第2話
「母さん、どういうことだよ」
『こっちが教えてほしいくらいよ、気づいたらこの花の中にいたのよ』
にわかには信じられない。それはまるで俺がこの一か月願い続けていた奇跡のようだったからだ。
俺は確かめるように再びアスターの中心部に指を擦り付ける。
『ちょっ!くすぐったい、というか臭い!あんたへそ触ったでしょそれ』
母が不満げに口を尖らせる。
俺はくすくすと笑い声をあげた。
「こりゃたまげた、正真正銘、母さんだ。」
『だから言ってるでしょ、まったく』
アスターは呆れた様子で左右に揺れた。
俺は母を横目に見ながら、机の上の置時計を見た。
時刻は10時。少し寝坊したようだ。
俺は朝ご飯を食べようと扉に向かおうとした時、母の鋭い声が響く。
『あんた、学校は?』
「今日、土曜日だよ」
『嘘おっしゃい』
「えっ?」
俺は驚きの声を上げる。
母は確信に満ちた様子で口を開く。
『あんた、嘘つくとき左腕を押さえる癖があるのよ』
慌てて、左腕を見ると確かに腕の上に手が乗せられていた。
俺は頭をポリポリと掻いた。
「ごめん、さぼった」
『いつからさぼってんの?』
「今日だけ」
『だから、意味ないわよ』
俺ははっとして押さえられた左腕を見た。
そして観念したかのように首を振った。
「…母さんが死んでから」
『なんでそうなるのよ』
俺はそれには答えずに自室を出た。
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