第81話 神と思しき者との謁見

 ――かつんかつんかつん。


 正午前。教員棟の3階に1人の足音がこだまする。

 足音は薄く頬に皺が走る初老の男のものだ。


 ――かつんかつんかつん。


 風か物か人か、締め切った窓の外から微かに喧騒が届くも、男の足音によって塗り潰される。


 ――かつんかつ……。

 

 男は規則的に鳴らしていた足音を止め、目指していた部屋の前に立つ。

 そこは誰でも自由に出入りが出来る空き部屋だった。机も無ければ椅子も黒板も何もなく、普段から使用する者は皆無に等しい。

 だが、男にとってこの空き部屋は重要な場所だった。

 そっと、扉へ手をかけて――階段を駆け上ってくる足音を耳にし、扉へと手にかけた手を放した。


 男は、その足音の人物を知っている。

 音で悟ったのではない。その人物が発する“波長”から、この校舎にいることは先ほどから察知していた。

 彼とは去年、そして最近ではふた月ほど前に顔を合わせたこともある。

 彼がこの階に用があるとしたら……目を向けたのは2つ先の教員用の共有研究室。ここだろう。


「ふむ……」


 男は1つ息を漏らし、顔色を変えることなく来た道へと足を向け直した。 

 その行動は、男にしてみたら気まぐれのようなものだった。

 何となく。ここに来るその彼の顔を拝見しようと思い立った。


 来た道を戻ること、1歩2歩3歩、4、5、6……そして振り返り、また同じ歩幅で戻る。

 頃合いを見計らい、3歩目にして丁度良く、この階層へと昇ってきた人物が曲がり角から姿を見せた。


 アサガタツオミ。


 ――魔法の実力は並だが、得手不得手関わらず魔法への精通した学力は極めて優秀。ただし、興味のないこととなるとまったくと無関心で、平均を保ちながらも手を抜く癖があり。知識欲と向上心の点を除けば彼は他のユーザーと大差はない。


