さくらの事情
とてもナイーブな話だった。
私は今、小学2年生である。
正直、小学生が話すような内容ではなかったが、話の内容は紛れもなく真実であり、大人になればよく聞く話である。
さくらの両親は離婚していた。
詳しくはもちろん聞いていない。まず何を聞いていいのか。小学生にわかるわけがない。
どうやらこの年の夏ごろにお父さんとお母さんは別々になり、さくらはお母さんのところに引き取られたそうだ。
けどお母さんがとても恐いそうで、お父さんと一緒にいたときは、優しく接してくれて、いろいろさくらのお願いを聞いてくれたそうなのだが、お父さんと別れて、お母さんが別人のようになり、家に帰るのが遅いと、すぐにお母さんに怒られ、ほしいものがあるとお母さんに伝えても、すぐに否定され、ご飯を食べるときはお父さんの悪口ばかり話して、話しているときのお母さんが鬼のような顔で話してくる。
それがとてもとても恐くて、前までは地元の須磨区の友達と帰り道が一緒だったから家になんとか帰れたし、朝も一緒に登校できたから、なんとかつらい気持ちを抑えて、学校を楽しんでいたけど、お母さんがいきなり引っ越しをすることを決めてしまって、友達もいなくなって、毎日恐いお母さんと一緒にいるのがつらくて、今日も家に帰るのが嫌だった。
さくらはこの事をすべて話してくれた。
私も子供ながら、自分の母親がこのような離婚して、豹変してしまうことを想像すると泣けてきて、いや、泣いてしまったぁ。
さくら「なんで泣くの?泣かないで?」
さくらは優しく私の背中に手を置いてくれた。
私「ごめんなさい。ぼくもさくらみたいになったらと想像しちゃって。」
さくら「泣いてくれてありがとう。」
さくらも泣きそうな表情と、共感してくれた嬉しさなのか、頬を少しあげながら、私の方をみていた。
私はさくらのことを助けてあげたいと思い、勇気を振り絞り切り出した。
私「ぼくとともだちになろうや!」
さくらは、うれしそうな顔で私の顔をみてくれた。
さくら「ありがとう。わたしもじゅんくんとともだちになりたい。」
私「じゃあ今日から、ともだちやな!」
さくら「うん!」
私はさくらに手を差しのべて、お互い握手した。
私「えーっと。さくらはどこに住んでるん?」
さくら「ネオコーポってところに住んでるよ」
ネオコーポは市営住宅の隣のマンションだった。
つまり私の家の横のマンションだ!
私「ネオコーポなんや!俺の家のとなりやん!」
さくら「そうなの!?」
さくらは驚きと喜びの混ざった笑顔を見せた。
私「じゃあ~家まで一緒に帰ろうや!さくらの家の前までいくで!」
さくら「いいの?」
私「ええよ!その方が家にちゃんと帰れるやんか!」
さくらは嬉しそうな顔で僕を見つめている。
さくら「じゅんくんありがとう!じゃあ~一緒に帰ろう!」
私はさくらを家まで送ることにした。
さくらの家まで帰る間に、須磨区の友達の話、学校での出来事や思い出を話してくれた。
物静かな子だと思っていたけど、話すととても明るい子だったことに驚いた。
さくらの家の前についた。
さくら「今日はありがとう。」
私「ええよ。明日の朝は一緒に学校行かなくてだいじょうぶ?」
さくらは少し戸惑った表情で私の顔を見ていた。
私「恐いなら、朝一緒に学校いくで!」
さくらは、嬉しそうな顔で、
さくら「いいの!?ありがとう!一緒にいく!」
私「わかった!じゃあ~7時45分に待ち合わせしよ!」
さくら「うん!7時45分で待ち合わせしようね!」
さくらはワクワクしているように胸を踊らせて喜んでいた。
とても安心したのだろう。
この日を境に私とさくらは一緒に登下校することになった。
1つ問題があった。
下校の時は、ノリと一緒に帰っていたからだ。
さくらの家の事情、つまり秘密を他の人に話すのは良くないと子供ながらに思ったから、ノリには黙ることにして、さくらとは公園で待ち合わせをして、一緒に帰ることにした。
さくらと登下校は、とても楽しかった。さくらはいつも学校での出来事や親しくなった友達の話題を楽しそうに話している。
けど、さくらの言葉から家族の話は一度も出てこなかった。
いったい、家ではどんな生活をしているのだろうか。
さくらと出逢って、半年が経ち、桜が満開になる春の季節になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます