第142話 アルガラグア観光
「ええっと…………――治ってる、みたい」
「うん、よかったよかった」
一夜明けて、半日ぶりに顔を合わせたレティが気まずそうに具合を教えてくれた。
「だいじょうぶか? もういたくないか?」
「リコちゃん……うん。昨日まであった気怠さがすっかりと消えてる。さっきもマヌーシェさんから完治したって、後は1日休めば平気だって……」
僕の背中に引っ付いたリコへ、レティはほっとするような笑みを浮かべて答える。
抗魔病は簡単に治る病気である。
この世界の生命には魔力路と呼ばれるものがあり、その通路に不全が生じることで抗魔病は発症する。流れの滞った魔力に身体が反応して熱や痛み麻痺といった苦痛に苛まれる――魔力の所有量が多い魔族にだけ発生する病気だ、と以前イルノートから教わっている。
対処法は思いのほか簡単で、自分とは異なる種族の魔力を身体の中に流してあげることで解決する。
初期段階であれば、次の日には何事も無かったかのように日常生活に戻れる。
同族の魔力でも多少は和らげてあげることは出来るそうだ。しかし、その方法では一次的に苦痛を取り除くだけ。根本的な解決にはならず、後は長い時間をかけて身体が症状に慣れるまで待たないと駄目だって話も聞かされたことがある。
僕がこの知識を持った理由として、以前グラフェイン家でメイドとして働いていた時、これと同じものをルイが罹ったことがあるからだ。
あの時はただの風邪だと思って大変だった。全然良くならないルイの体調にもしや、とイルノートが気が付かなかったら、ずーっとあのまま苦しんでいた可能性もあるっていう怖いところはある。
ただレティの場合、やっぱり疲労も溜まっていたのだろう。
彼女の身体を見たマヌーシェさんからは1日安静にしていろと告げられ、尚且つ長であるタルナさんきっての願いってことで追加で2日、計3日の休息を兼ねた滞在を余儀なくされた。
「シズ……2人とも、ごめん。昨日はあんな態度取って……」
「いいよ。誰だって病気になったら不安になるさ」
そう言いながら僕は近くの椅子に腰をかけた。
「リコにはいつもどおりにみえたけどなー」
キャッキャとレティをおちょくるように笑い、リコはひょこんと僕の膝の上へと移動した。
「昨日のわたしのことは忘れてくれよお……」
「ふふ……でも、実のところ、ちょっとは驚いたよ。また僕何かしたかなぁって……ねえ、なんであんなに怒ったの?」
「それは……」
レティは口を濁すだけで、どうして怒ったのかは教えてくれなかった。何度も訊ねてみたけど、レティは顔を隠して知らんぷりをするだけなんだ。
まあ、釈然とはしないけど、頬を僅かに赤くして照れている彼女が目の前にいる。いつも通りに戻ったんだと思えば、これ以上野暮な真似はせず、心から彼女の無事を喜ぶだけ。
そして、名残惜しいけど長居は無用。
少しだけ話をした後、僕は早々に去ろうとした――。
「ん……?」
「…………あっ」
別れを口にして、椅子から立ち上がるとレティが僕の服を引っ張っていた。
「何、レティ?」
「……なんでも」
「そう?」
レティはキョロキョロと視線を彷徨わせるだけで、僕の目を見なかった。いつか見た顔だった。
寂しそうな顔をしていたので、もう少しだけ残るべきかと考えたけど――とんとん、と部屋の扉を叩いてタルナさんが顔を見せたことで僕は去ることに決めた。
「じゃあ、今度こそ行くね」
「またな!」
「あ……待っ……ううん。またね」
「夕方くらいに顔出しに来るよ」
さっきからどうしたんだろう。煮え切らない態度に後ろ髪を引かれる。
「お邪魔だった?」
「いえ、全然」
笑みを浮かべて一礼し、タルナさんと入れ替わりで僕はリコの手を引いて部屋を後にした。