 後に見たレポートには彼についてそう評価し“知識量は人よりも豊富だが、1つとびぬけている程度”と、彼を知る周りの評価もそのようなものだということも男は聞いている。


 しかし、アサガは数多くいる学園の生徒、教師、卒業生、また関係者の中でも、今1番注目すべき――いいや、注意すべき存在である……と男は彼を“評価”している。


 物質の空間移動魔法。


 2か月前の実技試験で彼が発表しようとしていたもの。

 事前の報告ではまさかとは思ったが……目の前で披露しかけたその魔法に男は若干の焦りすら覚えたものだった。


 ――空間を利用する魔法はまだ一部しか解放してない。

 ――現在は物質を亜空間に収納するという魔法だけ。


 “新たに使用できる魔法”の解放はという形をもって現存ユーザーに周知させ、その後時期を置き経験を十分に積ませてからまた次へと新たに小出ししていく。

 これは男と他の2人で決めていたこと。


 アサガが発表しようとしていた転移魔法は“自分たちのルールの中”では、未だ他のユーザーに使用を許してはいないものだった。

 だからこそ、独学……いいや、があったとはいえ、自分たちの域にたとえわずかでも届きかけたその実力は十分に評価するものだ。

 ただ、その時には即時に男が妨害をしたおかげで“不発”という形に終わったのだが……。


 しかし、事態はその後に起こる。

 彼は妨害中であるにも限らず転移魔法を酷使し、どういうわけか(いいや……御方おんかたの手助けもあったためだろう)はるか遠くにいる異なる者たちを呼び出してしまった。

 この時の騒ぎは魔法の暴走という形で締めたのだが、男には幸か不幸か……ある問題を抱えることになった。

 それがその御方おんかた――これから出会う少女だ。


「……っ」


 アサガは男に気が付くなり、一瞬慄き、そして機械的な愛想笑いを浮かべて小さく頭を下げた。

 その瞬きにも満たない間に、アサガが嫌悪感を示していたことに男は気が付いたが、表情はそのままに会釈を返す。


 彼の、上に昇りつめようとする出世欲は試験中にも見て取れた。

 自分を評価して欲しいと絶対的な自信に満ち溢れたアサガは、他の受験者とは違う気迫に満ちていた。

 そんな彼を落としたのは自分だ。嫌われて当然だろう。

 しかし、そんな人間は何百と見てきた男にとっては今までにふるい落としてきた山のうちの1粒でしかない。その程度、気に掛けることではない。


「……」

「……」


 2人に言葉は無い。

 アサガは男が入るはずだった部屋の2つ隣、職員用の共有研究室の扉へ手を掛けると、身体を滑らせるかのように入室し直ぐに扉を閉めた。

 男もまた表情を崩さず3歩進み、自分が入るべき場所だった部屋を開けて足を踏み入れる。


 部屋は寒かった。

 白一色の他に何も無い壁に、フローリングされてはいるも艶のない床。机や椅子といった家具の類は1つとして無く、鍵の閉められた窓には当然カーテンは無い。

 ただ、人の入りは滅多に無いこの部屋だが、埃や塵の類は感じることは無い。

 ひやりとした空気が頬を撫でるのを感じながら、男は逆手に扉を閉めると部屋の中心まで歩を進める。


 手を掲げて“力”を込めると、男を中心に空間が崩れる。

 積み上げた砂山が崩れるように、木々に茂った葉が落ちるように、降り出した雨が視界を遮るように。

 空間を塗り替えられるかのように姿を変え、後には男がいた空き部屋とは別の場所へ――男の執務室へと“移動”をしていた。


 無数の古書が仕舞われた本棚。

 滅多に訪れることは無い来客用の茶色の革張りのソファーにガラス張りの長テーブル。

 意匠の施された机には自分の体躯に合わせて作り上げた椅子。

 窓というものは無く、部屋は吊るされた水晶のシャンデリアに火とも電気とも違う光源が照らす。

 このシャンデリアを除けば調度品の類は殆ど無い。


 その部屋は普段男が使っている私室だが、そこには先に3人の客人たちがいた。


 1人は床に直接座り込み、棚を背にして本を読み耽っている眼鏡をかけた女だ。

 その女は普段から身なりを整えるといったものに無頓着で、窮屈なのは嫌だからと体形に合っていない衣服を好んで着ることを男は知っている。

 誰の目も引く美貌を持ちながら、飾らず素顔のままであったり、地毛である栗色の髪はあちらこちらと跳ねている。

 野暮ったさを感じさせるものの、それも彼女の魅力の1つなのかもしれない。

 合っていないのかずり落ちた眼鏡を直すとまた本へと没頭する。


 1人は長い黒髪を持つ少女だ。黒を基調とした肩の出た薄地のワンピースは起伏に富んだ体の線をはっきりと表している。

