第172話 アニスたちとの会食

「ルフィス・フォーレ嬢はどうしたんだい?」

「え……と……はい。ルフィスさんならお母さんに呼ばれて王都に帰りましたよ」

「そうか。フィディを送って貰った礼を伝えたかったが、それでは致し方ないね」

「でも、直ぐに戻ってくるって言ってました。あの飛行艇なら半月もかからずに往復できますからね。何事もなければ、もうすぐ戻ってきますよ」

「そうか。では、その時にでも言わせてもらおうかな」


 皆で食卓を囲ってからの第一声が先ほどのミッシング発言とは全然違って拍子抜けしてしまった。

 ルフィス様は一度アルガラグアに寄ってから補給を行い、王都グランフォーユに向かうと聞いた。スクラさんたちは現在ボディーガードとしてルフィス様に雇われているので、渋々といった形で一緒に戻っている。だから今、ユッグジールの里には僕とリコとレティだけだ。


「ふむ……あの船はそんなにも速く、遠くへ飛べるのだな。あれも魔道具なのだろう? いやはや流石地人と言わざるを得ないな。魔法という最たる力を持たぬ代わりに、彼らは知力を働かせる――牙を持たぬ者と侮ることは出来やしないね」

「魔道具は便利ですよね。僕もいろんな場所で魔道具を見てきました。船や武器、照明に台所のコンロまで……それでも船が飛ぶなんて、魔法が使える僕でもいまだに信じられませんよ」

「いずれ魔道具は僕らの力を凌駕するかもね。この里にもいくつかはあるよ。代表的なものといえば里の顔でもある世界樹の大広間、あそこには話した者の声を里中に届ける拡声器があってね――ああ、ルフィス・フォーレ嬢が呼ばれたって言うのも魔道具だよね?」

「はい。遠くの人と通信ができる魔道具が船の一室に設置されてました」

「僕はまだ所有権を保持していないが、各部族の長も同じようなものを所持しているよ。ちなみに、魔人側の分は僕の父である前長のところだね。後はギルド繋がりの先生のところ。――まあ、他部族との交流は無いに等しいので、僕は1度たりとも使ったことは無いね」