◎
タルナさんの屋敷を出た後、僕とリコはアルガラグアを探索することにした。
まあ、村というか町と言うのか、ここは不思議な場所だった。
右を見れば茶色い鱗で覆われた竜人がお店の呼び込みをしていて、左を見ればほっそりとした女の鬼人族が陳列されている野菜を手に取って唸っている。すれ違えば何か良いことがあったのか笑みを浮かべた天人族の人もいるし、前からは小柄なドワーフさんが髭を触りながら顔をしかめている。
異種混同の町がエストリズにあったなんて本当にびっくりだ。
またまた、他所へと視線を向けると、ストールを被った女の人と犬の顔を持つ獣寄りの獣人さん、普通の人っぽいおばちゃんが井戸端会議のように笑い合っている。
「なんか、いいな……ここ」
人口や規模で言えばサグラントの半分ほどの村だけど、ユッグジールの里で感じた軋轢なんてものを微塵と感じさせない場所だ。のどかな雰囲気もサグラントに似てるかもしれない。
「こんなのんびりとした空気久しぶりだな……最近はどっか急いでいた気がするしね……」
「リコもすき。みんなわらってる」
「うん。グランフォーユとは違った活気がある。優しい空気だ」
リコと手を繋ぎながらぐるりとアルガラグアを1周することにした。
部外者である僕らだけど、村人の方から「おや」と声を掛けてくれたりする。
「別嬪さん。見ない顔だね。商人……ってナリでもなさそうだし。もしかして、昨日タルナ様がお連れになったっていうご友人はあんたかい?」
「べっぴ……はい。友人とは違いますが、多分、僕らがそれだと思います」
「そっかそっか。何にしても綺麗どころが増えるのは良いことだよ。どこから来たんだい?」
「はあ、グランフォーユの方です」
「へえ、随分と遠くから来なさったんだね。南から来たってことは道中さぞかし大変だったろう?」
「そこまでではありませんよ。ミラカルドまでは飛行艇で来たので」
「ほほう、飛行艇かあ。アルガラグアの港にも各地から飛んでくるが、俺は1度も乗ったことはねえや。ま、俺の話なんてどうでもいいか。がはは……しっかし、運が良い時に来なさったね。ミラカルドから来たって言ったら街道を使ったんだろ? 昨日まであの街道は戦場になってて封鎖されてたんだ」
「昨日まで、ですか?」
「ああ、うちの村にいる問題児が一昨日のうちに叩き返してやったって自慢してたからなあ。まったく、レク坊は危ないことに首を突っ込みたがる。おかげで街道は即日解放って、行き来する商人たちにはいい話だろうけどな」
レク坊っていうとあの鬼人族の子……彼だろうか。
「それって鬼人族のベレクトって人ですか?」
「ああ、レク坊……ベレクトさ。なんだい知ってたのか」
「ええ、ちょっとですけど……」
「手のかかるやんちゃ坊主だよ。身体は大きくなってもちっとも変わりやしない。……そういや、タルナ様がまたレク坊にがみがみ怒ってたらしいじゃないの。坊がなんかまた悪さをしたって……まさか、お前さんたちに迷惑を?」
僕は苦笑してそれで終わらせるつもりだったけど、隣にいたリコがふん、と鼻を鳴らして口にした。
「あいつとつぜんおそってきた! だから、シズクとメレティミとリコがたおしてやろうってなったんだ!」
「たっははは! それは本当か? 面白いお嬢ちゃんだなあ……おや、もしかして……別嬪さんは魔族っつうか、魔人族の人かな?」
「え、あ、はい。そうですけど。どうしてわかったんですか?」
「どうしてって、その若さでここまで大きくなった娘さんを連れて歩いているんだ。……さぞかし旦那は鼻高々だろうな。こんな綺麗なお母さんを持ってお嬢ちゃんも幸せ者だ」
ん……?
はっ、はあっ!?