 深く化粧を施してはいるものの、見た目16、17ほどの幼さを残した少女の顔立ちは眼鏡の女とはまた違った美しさを持つ。

 少女はソファーに座り、飲んでいたカップをソーサーへと預けるとスリットから覗かせた長い足を組み直した。


 男は、2人を見て苦笑せずにはいられない。

 相変わらず、変わらない。


 他人にも自分にも無頓着なふりをして、それでいて繋がりを求める女。

 着飾り本来の自分を隠すことでしか身を守ることしか知らない少女。

 そして、自分も……。


 この2人と男との付き合いは長く、かれこれ90年来の付き合いだ。

 この世界に魔法という概念が生まれ、その力を教示し、時には手を組み、時には互いに刃を向けて……。

 今では均衡状態を保っているが、この数年は全くといっていいほど顔を合わせることは無かった。


 だが、この2か月の間、この場所にて幾度となく顔を合わせている。

 なぜ今になって……理由は、先ほどのアサガにあり、原因である最後の1人だ。


 最後の1人。それは白い少女だった。

 髪も肌も唇も瞳も、誰にも踏み荒らされていない雪原のように真っ白な少女。

 透明とは呼べず、見ているだけで飲み込まれてしまうと錯覚するほど深い白――男がに出会ったとき、一番に感じたのは人ならざるものだと言う畏怖を覚えた存在……。


「……」


 白い少女は男に気が付き、ふと顔を上げ、それから直ぐに視線を盤上へと戻す。

 チェスに興じられている様だ。

 黒髪の少女の対面に座って、目の前のテーブルに広がる基盤を睨み付ける白い少女……この存在が数年間連絡も取らずにいた3人を集めさせた原因であった。

 

「待たせたな」


 男は部屋の3人に本来の高い声色で語り掛けながら、自分の顔を撫でるように手を当てて横に流した。

 手を通った後に老いた男の顔は無い。

 後には児童のように幼くも見え、青年のように逞しくも見え、大人とも子供とも取れない狭間の素顔を晒す。

 同時に角ばった男の手も細く、傷1つないものへ……若々しい肉体へ変貌を遂げ、本来の姿となって3人の前に男は立った。


 男は白い少女へと近づき、彼女が身を預けるソファーの縁に手をかけて二人の対局を覗き見た。

 どうやら黒髪の少女が優勢のようだ。

 白い少女は色のない頬を小さく膨らませて、年相応のあどけなさを出しつつずっと基盤を睨み付けている。


御方おんかたは気に入ってくれたようですね」


 白い少女は自分の名前を告げることは無かったため、御方おんかたというのは男が勝手に名づけた呼び名だった。

 当初は是とも否とも取れない反応だったのだが、この呼び方でいいらしいと、いつの間にか定着したものだ。


「……暇つぶしにはいいですね。ですが、こんなもの……児戯でしかございません」

「それはそれは」


 興が逸れたのか、白い少女は自軍の駒を盤上に投げつけてその試合を無効にした。

 相手をしていた黒髪の少女は目を伏せるもそれ以上の反応は無く、またカップを手に取り口へと運ぶ。

 こくりと、喉を鳴らし男へと顔を上げる。


「それで、そろそろワタシたちを呼んだ理由を聞かせてもらえない? もうこのに留まって半日経ってるのよ?」


 黒髪の少女がソーサーをテーブルに置いては男へと笑みを浮かべる。表情とは裏腹にその言葉には深く棘を含んだものだった。


「では、最初に言っておきますが、実は今回お2人を呼ぶまでのことではない取るに足らないことだと伝えておきます。今回、白様をお預かりすることになった私の責任から、些細なことでもお2人には報告すべきだと思い――」

「いいから、その報告とやらさっさと言え! こっちは忙しいんだよ!」


 今度ばかりは笑ってはいられないようだ。

 黒髪の少女は細い眉を吊り上げて男に怒鳴り上げた。


「ははは、聖母様とも呼ばれるお方がそのように気を荒げては信者たちに示しがつかないのでは?」

「ワタシは女の子を囲う余裕がある学園長様と違って暇じゃないの。昨日だってうちの教団でのトラブル処理に追われてたのに……」

「それはそれは」


 その話は聞いている。彼女を教祖とする宗教団体『ファティマ』でのことだろう。

 幹部の1人が大金を積まれて独自に依頼を受けた、というものだとはファティマに潜伏させていた学園関係者から情報は得ている。また、多くの教団信者が暴動紛いのことを起こして逮捕された、とか……我が自営にいた元教授3人も絡んでいると言うことも。

 思い出したのか、黒髪の少女は大きなため息をつくと頭を抱えて俯いた。


「ねえ、なんで人間ってお金が絡むとあそこまで黒くなるんだろうね……。ワタシはこんなことのために教団を立ち上げたんじゃないって言うのに。この半世紀、そんな人ばかり見てきた。もういやだよ……」

