第18話 サグラントのグラフェイン家

 飛空船。言葉通り空を飛ぶための船だ。

 強力なや採掘なんかで見つかった大型コアを利用して空を飛ばせる船……魔道具だそうだ。


 料金は割高らしく、今回の場合だと年齢性別関係なく一人最低でも40リット銀貨程度かかるらしい。そして、その最低運賃だとタコ部屋だそうだ。ちょっと値を上げればタコ部屋でも個人で仕切られた専用シートに座れるとか。

 また貴族向けのファーストクラスもあるらしく、お値段も跳ね上がるが個室が利用できる。皆はここにいるんだろうね。

 荷物を預ける場合は大きさで値段は変わるが、別途で大体20リット銀貨前後かかる。そして、奴隷は持ち込んだ荷物の中に入るなら付属品として許されるとか。

 ちなみに、陸路の話だと10数リット銀貨くらいで済むそうだ。時間は僕が想像する以上に長くかかるらしい。


 あ、じゃあ、ルイは? って聞いたらこれまた手荷物って扱いになるらしく、1人までなら奴隷の入船許可が下りる。なら、僕らもシーナさんやトマスさん、ゴドウィンさん誰かしらの手荷物に……って、今度はそこに契約者の話に絡む。

 僕ら3人が契約したのはゼフィリノス様だけだ。

 というわけでルイが手荷物として船内に。僕らは荷物として貨物室だ。うん、納得できないけど仕方ない。


「それにしても……」

「うん、どうかしたか?」

「……寒い」


 空気も薄くて息苦しい。マントで包まってもなかなかに辛い。

 ここは背に腹は代えられないって言うのか、イルノートで暖を取ることにしようと思います。緊急手段です。断りも入れずに抱きつくことにします。びっくりしてます。いいんです。さっきのお返しです。人肌ぬくぬくです。


「仕方ないやつだな」

「寒いからね」


 今は子供の権限をフルに活用。

 ここでイルノートがゴドウィンさんみたいなむさっ苦しいおっさんだったらやらなかっただろうな……。

 困った顔をしつつもイルノートもなんだかんだで自分で使っていた外装使って包んでくれるしね。

 そうして2人抱き合いながら、到着までイルノートと細々と会話をして時間をつぶした。

 実は今、魔法を使って僕らの周りだけ多少暖かくしてるんだって。それでも寒いってどんだけだろうね。使いすぎるとこの船を操るコアに悪影響があるかもしれないって言うから威力は減だそうだ。

 電子機器のご利用はお控えくださいって感じなのかな。外にいるであろう他の奴隷さんたち大丈夫かね。





 やっぱり、空を飛ぶだけあって、陸路で行くよりもはるかに速い。

 陸路で行くならひと月ふた月かかる距離を飛んでいるそうだ。目的地がわからないから流れた時間での予測って言われたけどね。


 おおよそで1日近くかけて、僕らの船はある港に着いた。

 イルノート暖房機でよかったのは最初だけだった。あまり話す人じゃないからね。暇で暇で仕方がなかった。

 なのでほとんどが寝て過ごした。空腹でひもじい思いものしたけどそこはもう頑張った。でも、あとちょっと遅かったら弱音をはいてた。トイレだって行ってたかもしれない。

 だって、いつ到着するとか知らせてもらってないんだもん。終わりが見えないのってつらい。

 

「おや、凍死はしないで済んだみたいだね。残念だ」


 貨物室から馬を引く僕たちを見たゼフィリノス様の第一声はそれだった……が、憎まれ口を叩きつつも、彼の顔は真っ青だった。船も駄目なのね。

 まったく、奴隷は大事に扱うんじゃなかったのって、じとーってイルノートを恨めしく見つめるも僅かに眉を顰める程度で全然伝わらない。

 く、1日程度の密着ではイルノートとはアイコンタクトを取れるほどの仲にはなれなかったようだ。もっとがんばりましょう。


「まあまあ、ゼフィリノス様なりの冗談ですよ。ほら、おなかすいたでしょう。これをどうぞ」


 なんてシーナさんが僕とイルノートに小さな包みを渡してくれた。なんだろう。包みを剥がすと中から青野菜と肉を挟んだパンが頭を出す。サンドイッチかな!?