 アニスを間に挟んでリターさんとフィディさんも席に着き、僕ら3人も向かい合って食事を始めた。

 2人よりも先に仲良くしてもらったフィディさんを含め、僕らと向き合った3人を見て、ようやくあの日初めて出会った3人組なんだと昔の記憶がよみがえってくる。


 偉そうにふんぞり返っていたアニス。

 腕にしな垂れていたフィディさん。

 気を張っていたリターさん。


 3人ともあの日とは全くと違う印象を得ていたけど……出会った頃と今の素の状態も、本質はあまり変わらないように思えてきた。

 特にリターさんがアニスを叩いた時の雰囲気や口調なんか……リターさんってレティと似てるよね。2人って気が合うんじゃないかな。


「……何よ、美味しいじゃない」

「お、本当だ。真っ赤で辛そうに見えたが、ほのかな甘みに酸味の利いたソース……もしやこのソースのベースはオマルの実かい?」

「はい、オマルの実をペースト状にしました。後は炒めた引き肉と合わせて、調味料で味を調えてます」

「シズクさんの料理はとても美味しくてついつい食べ過ぎちゃうんですよね」


 続けて「私はもっとしょっぱいのが好きですけど」とぼそりとフィディさんが呟き、ぱらぱら……いや、ばっばっと塩と胡椒を振りかける。

 リターさんはだらり……いや、どぱっと蜂蜜をかけて「んー! もーっと美味しくなった!」と満面の笑みを浮かべる。

 辛党のフィディさんと甘党のリターさんと、2人が戻ってくる前に本人から聞いていたし、実際片方は目にしていたけど毎回のごとく目の前でやられると衝撃的だ。


「はは……愛する2人の嬉しそうな顔が見れて僕は嬉しいよ――シズクよ。すまない」

「……あ、いえ、畏まったものじゃありませんし、お好きな様に食べてもらえた方がいいですよ」


 アニスが顔を引きつらせ、僕へと謝罪するかのように頭を下げてくる。

 ただし、リターさんの蜂蜜はまだいいけど、妊婦であるフィディさんは塩分の取り過ぎは控えた方がいいと思う。


 さて、今日は酸味の強いオマルの実……トマトに似た野菜を使ってミートソーススパゲッティを作ってみた。

 見様見真似で作ったため、パスタの方は少しパサパサしてるけど、ソースの方はいい感じに出来て全体的には満足の1品だ。


「これも君がいた世界の料理かい?」

「……っ! …………はい」


 にっこりと笑ったアニスにそう聞かれ、どきりとしながらも……頷いた。

 似た料理はこの世界にもあったけど……隠す必要も無いと開き直り、厳密には別の国の料理だと伝えたらアニスは目を丸くしていた。


「僕らが住んでいた場所は他国の文化が他の国よりも浸透しているからですかね」

「国民の舌に合わせて味は調整されているところはあるけど、多分わたしたちがいた国なら世界中の料理が食べられるわ」

「ほう……素晴らしいね。多種多様な文化が入り混じった君たちの世界はとても平和なのだろう――はて、もしかしてメレティミもミッシングなのかい?」

「そうよ。彼と同じ場所にいたわ」


 あれ? もしかして、疑われていたのは僕だけだったの?

 なら、レティだけは見逃してもらえたのに……ってもう遅いや。


 平和といえば平和だったと思う。僕の住んでいた国は半世紀以上戦争は起こっていない。

 でも、それは内側に目を向けただけの話で、海外へと目を向ければ大勢の人を巻き込んだ争いごとは沢山あった。

 また、戦争が起こってないからって、物騒な出来事は近くでも遠くでも起きていた。

 偶然にも僕らは多少平和な場所で過ごしていただけだ。

 僕は「確かに、平和といえば平和でした」と苦笑しながら場を濁した。

 自分がどうしてこの身体になったのかを思えば、本当に平和だったのかなとも考えちゃうけど、それを口にする必要はない。


 その後は、料理の話からフィディさんの留守中の話へと変えてみんなの口は動いた。

 お酒を薦められたけど、僕もレティも以前のことがあってお断りをする。代わりにと酒瓶を受け取り3人へとお酌をした。

 食後にはオマルのペーストを混ぜて作ったゼリーを出して喜んで貰えた。


「プルプルだな! メレティミのおっぱいみたいだ!」

「ぶっ……リコちゃん!?」


 ガラスの容器に入ったゼリーをおさじで突くリコの発言に周りの視線がレティの胸に注がれる。

 慌てるレティを見て、ふふって笑ったらどうしてか僕が叩かれた。

 酷い……あ、アニスもリターさんに叩かれてる。さらにフィディさんからつねられてる。

 アニスも苦労しているんだね……なんてここだけは変に親近感を抱いちゃう。


「ひえひえ~おいしいっ!」

「あ、リコ汚してるよ」


 ゼリーで顔を汚したリコの頬の拭うと、リコはいやいやって顔を左右に振るんだ。

 もう、ほら我儘言わないの……と、僕とリコのやり取りを眺めつつ、食後のお茶を楽しんでいたアニスがついにと話を始めたんだ。


「なあ――君たちは本当にやましいことを考えていないのかな?」


 直ぐにリターさんがきっとアニスを睨み付け、フィディさんが「アニス!」と咎めても、今度ばかりはやめようとはしない。

 ……大丈夫だ。さっきみたいに頭を真っ白にして硬直するほどじゃない。


「どうして異世界の者がこの世界に来た?」

「……詳しくは言えませんが、僕らはとある理由からこの世界に呼び込まれたんです」

「詳しくは言えない、ね……」

「勘違いしないでほしいんだけど、わたしたちは無理やり巻き込まれたの。自分の意志でこの世界に来た訳じゃないわ」


 そう言って僕とレティは顔を合わせて頷き合った。

 先ほどはリターさんに場を預かってもらえたけど、今度こそと僕らは答えないといけない。


「……この里はミッシングと呼ばれる集団に襲われたことがあるそうだ。……僕はまだ生まれてはいなかったし、この話を聞かされたのは長になってからだから詳しくは知らない。多分、僕と同じく事件後に生まれた子は教えられてないと思うけど……これらの話は聞いたことがあるかい?」


