第280話 これからも望むままに
“力”を得た代償として、ワタシは地下祭壇に残されたノイターンを中心にゴム紐で繋がれたような生活を送るはめになった。まるでポールに繋がれた犬だ。
このワタシがみすみすこの状況を受け入れ続けているはずもなく、呪いを解こうとそれなりに試してみたりもした。
……が、いろいろと試してみたがワタシの呪いは今も絶賛稼働中だ。
試行錯誤の中、魔力を受け継いだワタシだけがノイターンに触ることが出来ず、他の人は触ることが出来ることが判明した。
(ワタシ以外の人が彼に触れたら即座に魔力を吸われて終わっちゃうんだけどさ)
ただ、解呪に伴い犠牲になった何人かのうち、辛うじて生き残れた人がいて、息も絶え絶えに魔力を奪われた時の状況を教えてくれた。
――触れた指先から膨大な魔力が身体の中に流れ込んできた。
――その魔力は身体中を隅々まで這いずりまわってきた。
――最後に一斉に自分の魔力を奪って身体から出ていった。
その人はその後あっさりと息絶えたけど、これはワタシに1つの希望を与えてくれた。
もしも、ノイターンから流れ込まれた魔力に抗えることが出来る人がいたら……ってね。
(でも、この世界にノイターンの力に抗える人間がどれだけいることやら?)
ワタシがノイターンの魔力を手に入れられた1番の理由は、彼の魔力で生まれた子供だったからだろう。
それ以外にも魔力を得るまでに再封印として何年も予習や準備が出来たことや、ワタシをこの世界へと連れてきてくれた黒い女のサポートなんかもあったことから、比較的に安全に奪取することが出来た。
最終手段としては他人が作った魔石ではなく、最初から自分の魔力で作った子供に挑戦してもらうかってところだけど、これは試したくはない。
子育てなんてまだまだしたくないし、それらの手間を家来に丸投げしたとしても、周囲に子持ちだなんて思われたくない。
だから、それは本当に最後の手。まだまだ試していないことは沢山ある。
――このまま首輪をつけた王様でいる気はない。
ワタシにはこれからも叶えたい願いがあるのだから。
そのためにも、何百何千年……それ以上の時間をこんな真っ白なだけの雪国に留まっているつもりなんてない!
時間だけはワタシにはうんざりとするほどある。
どんなに時間がかかろうともワタシはきっとこの場所から抜け出してやるつもり。
だから、今だけは我慢して我慢して……目先の娯楽で紛らわし続ける。
(待つことは苦じゃないの)
昔から辛抱強い方だし、“黒い女”にワタシの内面だって作り変えてもらっている。
今のワタシは前以上に我慢強く待ち続けられるんだ。
全ては自分の為。
自分の欲求を満たす為なら、ワタシはなんだってするよ。
◎
お茶や菓子と言ったおもてなしの準備は万全!
今日のために仕立てた純白のプリンセスドレスや、愛用しているティアラはもちろん、普段はつけない金銀ピカピカの装飾品で着飾ったワタシは完璧の一言である。
ま、唯一の不満を上げたら、シズクくんがこの場にいないことだけだ――。
(まったく、シズクくんったら大遅刻だよ! 今日はユッグジールの里からお客さんたちが来るっていうのすっかり忘れてるんじゃないの?)
客人と同じく早く彼と再会できるその時を心待ちにしながらこのワタシ、ティアちゃんは謁見の間に置かれた玉座に深々と腰を掛けていた。
既にユッグジールの里の客人たちはラヴィナイ南に設置されている空港に降り立ったという連絡も貰っている。
彼らが乗ってきた飛空艇はグランフォーユからの贈り物だそうだ。
“黒い女”の駒の1つでしかなかったアホ貴族の暴動の損害賠償の1つだって話をルフィスから聞かされた覚えがある。
(一応、ワタシだって献上品として同じものを貰っているけど……乗れないからなぁ! あーうらやましい!)
いつもならシズクくんに抱きかかえてヒトっ飛びで空港までお迎えに行ったのに、今はこうしてウズウズしながら謁見の間にどんと置かれた玉座の上で待ち惚け中だ。
近衛3人のうち誰かに抱きかかえられてもよかったけど、そしたらワタシはきっと酔う。いや、絶対酔う。確実に酔う!