 冷めちゃってるけど、なんてシーナさん申し訳なさそうに言うんだけど、とんでもない!  


「ありがとうございます!」


 感謝を述べるのと同時にかぶりつく。

 うーん、もう絶品! 調理して時間が経っているのか、パンは野営中に食べたものよりもがちがちに堅かったけど空腹は最高の調味料。乾燥して石みたいに硬くても気にしないでバクバクと口の中に運んだ。


「ありがとう」

「……えっ……あ、いえ……これくらい、お安い御用ですよ……」


 そう感謝を口にして微笑む――あ、シーナさんの顔がぽんと真っ赤になった。どうやら彼の笑みを間近で食らってしまったようだ。イルノートはシーナさんの変化に全くと気にもかけず、渡された包みを開けている。

 うーん、小さくパンをかじる姿すら様になってる。婦女子の方は至近距離でイルノートを見ちゃだめだね。

 よし、僕もこんな男になろう。あふれ出す美男臭。いつか出せるようになるかな。うん。無理かな。


「シズクー!」

「ん、ルイ」


 ぺたぺたと駆け寄ってくるルイを見てほっと一息。うん、僕らと違って元気いっぱいって感じだね。


「空どうだった?」

「うんうん、すごかった! そとはでちゃだめっていわれたけど、まどからそとみてね。ぶわーって、ぶわーってとんで、たかくなったの。もう、ちいさいちいさい! くもっていうしろいの。ほら、おそらにあるしろいやつね。あれってちいさなみずなんだって! いみわかんない!」


 けらけらと笑って快適な船旅だったことを教えてくれる。

 ああ、そっちはそんなに楽しい別世界だったのね。寒さとか空腹とかとは無縁のね。また、こちらを見てあまりいい顔をしてない我がご主人様を恨めしく思うよ。


(……何、ルイ?)


 ふと、ルイが僕の周りをうろつき出し、すんすんと鼻を鳴らしだす。


「……シズク。なにこのにおい?」

「ん、臭い?」

「おはなのかおりみたいのがついてる」

「花? ああ、イルノートじゃない?」

「ふーん、イルノートのにおいかあ……ふーん、じゃあしかたないかー」


 仕方ないと言いつつ、唇を突き出して不満そうだ。

 どういうこと?





 僕らを乗せた飛行船が降りた場所はケッテンバング港ってところだ。

 賑わいで言えばキグルキ港の方がはるかに上で、落ち着いてる。ただ、規模で言えばケッテンバング港の方が大きい。

 停泊している船の数も多いし、ドッグもある。今も船乗りや商人の往来も目についたけど、それ以外の人は見かけない。船乗りたちのための宿場と積荷の保管場所としての倉庫程度しかない。

 それも、この近くに休憩を挟みながらの徒歩1日ほどでたどり着ける、この一帯でも一番大きな町があるみたいで、ここは港としての意味合いが大きいらしい。馬車なら半日もかからない。

 簡単な手続きを済ませてすぐに僕らはケッテンバング港を出発した。


 今回、僕とイルノートはゴドウィンさんの駆る馬車へと乗らせてもらっている。

 荷物は相変わらずだけど、ちょっと後方の配置を弄って僕ら2人が座れるくらいには隙間を開けてもらっている。後方に続く箱馬車の御者を務めるトラスさんがこちらを伺うように馬を駆っている。


 ゴドウィンさんは見た目と同じく豪快な男で、気さくに僕らに話しかけてきた。


「以前の俺は冒険者をしていてな。2年前に町中でちょっと騒ぎを起こしてしょっ引かれるところをゼフィ坊に助けてもらったんだ。その恩返しがしたくて旦那、ゼフィ坊の親父さんのオーキッシュ・グラフェイン候に再三頼み込んで雇ってもらえたんだ。最初の頃はトラスさんに信用されなくて大変だった」