 あ、とレティが声を上げる。


「……それって、エネシーラ長老が話してたやつだ」

「リコもきいた。“銃”をうったんだ!」


 リコがそう続くと僕の指輪がまった指を小さな手で触れてくる。

 僕も頬を緩めてリコの小さな手を握り締め、また3人へと顔を向けた。


「ミッシングと呼ばれる彼らの襲撃によって、里の人が何十人も亡くなったくらいには聞きました。でも、僕らは彼らとは違います」

「信じられない……と言ったらどうする?」 

「信じてもらわなくても結構です。……疑惑って1度ついたら中々晴れないでしょ? 初対面も同様の僕らの言葉に重みなんてない。僕がアニスの立場だったら嘘かもしれないって思うもん」

「ちょっとシズク! 何でいつもそんな風にしか言えないの!」


 と、今の僕の発言をレティが諫めてくる。けれど、僕は変わらずアニスへと視線を向け続けた。

 口調も荒いままに睨み付けるけど、アニスは僕とは反対に小さく笑い返してくる。


「不器用だね。正直者の癖してひねくれたところも見受けられる」

「別に正直者ってわけじゃありません。僕は嘘をつくのが苦手なんです。思ったことは胸の内に秘めるか全部ぶちまけた方がいい」

「ふーん、そっか……個人的には好ましく思うよ。僕は今も昔も他の人よりも上の立場だったことで、周りからおべっかを使われることが多くてね。――友である君とは対等な関係でいたいからね」


 物思いに微笑を浮かべてアニスは続ける。 


「悪く思わないでくれよ。もしも君たちによってリターやフィディが危害を受けるなら――おまけとして仲間である魔人に害を及ぼすであれば長である僕は君たちを止める義務がある」


 笑みは一瞬、直ぐにアニスは真剣なまなざしを僕に送る。まっすぐな視線が僕を捕える。

 まるで問われているかのような目だった――けど、僕はそんなことしない。

 僕も逆に目元の力を抜いて見つめ返し、アニスへと答えた。


「きっと僕もレティも天人族たちには死んだと思われているでしょう。……奇跡的に逃げ延びることは出来ましたが、別に彼らに対して逆恨みや復讐といったことは考えてません。僕らはイルノートに会うためにこの里に来ただけです。決して皆さんに危害を加えるつもりはありません」


 僕たちの言い分を後押ししてくれるかのようにフィディさんが入ってくれる。


「シズクくんたちはイルノートさんに会うためにユッグジールの里に来られたんです。それとルイさんについても……」


 フィディさんは泣きそうな顔をしながらアニスへと顔を向けた。

 僕らのことを庇ってくれているのだろうか。

 優しい人だということはこの場所で一緒にお留守番をしていくうちに知ったことだ。

 僕も親切にしてくれたフィディさんに恩を仇で返す様なことはしたくない。


「なるほど。では、君たちは目的の人物に会った後はどうするんだい?」

「用件を伝えたらすぐに里を出るつもりです。この里は僕らには危険ですからね。その間だけ僕らのことはそっとしておいてもらえると助かります」

「君たちの言い分は一応理解した。では、逆に今度は僕の番――君は僕のことを信じられるかい? 僕が他の里の人たちに君らのことを告げ口するかもしれないよ」

「その時には僕も行動を起こします。ミッシングっていうだけでレティを傷つけるのであれば、僕はどんな手を使ってでも彼女だけは守りきります」


 1番はこれだ。

 イルノートに会うために僕はこの里に来たけど(……ルイのことは今は置いておく。今はルイよりも――)レティの安全を1番に考えている。僕は、絶対に彼女を守り通すと誓ったんだ。

