第7話

しばらくして、母が再び口を開く。


『優斗、連れてってほしい場所があるの』


俺は母の方を再び見つめる。既に3分の1ほどの花びらが抜け落ちていた。


「どこだよ、どこにでも行ってやるよ」


そして母はある場所の名を呟いた。


***


「着いたぞ」


花瓶を丁寧に持ちながら俺は正面を見つめた。

目の前には赤、青、白、色とりどりのアスターが咲き誇っている。


家から1時間、俺はこの花畑にやってきた。

母は懐かしそうに目の前の景色を眺めていた。


『また、見れるなんて思わなかったわ』

母がぼそりと呟いた。

手の中の青いアスターは既に半分以上の抜け落ちていた。

その姿に俺は瓶を握る手を思わず強めてしまう。


「こんなところあったなんて知らなかった、

教えてくれればいいのに」


『秘密なんて、一つや二つあるものでしょ?』

母が茶目っ気交じりに言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る