
友達が本当に大切なんだとこの時、心の底から思えた。
登下校の時もそうだった。
さくらは私の怪我が治るまで、私の家まで迎えにきてくれて、帰りも私の家まできてくれた。
このころになると、さくらも当初の物静かな弱々しい雰囲気ではなく、おっとりした雰囲気は残したまま、アクティブさが少し出て、自信を持った印象に変わっていた。
ここ3年近くで私生活に慣れてきたのだろうか。
さくらは自ら私の家まで行くと行ってくれて、家の近くの階段や、カバンを持ってくれたりとか、本当に優しくしてくれた。
さくらも初めて出会ったころから、長髪の綺麗な髪質の上品な女の子だった。髪の毛が顔に隠れて、見えなくなることもあったが、年を重ねるごとに少し大人っぽくなってきて、小顔で綺麗な顔立ちになってきた。
大阪で雪が降る2月の終わり頃、いつも通りさくらが私の家に来た。
ピーンポーン
私の母親「さくらちゃん、おはよう!ジューン!!さくらちゃん来たよー!」
私「待ってぇやぁ!今準備中やねん!」
私の母親「早くしなさい!外も寒いんやし、さくらちゃん待たせたらあかんで!」
私「わかってるよ!じゃあ、行ってきまーす!」
私の母親「行ってらっしゃーい!外雪降ってるんやから気をつけていきや!」
さくらは少しニコッと笑いながら、私と母親の早朝漫才をみて楽しんでいた。
さくら「朝から楽しそうね!」
私「楽しくねぇ!うちのオカンほんま喋りたがりややからずっと喋ってんで!うるさくてしゃーないわ!」
さくら「ほんとに!うらやましいね・・・」
さくらのその言葉を聞いた時、やってしまったと思った。
さくらの家庭の秘密を考えたら、家族の話をしないほうがよかったと後悔した。
私「それにしても松葉杖しながらじゃ歩きづらいな!滑ってまた怪我したら最悪やわ!」
さくら「ほんとだね!雪が積もってるところは私がじゅんくんの肩持って歩こうが?」
私「そんなん恥ずかしいって!」
さくら「そんなこと言って怪我したら大変でしょ!ほら、肩貸して!」
さくらの横顔が可愛くて、綺麗だと思った。
私はさくらにつらい思いや悲しい思いをしてもらいたくないと思って、登下校を一緒にし、手紙をやろうと提案して、私が率先してさくらと接してきたが、
今はさくらに助けられながら、学校に向かっている。
私の心臓あたりがすごく熱くなった気がする。雪が降る冬なのに、風邪でも引いたのかと思うほど、熱くてイタさを感じた。
そんなさくらに対して特別な想いを持ち始めたのが、5年生のなりたてのころだった。
私は小学5年生となり、いわゆる高学年となっていた。
クラス替えで、私とノリ、しーちゃん、そしてさくらが一緒のクラスになった。
ノリ「おはよう!!今日も仲良さそうじゃねぇか!」
私「おはよう!登下校が一緒なんやから仲良いに決まってるやん」
ノリ「仲良いだけなんか?」
私「何がいいてんだよ!」
ノリはニタニタしながらカエルのような低い姿勢で俺のところに近づいてきた。
さくらは無表情である。
しーちゃん「さくらちゃん、おはよう。一緒のクラスになれてよかったね!」
さくら「しーちゃん、おはよう。これで卒業までずっと一緒に入れるね!」
この二人はずっと仲がいい。しーちゃんとは、今もよく遊んでいるそうで、よくしーちゃんの家に行くそうだ。
もちろんさくらの家に遊びに行ったことはまだない。
手紙で色々相談されたけど、お母さんが家に人を入れたくないと言って、ごまかしている。
よく遊ぶ友達だからだろうか、しーちゃんの母親も、さくらの母親に会いたいと言ってきたそうだ。
さくらはとても困っていて、お母さんは仕事でずっと忙しいのってことで、また誤魔化した。
さくらはよく真実を伝えたいという気持ちが滲み出る手紙をよく書いていて、十分友達としてよく遊んでいるから、
しーちゃんにも真実を伝えたらと手紙に書いたら、しーちゃんを困らせたくないと言って、まだ真実を伝えれていない。
友達期間が長くなったのも要因なのかもしれない。
仲がよくなればなるほど、伝えれないことも多くなってくる。
当時、私にはそのような経験がないからわからなかったが、さくらにとっては、言葉でも伝えづらいもどかしさがあったのだろうか。
しかし、さくらの家族の秘密を知る時は突然に来るものなんだ。
5年生の夏頃か、林間学校があった。
場所は兵庫県のハチ高原と呼ばれるキャンプ場や宿泊施設で、一泊二日の旅行だ!