だから仕方なく彼らの登場を今か今かと待っているところ……だったんだけどね。
(……も~! いつになったら地下から出てくるんだよぉ! ティアちゃんをここまで待たせるなんてシズクくんも随分と偉くなったもんだっ!)
待つことは得意なんだけど、彼らが来るまでの時間何もすることが無いからこそ……ワタシは玉座の上に座って深々といないシズクくんのことを思ってしまう。
(…………早く、戻って来てよ)
彼らを待つ間、手持無沙汰で何もすることが無いから、ついついシズクくんのことを考えちゃう。
ま、今に限った話じゃないケドね。
シズクくんを地下に送ったこの2日、ふとした時には彼のことばかり考えていた。
それくらい……ワタシにとってシズクくんはかなり特別な存在になっていたのだろう。
「はぁ……」
「「……っ」」
ワタシは物思いに溜め息を吐く。……ざわりと背後に控える近衛の2人、フルオールくんとヴィンスが身動いだ。が、うざったいと感じる以外は何も思うところはない。
ワタシは2人を咎める真似はせず、先ほどから開く様子の無い2枚扉を眺め続け、やっぱりシズクくんのことを考えてしまった。
(馬鹿みたい……飽きもせずシズクくんのことばかり思っちゃってさ。全然ティアちゃんらしくないなあ……)
多分、昔のワタシが今のワタシを見たら、きっと腹を抱えて馬鹿にするだろう。
――みっともない。無様。なんでひとりの男にそこまで執着してるの?
――男なんて他にも沢山いるのに1人に固執する意味がわからない。
――だいたいそんなことするのは頭がお花畑で溢れたどうしようもない馬鹿な――……。
(――恋する乙女くらいだ……なんてね……)
過去の自分から贈られるステキな罵声にふふっと微笑を漏らす。
(やっぱり、これ……恋、してるんだよね? このワタシが、シズクくんに……)
彼のことは好きだ。
その容姿は勿論、ワタシを可愛がってくれるところも、いつだって一番に優先して従ってくれるところも何もかもワタシは好き。
けれど、それはワタシにとって昔から変わらずの当然の好きでもあった……はずだった。
(今は好きなシズクくんが隣にいてくれない。この状況をワタシは寂しいって思ってる)
出会ってからのこの10年間、彼は毎日と隣にいてくれた。
時には彼のことを邪険に扱ったり、傷付けたこともあったけど、それでも彼はいつだってワタシの傍にいてくれて……この2日会わなかっただけで、彼の存在がワタシの中でとても大きくなっていることに気が付かされた。
(だからシズクくんのことばかり考えちゃってさ……まったく、こんなのティアちゃん……ううん、ワタシらしくないね……)
もしも、彼に向けるこの特別な感情が恋と言うのであれば、ワタシにとっての初恋だろう。
ワタシにとって恋とはするものではなく、されるものだった。
現に昔のワタシは恋という感情を理解する前に恋をさせられていた。
いつだってワタシは受ける側。だけど、一方的な好意を押し付けられることは嫌じゃなかった。
もっとワタシを求めてほしい。色々な人からワタシを求められたい。たくさん愛されたい。
だって、ワタシはかわいいから。ワタシには魅力があるから。ワタシは人を惹きつけるから。
かわいいワタシだからこそ、もっとワタシを求めてほしい。
ワタシはいつだって他人から求められずにはいられなかった。
そして、ティアになる前のワタシは欲しいものを最後まで欲した。
幼い頃は物欲が大半だったけど、次第に成長していくにつれて欲する対象が物から異性になるの時間はかからなかった。
気に入った相手なら素直に受け入れた。
ワタシを好きになってもらうために色々なことだってやって、好意を寄せているように振る舞えば男は簡単になびいてくれた。
何度も何度も……だけど、無数のそこにワタシの好きは一度として生まれることはなかった。
何人と彼氏彼女の関係になろうとも、ワタシが本気で夢中になった相手はひとりとしていなかった。
何より今も昔もワタシは他者に求められたい癖して、他者に対して執着することはなかった。