「え、ちょっとまって! お母さんって、え、僕?」
「何、不思議な顔をしてんだい? お前さん以外にどこに母親がいるのか、ってあれ……もしかして妹さんだった? 2人ともそっくりだったから、俺はてっきり亜人族の旦那でもいるのかと……」
「ぐわあぁぁぁっ!」
僕は知らぬうちに一児の母にまでなりました。
女の子、女性、女の子、女性とは何度も何度も言われてきたけど、まさか母親とまで見間違えられるとは……。
その時のショックで思わずふらりと倒れそうになった……。
「リコがこども?」
首を傾げてリコが僕を見上げてくる。むっと頬を膨らませているのはリコも気に入らなかったからだろう。
「もう……リコからも訂正してよ。僕らはそんなんじゃないって。それに僕は男――」
「……ちがう。シズクはリコのこどもだよ?」
「え、リコ?」
どういうこと? え、リコって僕のことを子供だって思ったの?
「リコはシズクがもーっとちいさいころからずっとまもってあげたからね! でしょ?」
「う……はい。そうですね」
確かに、色々と守ってもらったことがある。けどそれってリコが大きくなった後の話じゃないか。それ以前は僕とルイでリコの成長を見守ってあげてたのに……。
「だから、シズクはリコのこどもだよー! ……それにほら――」
リコは自分の胸に手を当てて――ピタリ、と硬直した。
「……リコ?」
「……」
さっきまで元気よくぶんぶんと振っていた繋いだ手はだらりとして、握り返してきていた小さな手は力を無く僕の手の中でぐったりとする。
身動ぎ1つしないリコにどうしたのかと繋いでいた手を小さく揺らした。
「リコ? リコ?」
「……あ、なに? シズクどうした?」
「どうしたって僕が聞きたいよ? 突然ぼーっとしてさ」
「ぼーっとしてた? ……え、うん。うん……わかった。リコは……あ、ううん! なんでもない!」
「変なの……まさか、リコまで疲れが出たんじゃないの?」
そんなことない、とその場で飛び跳ねてまで自分が元気であることを証明するかのようにリコは動き回る。
気にし過ぎかな。レティが倒れたことで神経質になっているのかも。
おじさんは僕らのやり取りが大層面白かったのか、両手を叩き合わせるほどに笑っていた。
それから、ベレクトが迷惑をかけたお詫びとして、僕に畑に植えられていた瓜ものを渡してくれた。冷やして食べると甘くてとても美味しいんだって。
持ちやすい様にと縄まで用意してくれて、僕の背中に背負わせてくれる。ありがとう、と感謝を口にし手を振りながらおじさんとお別れをして後にする。
先を進んでいると再度手を繋ぎ直したリコがぽんぽんと掌で瓜を叩いてはじゅるりと喉を鳴らしていた。
「リコすぐにでもたべたい」
「だーめ。帰ってから。ほら、レティに良いお土産になるでしょ」
「そっかー」
食い意地の張ったリコに苦笑しつつ、ふとすれ違った女性に目を向けた。
魔人族の人だろう。身体にうっすらと光を帯びている。こんな昼間に彼らを見るのは2度目のことだった。
ついじろじろと見てしまい……その人も僕の視線に気が付いてか、怪訝そうに目を細める。
しまった。見詰め過ぎたか。失礼なことをした。
「あ、ごめんなさい」
ぺこりと一礼し、謝ることにする。
そのまま直ぐに横を過ぎ去ろうとして、
「貴女……待って」
と、声を掛けられた。
「……え、はい?」
「……他人の空似? ……けれど……とても、似てるわ」
「似てる? 誰にですか?」
「見間違いじゃない……その容姿も、その目元も……スイ――いえ、ごめんなさいね。気を悪くしたのであれば謝るわ」
すれ違った魔人族の人はそれだけ言うとそそくさと去っていった。
一体何だろう。僕の顔に何か付いているのかな。人にじろじろ見られるのはこの顔のおかげで慣れてはきたけど、いつもとはなんだか視線の種類が違う気がする。
「変な人……」
「な」