いちお勉強の一貫だが、子供であった私からしたら、遊びみたいなものだったし、友達同士で初めてのお泊まりだからテンションが上がるのは当たり前だ。
ただハチ高原まで行くまでが大変だった。
車酔いだ。
薬を飲めばマシだったのだが、薬を忘れてしまって、3時間ほどバスに揺れながら気持ち悪い時間を延々と続いていた。
私「はぁー。気持ち悪い。」
さくら「だいじょうぶ。水あるから飲んで。」
たまたま私の席の隣にはさくらが座っていた。
さくらは優しく背中をさすってくれて、自分の買っていたペットボトルの水を飲ましくれた。
う?間接キスか?
これは友達にいじられるパターンやないか!?
とふと思ったが、気持ち悪すぎてそれどころではなかった。
さくらの厚意に甘えて、水をもらい、ハチ高原に着くまでずっとさすってくれた。
さくらは本当に優しい女の子なんだと改めて思ったと同時に、安心している自分に気づいた。
当たり前のように登下校をし、手紙のやりとりをしているさくらに対して、こんなに心が落ち着くのかと初めて思った。
子供ながら、さくらが入れば、安心して毎日を過ごせると感じた瞬間だった。
ハチ高原について、車酔いも取れてきた頃、早速山登りという過酷な試練が待ち受けていた。
複雑骨折が治り、まもないのもあるが、300mほど登山した頃にはもう足が上がらないほど、
足が重くなっていた。
ノリに助けてもらいながら、なんとか登頂できたのを覚えている。
登頂するまでしんどかったけど、降りる時がこんなに楽なんだったら、登る必要ないじゃないかと思う。
今回だけでなく、毎回山登るたびに感じる。
その日の夜、みんなでキャンプファイヤーを行った。
林間学校じゃよくあるイベントだ。
キャンプファイヤーの炎を暗闇の中で煌々と光っていた。
パチパチと静かな空間の中で、鳴り響く。
なんて綺麗で、心に響く音なんだろうと感動していた。
雰囲気がとても良い。
炎に囲まれた中、みんなでバーベキューを楽しんでいた。
私はピーマンが嫌いだ。キャベツも嫌いだが、ピーマンはもっと嫌いだ。
相変わらず嫌なことに対しては抵抗があり、先生から『我慢して食べなさい』と言われた時は泣き出してしまった。
ノリからは『何泣いてんだよ。もう高学年だから泣くなよ』
しーちゃんからは『じゅんくん、また泣いてるの。嫌いなもので泣くのやめなよ。』
友達はみんな冷たい。そんなものなのか。
ふと横を見ると、またさくらがいた。
さくら『我慢して食べよ!じゅんくんなら食べられるから』
さくらはまた優しく私に寄り添ってくれた。
さくらに言われたからには食べないといけないと、なぜか決した。
ふぐっ
口の中になんともたとえづらい苦味が舌の上から口の中全体に広がっていく。
広がるだけでなく、口の中に苦味が滞る・・・
私は食べ終わった後、すぐにお茶をたらふく飲み、ピーマンの苦味をお茶の旨味に無理やり変えさせた。
さくら「頑張ったら食べれるやん!」
さくらは笑顔で俺の方を見ていた。
周りの暗闇の中で、キャンプファイヤーの炎のきらめきが、ほんのりと、さくらの長髪の黒髪を輝かせ、うっすら紅く光るさくらの横顔がじっとみていた。
ノリ「頑張ったら食べれるやんけ!」
背中を思いっきり叩いてきた!
ノリ・・・空気を読んでくれっと、怒りを覚えるような感情がよぎった。
しーちゃん「一個食べれたら、もう一個食べれるっしょ!」
『しーちゃん追い打ちはやめてくれ』っと心の中で怨念の目線をしーちゃんに向けた。
私「一個食べれたらいいやん!もう勘弁して!先生いいでしょ!」
先生「わかった!これ以上泣かれても困るから一個食べたしいいわ」
先生!神だ!
この時は助かったと思い、生気が戻ってきた気持ちだった。
ご飯も食べ終わり、お話タイムが始まった。
グループに分かれて、テーマに沿った話をする企画だった。
ディベートのような感じで、他人のことをよりよく知ってもらうための企画だ。
子供の頃って、このような企画はめんどくさいと思うことが多かったけど、今思えば本当に重要なことなんだって大人になって思う。
相手のことを知るって本当に難しいよね。知ってるつもりでもまだまだ知らないことが多いから、本物の友人って今までどれだけ作れたかなってふと想う。
キャンプファイヤーの炎が漂う中、テーマは家族についてだった。
家族のいいことや尊敬することを話しましょうって話だった。
グループは、私とノリ、しーちゃん、そしてさくらだった。
私は自分の家族について話す以上に緊張が走っていた。
そう。
さくらの家族の秘密のことだ。
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