「そうですね……力無き者にとって財とは力となります。力を求めるのは命持つ者の本能なんでしょう――私もあなたも等しく力を求めたように」

「でも……!」


 それ以上に黒髪の少女から言葉は出ることは無かった。私事だったと自ら引く。

 もういい、と黒髪の少女は先へと促した。


「一応聞いておきますが、あなたも呼ばれるのはお嫌でした?」


 と、男は眼鏡の女へと話を振る。


「んー……いや、あたしは研究が行き詰ってたしね。気分転換にはいいわ……」

「そうですか。それはよかった。ああ、気分転換といえば、たまにはどうです? うちの学園で非常勤として働いてみては?」

「……さっさと話を始めなさいよ」


 やれやれ、と男は肩を竦め、部屋の中心へと歩き出す。

 今度は3人の視線を集めてから、口を開いた。


御方おんかたが連れてこられた2人、そのうちの男の子の方の意識が戻りました」

「何!?」


 と、白い少女は座っていたソファーから飛び跳ねて男の元へと走り出す。


「それは本当ですか!」

「ええ、喜んでもらえて何よりです」


 保護してから2か月、感情らしい感情を早々見せなかった白い少女がここまで露わにすることは初めてのことだ。

 今まで淡々としていた見た目に反して落ち着きすぎていた姿勢が無かったかのように、年相応の姿を晒して喜びを見せている。


「また、御方おんかたとの約束通りに我々が保護している2人には特別待遇を施し続けております。現在は“ニホン”の我が学園の教師……御方おんかたを呼び出した教員に彼らの保護を任せています」

「で、では! 今すぐに2人のもとに……」

「それは、なりません。未だ御方おんかたの身体はこの世界の魔力と馴染んではおりません。こうしてこの部屋に留めている理由を察してください。御方おんかたの存在は。この世界の魔力に多大に干渉してしまいます。反発した魔力はこの世界でどのような影響を与えるか……」

「では、あとどのくらいだというの? ワタクシをこんな場所にいつまでも留めて……こんなことなら彼の中にいればよかった……」

「ご安心を。あと10日ほどで外に出るまでならば可能となりましょう。ですから、いま暫らくの辛抱を……」

「……わかりました。ごめんなさい。気が立ってまして」

「いえ、当然でしょう。私も同じ立場ならば鬱憤も溜まります」


 白い少女は、はい……と弱弱しい声を上げ俯き、やや間を開けてから男へと面を上げる。

 その顔はもう以前と同じものだった。

 真っ白な、感情の色も無いまるで人形のような白い少女に。


「ありがとう。では、お礼に……」


 白い少女は自分の小さな手を強く握り込んだ。

 指の隙間から僅かに光が漏れ、後には皺の刻まれた、種子のような茶色の球体が現れる。

 男は大事そうに受け取ると、それを上着のハンカチに丁重に包んで懐に仕舞った。

 黒髪の少女は怪しげにその球体を眺めるにとどまったが、口にし興味を示したのは眼鏡の女だった。


「それは何?」

「魔力を貯めるもの……程度に考えてくれれば。すみません。これは御方おんかたと2人を保護する条件として提示したものでして……」

「あんた……まだ力を求めているの? 富も権力もうんざりするほど持ってるっていうのに!?」


 黒髪の少女が立ち上がり男へと非難を込めて言い放つ。

 白い少女が連れてきた2人を保護する代わりに白い少女の力を少しばかり頂く。

 この話は今の今まで2人には話してはいない。

 その話は白い少女がこの世界に現れ、世界の均衡を守るためいち早く気が付き保護した自分だからこそできたことだ。

 男は動揺することも無く淡々といいえ、と首を横に振った。


「これはまた同じようなことが起こった場合の対応、研究として頂いたものです」

「……本当かしら?」

「信じる信じないはご自由に」


 その言葉に偽りは、ない。

 実際に白い少女はこの世界に現れた時、この世界を覆う魔力は彼女を中心に蝕まれ、異質なものへと変貌していたことを男は知っている。その異質な力が世界にどう影響を編殺陣、どう転ぶかはわからないが……。