「ふーん、じゃあシーナさんは?」

「シーナは旦那の知人らしくてな、旦那が家督を継ぎこの地方を治めるにあたって補佐として雇われてんだ。ゼフィ坊がハイハイしてる頃から知ってるらしいぜ。で、話は逸れるけど今回の旅も俺はシーナの護衛として旦那の発注した荷物を受け取りに行こうとしたところを、ゼフィ坊にせがまれて連れて行ったんだ。子煩悩の旦那は社会勉強のつもりで出したんだろうがなあ……まさか奴隷を買いに行くとは思いもよらんだ」


 かっかっか、なんて笑い声を上げる。


「まあ、ゼフィ坊も親しい同年齢の子供があまり近くにいなかったからな。奴隷なんて立場だけど仲良くしてやってくれや」


 うーん、仲良くって言われても……。

 ルイのおまけ程度にしか考えていないはずだし、あまり歓迎されてないと思うんだけどなあ。

 まだ労働力としてならイルノートは大人だから人手にはなるとは思うけど、僕は子供も子供だから期待すらされないはず。結構無駄な出費に近いと思う。

 でもここで曖昧に濁して心象を悪くするのもどうかと思ったから声を弾ませてイエスと答える。


 それからもゴドウィンさんの一方的な会話を聞きながら馬車を進ませる。イルノートは我関せずって外の景色を見るか目を閉じてるくらいだった。2人っきりの時以上に素っ気ない。


「元気な坊主に比べてあんちゃんは無口だな」

「……すまない。人と話すのは苦手なんだ」

「色男っていうのはどいつも口が固いもんなのかねぇ。これがモテる秘訣ってやつなのか? なあ、坊主はどう思う?」

「はは、イルノートはいつもこんな感じだから」


 ふーん、なんてあんまりおもしろくなさそうだ。それでもゴドウィンさんの口が休む暇はなかった。

 馬車を1人で引いていた時はさぞ退屈だったんだろうな。僕は見るものすべてが新鮮だったから口数の少ないイルノートといても平気だったけど。

 

 さて、景色が茜色に染まるくらいでようやく目的地にたどり着いたみたい。


 ゴドウィンさんの話は昔ひとりで遭難しかけていた時、自分よりも大きな熊と対峙してしまったという瀬戸際話まで進んでいた。

 その前は毒蛇に噛まれて2日ほど生死を彷徨った話だったかな。で、その前が野党に襲われたご婦人を助けて熱い一夜を過ごしたとか。「おっと、これ以上は坊主には刺激が強すぎらあ」とか、その話はちょっと眉唾物だったけどね。


「見ろ、あれがオーキッシュ様、グラフェイン候が居を構えるサグラントだ」


 なだらかな小山のてっぺんからその町は一望できた。

 卵みたいな楕円型の輪に包まれた大きな町だ。町の外側をレールみたいにぐるりと壁で囲まれている。

 敷地内の3割ほどが町外から流れる河川と繋がった湖に埋まっていて、まるでオレンジ色の蓋が町の中に置かれているみたいに見える。

 その湖の隣に……集合した民家から少し離れたところの盛り上がった丘にひときわ目に着く一軒の屋敷があった。そこが僕らのご主人様であるゼフィリノス・グラフェインの家らしい。


 また、町から少し離れたところに目を向けると、農村と思しき集落が2つ離れてあった。町と比べるとかなり規模は小さいらしく、小さな胡麻粒みたいに家がぽつぽつと建っているのが見えた。自然も多く、町の周辺の平原から少し先には深い森がどこまでも続いていた。