その後もゆっくりとアルガラグアのプチ観光を続け時間はあっさりと過ぎて行った。日も沈みだしたのでタルナさんの屋敷に戻り、1番にレティのいる部屋へと向かった。
中にはタルナさんとお医者さんとしてレティを看てくれたマヌーシェさんに、見たことのない男の人が2人いた。茶色のくせっ毛を持ったそっくり天人族2人だった。
兄弟かな……と、ここで僕は先ほどされた間違いを今度は自分自身ですることになる。
レティは僕に気が付くとほっと安堵したかのような笑みを浮かべて手を振ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま……ええっと」
見慣れない2人へと視線を向けて頬を掻き、僕の戸惑いを察してくれたのかタルナさんとマヌーシェさんは彼らを紹介してくれた。
「紹介が遅れたね――」
ひとりはラヴァナさんと言い、マヌーシェさんの旦那さんだ。そして、もうひとりはクレットさんと言って、おふたりの息子さんと紹介された。
親子だったのか……同年齢にしか見えないぞ。
「てっきり、兄弟かと思いましたよ」
「良く外から来た人には間違えられるよ」
「そうだね。時にはどちらが兄に見えるかって父さんとは1度だけ張り合ったこともあったね」
「ははは、何十年前の話をしているんだお前は」
3人もタルナさんと同じく、レティたちの母であるブランザさんと同じ集落に身を置いていたという。
「ラヴァナさんたち……って、あれ……え?」
ふと思いついた疑問が頭の中に浮かび、訊いてみた。
「すみません。天人族って家族内でしか名前を呼び合っちゃいけないってルールがあったと思うんですけど、僕は皆さんをなんて呼べばいいんですか?」
以前ドナくんの前でレティと呼んだことを注意されたことを思い出す。侮辱にもあたる行為だとか言ってたけど……。
「え、何それ?」とはマヌーシェさん。「父さん知ってる?」とはコレットさんで「いや、知らん」とラヴァナさんが首を傾げた。
タルナさんだけは「ああ……以前にもそんなこと言われたっけ」と1つ頷いた。
「あれ? え、じゃあ、タルナさんもタルナって言うのが本名だったり?」
「そうよ? あたしはアルガラグアのタルナ。それ以外は何も無いわ」
……えーっと。
ちらりと家名を持った彼女へと視線を送る。
「メレティミ・フルオリフィアさん……?」
「何よ人の名前フルネームで呼んだりして。わたしだって知らないわ。てっきり天人族は皆家名を持ってるもんだと思ったし?」
家名で名前を呼ぶっていうのはタルナさんたちがゲイルホリーペから去った後に出来たものだろうか。
「あの子も名前に関して気にしてたっけ……いいわ。変わらずあたしのことはタルナって呼んでちょうだい」
「はい、わかりました」
ラヴァナさんたちも同じく気にせずに名前を呼んでほしいと許しを貰えた。
途中で「リコもリコも!」と自分も家名が欲しいと言うので、僕の名前についたレーネを足してあげることにした。
リコ・レーネ。ちょっと呼びにくいかな? でも、リコはとても満足そうだった。
「これでリコもシズクのかぞくだね!」
「うん。でも、こんなものがなくても僕はリコのことは家族だと思ってたけどね」
「ねー」
2人で顔を合わせてにっこりと微笑み合う。
「……なんか、ずるいわ」
「え、何か言った?」
「なんでもない」
レティの呟きは聞き取れなかったけど、なんだかまたむくれ始めそうだ。
じゃあ、と僕は今まで背負っていた瓜を降ろしてレティに見せることでそのむくれっ面を解消しようと考える。
「ほら、レティこれお土産」
「え、何これ?」
丸い球を見せたところでレティが知る由もない。知るのはさっき知ったばかりの僕らとこの地に住む4人だけだ。
「おお、これは立派なカラ瓜じゃないか!」
「いいわね。今年はまだ食べてなかったわ」
「先ほど畑を耕しているおじさんから貰ったものなんですよ。皆さんもどうですか?」
そうして、7人で瓜を切り分けてちょっと遅めのおやつを楽しむことにした。