 ふーん、と唸るアニスの肩をぽんとリターさんが叩く。


「あんたの負けだよ。アニス。あたしはこの子たちのことは信じてもいいと思う。フィディがこんなにも気に入っているんだ。何より食事が美味しかったしね」

「そうか。では信じることにするよ――我が最愛の妻たちの言葉だ。あ、変に気を遣ってここから出て行かなくていいよ。もう君たちは客人だ。自分の家だと思って好きにしてくれ、兄弟」


 まだ出会って2回目なのに兄弟なんて言われて内心苦笑しつつも僕は頷いた。

 気を悪くしてごめんね、とアニスは小さく頭を下げてこちらへ謝罪をし――「あ、シズク。お茶のおかわりもらえる?」って顔を上げてお茶の催促をしてきた。


「……え、これで終わり?」

「うん。フィディとリターに危害を加えないって約束してくれるなら別にどうでもいいよ。僕は2人の安全さえ確保出来たらそれでいいからね――2人さえいたら僕は何も求めない」

「そ、そうですか」


 切り替えの早い人だ。長としてはどうかなって思うけど……こういう人は個人的には好きだ。

 僕は催促されるがままに、水魔法を使ってお湯を生み出し、急須へと注ぎ込む。


「僕らのことを知っている人は天人族くらいだと思っていました。もしかして、フィディさんは僕らがその、ミッシングだってこと知ってたんですか?」


 アニスのカップに新しいお茶を注ぎながらついそんな話が口から洩れる。

 フィディさんは首を振り否定する。あ、フィディさんのカップにも続けてお茶を注ぐ。


「いえ――あ、ありがとう――全然。ミッシングって言葉もアニスが口にするまで、忘れていたくらいです」

「あたしはこの旅に出るまで知らなかったわ。多分、この里であなたたちがミッシングってやつであることを知るのは天人族の一部だけじゃないかしら。じゃなきゃミッシングであるメレティミが死んだって話は里に広がっているはずだわ」


 続いてリターさんが答えてくれる。

 リターさんの話は続いて、レティがいなくなった後はルイが何事もなかったかのように四天として集会にも参加していたという。

 外見がそっくりだったこともあり、アニスたちも最初はルイとレティが入れ替わったことに気が付かなかったそうだ。

 でも、次第に話をするにあたり違和感や差異に気が付き、別人だと知ったらしい。


 それから、どうして僕らがミッシングであることを知ったのかも教えてくれた。

 僕らが異世界の人間――ミッシングであったことは共に旅に出ていたリウリアさんから聞いたと、リターさんと共にアニスに説明を受けた。

 リウリアさんの話が始まった時、声を上げて喜びを見せていたレティだけど、話の最後にはしゅんと気を落としてしまう。

 それもリウリアさんの記憶が改ざんされている可能性がある、と3人から言われたからだった。


「もしかして、僕らを襲ったあの時にはもうその魔法がかかっていた……?」

「……きっと、そうよ。じゃなきゃウリウリがあんな他人みたいに……わたしがミッシングってやつだとしても、ウリウリは感情を隠せるほど器用じゃない」


 そっか。じゃあ、彼女は意地悪で知らないなんて言ったんじゃなかったんだ。

 僕は良かったねって思ったけどレティの顔色は変わらないままだった。


「……ウリウリはわたしを忘れていただけだった。だからあんな他人みたいな……やだよ……嫌だよシズク……。わたし、例えウリウリに嫌われたとしても、忘れられたくない。嫌なやつでもウリウリには覚えていてもらいたい!」