他人のものが欲しくなる自分でも自覚するほどの悪い癖はあったけど、欲しいものは手に入れた瞬間には色褪せてばかりだった。
多分、手に入れる過程を楽しんでいたのかもしれない。恋なんて遊びでしかなかった。
でも、シズクくんに限っては殆ど何もしないで手に入ってしまった。
まるで捨て犬にうちに来る? なんて言って持ち帰ったようなものだった。
容姿が気に入ったからといえ、欲しかったのは中身を含めた以前のシズクくんだったこともある。
面白みは薄かったのは事実だ。
(来たばかりのシズクくんは崇拝する周囲の国民に比べ、ワタシにまったくと関心を寄せてくれなかったしね)
でも、ワタシに関心を寄せないまっさらなシズクくんだったからこそ、ワタシは興味を覚えたのも事実だ。
まっさらでもシズクくんはいつだってワタシに優しかった。
その優しさは今までワタシにチヤホヤしてくれた男たちとはまったくと違ったものだった。
次第にシズクくんもワタシを欲してくれるようになったけど、彼は今までワタシの特別になりたがっていた男たちとは似てるようで、何か違っていた。
今も彼が何を考えてワタシを欲しているのはわからないし、何が違うのかもわかっていない。
けれど、そんな今までに付き合った男たちとは違う何かに、ワタシは長い時間をかけて惹かれてしまったんだろう。
(ワタシ、きっと恋している。シズクくんに、初めて人に恋をしている……)
今まで誰かを本気で好きになったことがないワタシが、ここまで誰かを想っている――だから、きっとこれが恋なんだろう。
今まで付き合ってきた男たちが誰も教えてくれなかったものを、ワタシはシズクくんによってようやく教えてもらったんだ。
(……うん。ワタシはシズクくんに惹かれてるんだ)
だから、去り際に赤ちゃんを作りたいなんてモーロクした戯言も出てしまったり、これにはティアちゃん赤面しちゃう。
(でもでも、ワタシ本気でシズクくんとの間なら、子供も悪くないって思ってる……)
こんなことになるなら、ノイターンに引き合わせなくてもよかったと後悔が募る。
彼との間に出来た子供にノイターンのことを丸投げすればよかったんだ。
それで失敗して子供が死んだって……彼はワタシを責めることは一切しないはずだ。
きっとシズクくんならワタシの全てを受け入れてくれる。
他によそ見をしても彼なら笑って許してくれる。
かわいいワタシの悪いところも汚いところも全部飲み込んでくれる。
この先もずっとワタシの隣にいてくれる。
(うん……もう誤魔化さない。ワタシは本気でシズクくんを……)
――ワタシは本気で彼を好きになろう。
でも、自分から告白するのはティアちゃんのプライドが許せない。
大体、シズクくんから沢山求められているとしても、直接好意を伝えられたことはない。
「はぁ……」
「「……っ」」
じゃあ、どうしたら彼に心から好きって言われるんだろうと考えて……また1つため息を吐く。
(あーあ、早くシズクくん帰ってきて――)
「レティア様~! お客様が到着したみたいですよ~!」
「そう……じゃ、中に入れてくれる?」
「……は~いっ」
ともあれ、ここでお悩みタイムもひとまず中断だ。
いつの間にか目の前に立っていたヒューくんの耳障りな声を聞き、気だるげに顔を上げて頷いた。
ヒューくんは小走りで謁見の前に繋がる2枚扉へと近寄り、それが可愛いとでも思ってるのか「うんしょ!」という掛け声と共に扉を開いた。
「……ぁっ」
そしてワタシは開かれた先にいる面々を見つめてはっと息を呑む。
先ほどまで自分が嘘みたいに、ぱぁっと明るく笑顔を浮かべて、この場に現れた異国の人たちを向かい入れていた。
同時に、想いを寄せていたシズクくんのコトもすっかりあっさりと、投げ捨てていた。
(はわわぁ……みんなステキぃ!)
シズクくん、ごめんねー!
シズクくんのことは好きだけど、やっぱり好きなものは好きなの!
彼らを目にした途端、シズクくんのことなんてどうでもよくなるくらい、ワタシは想像以上の来客者たちに心を弾ませた。
◎
(はわわぁ……みんなステキぃ!)