 家に着いたのが嬉しいのか、僕らを乗せた馬は唸り声を上げて元気よく小山を駆けくだる。





 ほどなくして切石を積み上げた、町を囲う高い外壁へとたどり着く。

 ゴドウィンさんが門扉まで行くと門番らしき守衛さんが駆け寄ってきた。


「ゴドウィンさんおかえりなさい!」

「お勤めご苦労さん。俺らが不在中に何かあったかい」

「えーっと特には……ああ、そうだ。近日中にヨーソタス地方のお嬢さんがグラフェイン卿を尋ねにくるって話が上がったくらいです。それ以外は何もありませんでしたよ」

「ヨーソタス……ベルレインの姐さんのやんちゃ娘かね。まあ、わかった。あとで旦那に聞いてみるよ」

「はい。では、長旅お疲れ様でした」

「よせやい。ただのお使いだよ」


 軽く挨拶を済ませるとゴドウィンさんは手綱を振って馬車を町の中へと走らせた。

 その後、守衛さんは後ろの箱馬車を見るなり、ぴっと背を伸ばして姿勢を正した。手に持つ槍を胸に構える。話しかけはしなかったけどトラスさんに一礼をし、さらに馬車の中にもそれ以上の敬意を払っていた。

 彼は僕らが門扉を通り過ぎてもなお敬礼を続けていた。

 

「すごいね。ゼフィリノス……様ってやっぱり偉いんだね」

「偉いのはその父親だ。本人はその子共でしかない。大事なのはその先さ。親の威を着るままで終わるか、それ以上に尊敬される人物になるか。大変なもんさ。自分よりもすごい人物が前に立つってことはな。我らの主人がそうならないことを祈るばかりだ」


 何気なくイルノートに聞いたのになんだか棘のあるお返事だ。

 イルノートは小さく溜め息をついて、馬車の外へと遠くを見つめる。

 

「私が奴隷市場にたどり着く前にそういう奴の近くにいたんだ。終始自分が偉いと勘違いし、結局最後までそいつは理解できなかったみたいだがな……」

「ほほう、色男も言うね。ただまあ、そういうことを大っぴらげに言うのはこの先やめてくれや。俺の恩人でもあるが、そういうの関係なくゼフィ坊を高く買ってんだ。あまりいい気分じゃない」


 イルノートのぼやきに、先ほどまでの会話が嘘みたいに思えるほどゴドウィンさんの声色が下がる。

 気に入ってる人物を貶されたと思われても仕方ない発言だ。

 僕らから背を向けているけど、ゴドウィンさん不機嫌なのが伝わってくる。


「……ああ、それはすまない。失言だった」

「ああ、これからは気を付けてくれよ」


 そこからは両者の不穏な空気にちょっと肩身を狭くして、僕は外を見るしかなかった。トラスさんがおや、とばかりにこちらを見て不思議そうに目を細めていた。


 気まずい空気の中、僕らを乗せた馬車は石畳の整理された大通りを走る。

 今までのでこぼことした街道とは違って衝撃は少ない。

 瓦屋根と石垣の民家が綺麗に並び立つ町並み。時間も時間なだけに露天商は店仕舞いを行っている。時折見かける人は僕らを……後ろのゼフィリノス様の箱馬車を見かけると道を開けて手を振ったり、お辞儀をしたりと様々な反応を見せている。

 商店街や居住区を過ぎると石畳の道をそのままに、小山からでも目についたあの大きなお屋敷までの何もない一本道に変わった。緩やかな坂道だ。

 丘を登っている最中にも後方に広がる町並みを見た。

 もう日も沈み、あちらこちらといくつもの明かりが灯っている。1つ1つの灯は小さくても、これだけの数が灯っていれば空に散らばる星のように見えた。





 屋敷に着くころには世界は黒く塗りつぶされていた。丘から出はわからなかったが、鉄格子のような柵で覆われた大きな屋敷だ。

 また門扉のところにも門番さんがいて、僕らの馬車に気が付くと急いで門扉を開け、飛び跳ねるかのように屋敷の中へと向かっていった。

 ゴドウィンさんは気にするでもなく開けられた門を通り、敷地内に入って馬車は屋敷の前で止まる。僕とイルノートが馬車から降りている最中に屋敷の二枚扉が開いて、中からぞろぞろと人が現れる。

 慌てて入っていった門番さんやトラスさんと同じような、燕尾服の執事っぽい人から濃紺の厚着のワンピースにエプロンをつけたメイドさんっぽい人までいる。この人たちは従者かな。

