Magia VII

 純粋な魔法使いではない私の魔力は、光魔法ルチェオ以外、そこまで強くない。園庭からほど近い林に転移トランスポートした私は、どこへ向かうでもなく、とにかく園庭とは逆方向に道を進んだ。


 何で話しちゃったんだろう。ぎくしゃくした関係を消して、気持ちよく離れようと思っただけなのに。


 期限つきという制約だけが確かなこの存在に、ただでさえ胸のあたりがすごく痛いのに。これ以上好きになってしまったらもう、悲しさが増すだけなのに。

 なら葉太とちょっとでも一緒にいられるだけで幸せなんだから、それで十分に満足しようと思っていたのに。


 恋は魔法ではなくて、呪力だわ。


 手のひらを開いて見つめる。白くて、細い指の先に薄紅色の爪。人間の女の子の身体。


 さっき、一番いい笑顔になれていたかな。


 一つ、二つ、花びらが落ちれば、この身体ももう完全ではいられない。このままどこで嵐に吹かれてもいい。葉太が見ていないところなら。


 大気が孕む緊張が伝わる。身体全体が予感に身構えている。嵐が近い——嵐?


 いえ……違うわ、それだけじゃない。


 行き交う風の囁きに混じって、空気中に禍々しい気を感じた。

 咄嗟に光魔法ルチェオを張り、林の中を見渡す。そして背後の木々の向こうに見えた気の元それに息が止まった。



 悪鬼マルス・ラルゥア……!!

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