今ワタシは何年と待ち焦がれたゲイルホリーペ大陸の、他大陸の魔族たちとの邂逅に浮かれに浮かれていた。
鬼人族、魔人族、そして、待望の天人族……数にして6人の男女だ。
彼らは壇上の玉座に座るティアちゃんへ、服従するかのように片膝を立てて首を垂れた。
喜びのあまりじゅるりとヨダレが垂れそうになる。
……おっと、王としてもレディとしてもはしたない。
そっと指で唇をひと撫で、ごっくんと口の中に溜まったつばを飲み込んでから歓迎の言葉を発した。
「ようこそ、ユッグジールの里の皆さん! 遠路はるばるこんな雪の国へお越しくださって感謝します! ぜひとも頭を上げてください!」
王様としては相応しくないくらいはしゃいでしまうが、ここで礼儀作法がどうだと咎める人は誰もいない。シズクくんがいたら落ち着けとばかりに咳払いの1つでもしただろう。
(ああ、今は丁度いないからなぁ! ああ、シズクくんがいなくて残念だ!)
だから、ワタシはこの後もずっとウキウキ浮かれて、顔を上げた彼らの挨拶に落ち着きもなく耳を傾け続けた。
「お初にお目にかかります。俺……あ、いや、私はユッグジールの里で天人族の長を担っているライズ・ドナと申します」
最初に、長い耳が特徴的な天人族の男性が皆を代表するかのように立ち上がった。
「この度は私たちの急な対談要求に答えていただき、誠に感謝いたし――」
「へえ、ライズくんって言うんだ! まだ若いのに長を務めるなんてすごいですね!」
「へっ……あ、は……い。そう、ですね……長と言っても、今回の対談のために急ごしらえで与えられた位でして、その、私なんてまだまだ……」
「謙遜することないですよぉ! 間に合わせだとしても、長を任されるだけの人望がライズくんにはあったってことじゃないですか! ワタシだって王様になってまだ10年! お互いこれから切磋琢磨していきましょう!」
「は、はあ……その、ありがとうございます」
何この子、すっごいかわいい! 金髪碧眼の爽やかそうな見た目のイケメンだ!
ライズくんはまさしくワタシが思い描いていた天人族って人種を体現したかのようだ。
今はきっと王様であるティアちゃんに合わせて本性を隠してるんだけど、普段は絶対横柄で生意気そうな感じは口調の端っこに残ってる。
まるでシキくんに求めていた完成形みたいな男だ。この子ほしいぃ!
「……えっと、では私はこれで……」
ティアちゃんの顔はずっと緩みっぱなしだ。
ずっとニコニコと笑ってライズくんを物欲しそうに眺めていると、背後に並んでいる金髪の女従者(この人もすごい美人!)に何かされたのか、ライズくんは戸惑いがちな顔をはっとさせて、直ぐに頭を下げてまた膝をついた。
ああ、もっと見ていたかったけどなぁ……時間はまだまだあるし次に行ってもらおう。
「お久しぶりです。ティアさん――いえ、レティア様でしたね」
「あ、キミのことは知ってるよ。アニスさんでしたよね!」
「ええ。10年以上も前とはいえ、覚えていただけて――至極光栄でございます」
続いて立ち上がったのは魔人族の長だと前にも紹介されたアニス・リリスという男だ。
彼もそれなりにイケメンなんだけどコブつきだからなぁ。それになんだかナルシストっぽいし。ティアちゃんの関心はちょっと薄いね。
アニスが今一度頭を下げると、その後ろ控える従者の男も膝をついたまま遅れて頭を下げた。
従者の男は6人の中では地味というか普通過ぎる。ワタシを生み出した女とは逆に地味すぎてこの場では浮いてるって感じだ。
あまりの地味さにその男を注目してしまったが、直ぐにアニスへと顔を向けて口を開いた。
「あの気の強そうな奥さんたちはどうしたの?」
「2人は留守を任せています。息子たちの世話もありますので……レティア様とは今一度会いたかったと言伝を預かっています」
「そうなんだー。あ、遅れたけど出産おめでとー! ワタシも2人と会いたいなー! 子育てが落ち着いたらぜひとも遊びに来てって伝えておいてください!」
別にあの2人とは会いたいとは思わないけどね。