貰ってきた瓜はスイカ寄りのしゃりしゃりとした食感に苺の甘酸っぱさを足したような味だった。思いのほかおいしい。
僕ら2人にタルナさんら4人で半分を頂き、残りの半分はリコが1人で食べてしまった。
この食いしん坊さんめ。その小さな体の一体どこに入っているのだろうかと、口の周りをべったりと汁で汚しながらも美味しそうに食べるリコを微笑ましい気持ちで眺め続けた。
◎
瓜を食べながら僕も皆の会話に混ぜてもらうことになった。
息子であるコレットさんもかなり昔に抗魔病にかかっていたと3人から説明を受けた。当の本人は幼過ぎて覚えていないほどの昔だそうだ。
それから僕とレティが出会うまでのことも話した。
そして、ルイについても。
「……あの子、ランにはメレティミ以外にも子供がいるの?」
「はい。ルイって言ってわたしにそっくりな、多分妹になる子がいます」
「……そんな、まさかあいつ」
ルイがいることを知ってタルナさんは表情を曇らせていた。
どうしたのかと僕とレティの視線に気が付いて、直ぐになんでもないと口にして話はまた次へと進んだ。
レティと僕らがグランフォーユに来た経緯は嘘を塗りたくったけど、そこからここまで来るまでに出会った人や出来事を僕とレティとリコの3人で話をしていった。
ただ、色々と話してきたが、タルナさんも含めた大人4人が1番食いついた話っていうのが、僕が男であるということだった。もういいよ。
「――あら、もうこんな時間」
「そうだね。それでは我々はこの辺で失礼させてもらうよ」
「外の人との話はとても刺激になります。実に楽しい時間でした」
先にラヴァナさん3人が退室し、その後も少し話をしていたけど、羽を生やした亜人種の男性に呼ばれてタルナさんも名残惜しそうに席を立った。
残された僕も少しだけレティと話を続けたけど、外も暗くなってきたのでそろそろとお暇にすることにした。
「じゃあ、行くね」
「あ……うん」
レティは今朝会った時と同じく妙な反応をするんだ。
どうしたんだろう。余所余所しいっていうか。らしくないっていうか。
じゃあさ……。
「ん? もしかして、一緒に寝てほしかったりする?」
――なんて軽口を叩いてレティの反応を伺うことにした。「そんなわけないじゃない!」って突っぱねるのを期待していたのに、レティは少し顔を曇らせて「ううん、大丈夫……いえ、けど……の?」と口を濁してしまう。
最後は何を言ってるかわからず、聞き返そうとしたところで、ぶんぶんと大袈裟に首を振り始め「おやすみなさい!」なんてシーツを引っ張って顔を隠してしまう。
でも、またも僕の服を引く。顔を隠したままのレティの手をシーツの中に仕舞い、頭を撫でて眠るように促した。
「おやすみ……レティ?」
お別れを口にしたところでシーツは下がり、レティは目だけを覗かせて僕を見た。
目だけはいつまでも僕を捉えたままだった。
「シズク……」
「何? どっかしたの?」
何か言いたげにシーツの上から口元が動くのが見えた。
何度か口を閉口させた後、意を決したのか。口元を見せて開いた。
「……っ……ええい! い、今じゃない、けどっ、大切な話がしたいの! ……うん! 1度セリスさんのところに戻ったら……その……ふ、ふた、ふた!」
「ふた?」
「2人っきりで大切な話がしたいわ!」
レティは叫ぶなり、今度は僕に背を向けて丸まりだした。
何これは、とリコと顔を合わせてしまうが、僕もリコもわかりやしない。
「え、うん……いいよ。でも、今は無茶しないでね」
「無茶しない! だけど、ちゃんと、覚えてなさいよ!」
「……わかった」
僕はレティと2人っきりで大切な話をするってことを約束した。
(……大切な話って何だろう)
もやもやとした気持ちを包んだまま、僕はその晩眠りについた。
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