 彼らは新顔の僕らを気にするそぶりを見せつつ、ゼフィリノス様の箱馬車まで近づくと左右に列を作った。


 従者さんたちが並び終わるの見計らうように、御者台から降りていたトラスさんが荷馬車の扉を開けて、先にシーナさんが、続いてゼフィリノス様。最後に目を擦ってルイが降りてきた。

 ちょっとぐったり気味のゼフィリノス様が一歩前に足を出すと一堂に「おかえりなさいませ」と声を上げて角度のそろったお辞儀をする。これにはちょっとびっくりだ。

 こんなのドラマの中でしか見たことなかったから、目を丸くしてしまう。


「ああ、ただいま」


 当然とばかりに得意げにゼフィリノス様は使用人たちの花道を抜けて屋敷へと歩を進め――足が止まった。

 なんだろう。彼の顔がかちんと固まったように見える。どうやら彼の目の前にいる人物たちのせいらしい。

 その片割れの女性がたた、と地面を叩き鳴らして駆け寄り、立ち止まっていた彼をしゃがんで抱きしめた。


「ゼフィー! 帰ったのね! お母さん本当に心配したんだから! 無事に帰ってきてくれてよかった……!」

「お、お母様。ただいまもどりました」


 母親らしき女性はゼフィリノス様を抱きしめながら目に涙を浮かべていた。

 おやおや、随分と苦しそうで恥ずかしそうな表情を浮かべますねご主人様、とは心の中だけで呟く。


「おお、ゼフィリノス。たった数日見なかった間に見違えたぞ。さぞや険しい道のりであっただろう」

「いえいえ、お父様、ずっと移動ばかりで暇だったよ。それに危険なことがあってもシーナさんやゴドウィンさんがいますからね」


 そう、頭を撫でるのは彼の父親らしく、えっと、オーキッシュ・グラフェイン候だったっけね。

 父親の方は凛々しくて母親の方は美人の部類に入るし、おふたりとも若い。

 顔は父親似だけど髪は母親のものかな。しかしまあ、かなり溺愛されているようだ。

 最初に自己紹介をされた時や移動中での自信満々って言うのかな威厳を張ろうとする彼の姿はここにはない。

 しおらしいというか猫を被っているというか。どれが本当の彼なんだろう。もちろん、僕を睨みつける彼を含めて、だ。


「まあ、無事に帰ってきてくれて何よりだ。疲れただろう。今日はもうゆっくりと……おや?」


 そこでオーキッシュ様が僕たちに気が付き、首を傾げた。


「この人たちはどなたかな? ゼフィのお友達か何か……?」

「あ、いえ、お父様、彼らは僕が買った奴隷です」

「「奴隷!?」」


 2人声を揃えて声を上げた後、先に「ああ……」とばかりに奥様がよろけはじめる。

 オーキッシュ様も顔をしかめて腕を組む。


「ねえ、ゼフィ嘘よね? 奴隷だなんて言葉、どこで覚え……いえ、奴隷なんてどこで知ったの!?」

「え、ええっと……」


 ゼフィリノス様は二人の反応を見て、しまったとばかりに顔を曇らせる。

 言葉もしどろもどろに焦ってらっしゃるようだ。奴隷を購入したってことは秘密だったのかな。

  

「お前が……欲しいものがあるというからトマスに金を渡しておいてなんだろうと楽しみにしていたんだがな。まさか奴隷とは……」

「ち、違います! お父様!! これには深いわけが!!」

「ゼフィ、あなたに奴隷なんて必要ないと思うわ……」

「お、お母様……」


 なんだか雲行きが怪しい。

 周りの使用人たちも狼狽えてるし。シーナさんたちもこの結果がわかっていたのか、なんだか明後日の方向を向いてる。


「イルノート、これなんかまずい雰囲気じゃない?」

「さあな……私にはわからん」


 隣にいたイルノートに話しかけるも肩をすくめるだけだ。

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