一応王様って言う立場や建前もあるし、ルフィスみたいにその2人もワタシの暇つぶしのひとつくらいにはなるだろう。
「き、ききき、キッカ・ディーマだ! きゅ、急病によりっ、出席できない鬼人族長の代理として、きた!」
最後に白髪頭の鬼人族の女が、顔を真っ赤にして怒鳴りつけような大声を上げてワタシに挨拶をしてきた。
こういう場に慣れてないのだろうか、とにかく緊張しているのが目に見えてわかる。
ワタシは耳を抑えながら顔をうんざりと歪ませつつも笑って女へと「よ、よろしくぅー」とテンションを落として答えた。
んー……でも、鬼人族の長は欠席かぁ。残念……2人の長がここまでカッコいいんだから鬼人族の長もきっとそうに違いない。
ワタシは何気なーく「それはお大事に~」とか言いながらも、その長について聞いてみることにした。
「……鬼人族の長って人はどんな方ですか?」
「あ、あっ、オジキですか!? オジキはこうっ……禿げててどんとお腹の出たっ……」
「あーあー……もう、いいです。じゃあ、後ろにいる彼のこと教えてもらっていいカナー?」
はい、ストップ。そうだよね。
ここにいる長2人がイケメンだからって全員がイケメンって訳じゃないか。
顔立ちは整ってる方だけど、これといって興味がそそられない鬼女の話なんか別に聞きたくない。
でも、その後ろに控える子鬼の従者くんには興味がある。
「……は? えっと……レクを……ですか?」
「ふーん、レクくんって言うんだー。じゃあ、レクくんから直接紹介してもらっても大丈夫ー?」
そうワタシが彼女の背後で皆と同じく膝をついている金髪の鬼人族の男の子、レクくんへと話し掛けた。
レクくんは少し戸惑いを見せながら、その場で立ち上がり表情を硬くしてワタシにぎこちなくお辞儀をしてきた。
立ち上がった少年は今のワタシの背丈と同じか少し低いくらい。まだ10か11歳ってところかなぁ。
こんな可愛い子を従者につけるなんて代理女の癖して生意気だなぁ……なんて、くすりと笑って彼の話に耳を傾けた。
「ベレクト……だ。今回は、その……えーっと……キッカの護衛としてついてきた……」
「あらら、緊張してるのかなー? リラックスリラックス! よろしくねー!」
「……よろしく」
この子もティアちゃんの愛らしい容姿に見蕩れてしまったのか緊張してるのだろう。余所余所しく顔を強張らせて、怖気づいているようにさえ見える。
でも、ちらちらとこちらを伺うそぶりを見せてもワタシの目とは合わせようとしないところからかなーり意識されていることはわかる。
恥ずかしがってるって感じじゃないけど、その後金髪の鬼っこ少年は再度お辞儀をしてしゃがんでしまう。
ああ、この子もかわいいなぁ!
ちなみに、ユッグジールの里にはこの場にいる3人の代表だけじゃなく、もう1人亜人族側にも代表がいるらしいが、今回は体質的に遠慮して欠席だそうだ。
会えなくて残念とかそういう言葉をライズくんが代わりに謝罪していたけど、ワタシは別に全くと気にしていないと本心を口にしてこの話は終わりにした。
そりゃあ亜人族の長って人が半人半獣の美形なら話は変わるけど……まあ、歳を取った老熊って話だからね。
無茶をしてお城で死なれても気分が悪いわ。
従者を除いた3人の自己紹介が終わったので、ワタシも一応礼儀として挨拶をすることにした。
「では、最後にワタシはティア・シティヴ……って知ってるよね。あははっ、皆さん今後ともよろしくお願いしますねー」
話し終わるのと同時にひれ伏すように一斉に頭を下げた面々を見てワタシはご満悦だ。
ま、予想通りというか、遠く離れていた魔族たちというのものはワタシの魔法の効果は薄いらしいことは薄々と勘付いている。
普通の人であるルフィスたちなんかがワタシと初めて面会をした時は、誰もが感極まって泣き出しちゃってたからね。
地人族の反応に比べて泣きはしなくとも、彼らは落ち着き過ぎている。
でも、思ったよりは好感を持たれているので、全然魔法が効いてないって訳じゃないらしい、かな?
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