 同じようなことがまた起きないとは限らない。だからこそ、この世界には無い別の力を知っておく必要があった……そう、あったのだ。


(もしも、この力を理解し自分のものとすることが出来れば、今存在する魔法よりもそれ以上に強大な力となる――)


 強大な力は、抑止力になりうる。

 例え目の前の2人を敵に回したとしても……。

 それは決して私情から来るものではなく、男は世界の秩序を守るため、という名目を掲げてのこと。それ以上の感情は持ち合わせてはいない。

 だからこそ、男はこの世界には無い異質な力を欲したのだが……。


 ただ、2人からしたら不公平というもの。

 保護しているのは男だが、この2か月ほど、男を含めた3人で白い少女の異質な魔力の干渉・中和を担っていた。

 そのため、全てが男だけの手柄ではなく、2人にも同等の働きがある。


「……この件に関してはお2人には貸しということで。今すぐとは言えませんが、何かお望みとあれば後日にでも」

「……そう。その貸し、あんたの首を絞めないといいけど?」

「んー……考えておく」


 いまいち納得できないとむくれる黒髪の少女に、抑揚のない返事を反す眼鏡の女――これでいい。


 異質な魔力である2人のうちの1人、その少年の意志が戻ったことを報告するためだけに2人を呼んだ……違う。

 実際に男が考えていたのは、この白い少女からこの世界とは異なる力を受け取ったところを2人に見せるためでもある。

 この異質な力は3人ならどこにいたとしても感知することが出来る。そのため、白い少女が去った後にもその力の片鱗を2人に黙って残しておくことは禍根となりえる可能性がある。


 もう、以前とは互いに身分ももった力も違う。

 下手をすると世界を巻き込んだ戦争へと発展する可能性もある。

 なら、最初からそんな力は持たずに捨ててしまえばいい――それも違う。


(私は力が欲しい……ただ、それだけだった)


 黒髪の少女は長い年月を同じく生きても内面の進歩は変わらない。

 注意すべき点は片方の眼鏡の女でもあるが、この女は……いつも傍観を決め込んでいる。

 男と黒髪の少女が何度も衝突した時ですら、眼鏡の女は一度たりとも介入することは無かった。

 この先も同じだとは言わないが……。


 そして、3人と1人の会合はこれにて終わりを迎える。

 眼鏡の少女は気分転換にニホンへと渡って、白い少女がご執心の少年を見ると口にすると、黒い少女は恨めしそうに声を上げてた。

 男も、イギリスの学園本部へと向かおうと移動の準備をし……ソファーに横たわる白い少女を見て気まぐれに浮かんだ疑問を尋ねることにした。


「1つ、私に教えてもらえませんか?」

「何か?」


 白い少女が面を上げて男を見た。


「……世界が自分を中心に回っている気分とは、いったいどのようなものなんでしょうか?」

「……?」


 男は、知りたかった。

 白い少女は自分たちと立場は似ている。しかし、根本的なところで大きく違う。

 自分たちが絶対的な力を持っていようとも、それでも全体で見れば個でしかない。だが、白い少女は個でありながら全というもの……神と呼ばれても差し障りない存在。


 神という存在は果たして世界をどう見ているのか……。


 しかし、白い少女は男の問いに首を傾げるばかり。


「あなたは……このチェスと呼ばれるゲームはよく遊ぶの?」

「え……ええ、嗜む程度には」

「なら、あなたはこの駒を操っている時、この基盤の世界は自分が支配している、なんて思うの?」

「は? いえ、そんなことは……」

「でしょう? ですから、1度たりともワタクシは、考えも及びませんでした。たかがお遊びに世界は自分を中心に回っているなんて無いでしょう?」


 その答えを聞いて、男の顔は赤くなり、2人の女はくすくすと笑いだした。


「君は達観しているけど、いつも本質の一部しか見ていない」

「あんたの器の小ささは昔と変わらないわ」


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