「レティ……


 そう怒鳴るように口走るレティの手は強く握られている。励まそうとそっとレティの手に僕の手を合わせた。

 レティの瞳に涙がにじみそうになってて、そっと目元に指を這わせる。

 恥ずかしいからやめてなんて照れて拒むけど、僕はやめないよ。

 レティが悲しんでいたらなんとしてでも慰めてあげたいし、支えてあげたいんだ――。


「……さっきのレティを守るとか、盛り上がってるところ悪いんだけどさ。不躾な話、もしかして2人ってば、恋仲であったり?」

「あれ、え、もしかしてそうなんですか?」

「それは……なんとも」

「「……!」」


 リターさんの指摘に僕らは直ぐに手を離してしまう。

 リコがどうしたってきょろきょろと僕らに視線を這わせて……うう。わかったよ。言うよ。


「……はい」

「……な、何か問題でもある!?」

「ふたりともかおまっかだな!」


 他人に指摘されると恥ずかしいのはどうしてかな。

 ついもじもじと膝をこすり合わせてしまう。レティなんて顔を手で覆って宙を仰いでる。リコは僕の膝の上に座りだす。リコの行動は不明だ。


「おやまあ……」

「あらら……」

「ふむ……」


 ……あれ? と、僕は3人の様子に首を傾げた。

 まだ付き合いなんてフィディさんくらいしか無いけど、この3人は僕らをダシにおちょくってきてもおかしく無い人だなって思っていた。

 だけど、3人は険しかったり眉をひそめたりと、僕らの交際を歓迎しているようには見えない。


「……」


 僕らについての追及はその後全くとなかった。

 アニスは髪を搔き上げると――リターさんに髪の毛が落ちるから食卓でやらないと叱られた後――「話を戻そう」と、実のところ僕が1番聞きたがっていたことを話してくれた。


「それじゃあ、ルイについてだけど――」





 アニスたちはルイと親しかったらしい。その話はフィディさんからもよく聞かされていた。

 毎晩とアニスの家に訪れては、木魔法について学びつつも交流を深めていたと3人から再度そのことを楽しげに教えてもらえた。

 その話にはリウリアさんも含まれていて、ルイが木魔法を学ぶことを快くは思っていないと言葉にも態度にも出す反面、ルイの意志を尊重して学ばせていたという話を聞いて「ウリウリらしいわ」とレティは少しだけ顔をほころばせていた。

 レティの安堵する顔を見て僕もほっと胸が温かくなる。


 その後、ルイはレティの代わりに正式に四天の座に就き、立派にその役割を果たしていたそうだ。

 最初は色々と問題も起こしていたそうだけど、アニスらと出会ったことで次第に大人しくなっていき、に落ち着いたという。

 この辺りは2人が帰ってくる前にフィディさんからも聞いたことだった。

 僕はもう今のルイってものを知らない。

 3人とルイとリウリアさんとの交流話を聞かされて、なおさら僕の知るルイはいなくなったように感じて、寂しくも思ってしまう――では、本題はここからだった。


 エネシーラ長老とディルツ・ドナという人の命からルイはドナ君と結婚することになり、彼女はイルノートへと相談しにコルテオス地方……僕らと同じくラヴィナイへと向かったって言うのが今回の話だったという。

 その後はニアミスしながらも僕らよりも先に出発し今に至る。


「……今晩はこのあたりでお開きにしようか」


 その後……1番待ち望んでいたルイの話を聞いた後、解散となった。





 翌日からの僕の中の時間はものすごい速さで進んでいった。

 アニスたちが帰郷した――ルイがこの里に戻った日から、僕らがユッグジールの里に辿り着いてから過ごした日々よりも早く過ぎて行くようにも感じた。


 ルイの挙式を見に行くかどうか――神魂の儀の最中に2人の式は行われるため、里中の人が見れるようになっているとアニスからは聞き、彼女の式に出るか出まいかと悩んでばかりだった。


 流れて行く毎日、顔には出さなかったけど内心では嫌だ嫌だと拒む日々だった。


(でも、一方でこれがルイの幸せなんだとしたら……)


 僕はもともとルイと決別するつもりだった。


(たとえ、他人に決められた婚姻だとしてもこれがルイの幸せにつながるなら……)


 悩める日にちはそれほどなかったけど、レティはその間1度たりとも僕に何も言わなかった。

 そして、僕もレティとは1度もルイについて話すこと無かった。

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