第五話 何故、僕が捕まらなくてはいけないのだろう
どのような言葉を使えば相手を納得させられるか、この場を収める事ができるか。足を動かしながらも、強く地面を蹴り前へ進みながらも考える。
重要なのは相手が事の重さを重大視できる人間かどうか、
また強攻策に出るような野蛮な人間じゃないかどうかだ。
つまりは理知的人間だと好ましい。まあまだ成人していないような女の子と
それも弱みにつけ込んでやろうというのだからろくな人間ではないだろうが。
ある意味で、リスクを嫌うという点では理知的で僕と似ている。
弱みを握ることで主導権をとり告発されないようにする。
ならば僕という第三者に見られたのはデカいはず。そこをうまく伝えれば
場が収められそうだ。
・・・いやよく考えたら相手は犯罪者なんだから自警団が来るぞ!
って脅せばなんとかなるんじゃないか?そんな面倒なことしなくていいのでは?
・・・よしここはこのプランBの作戦でいこう。
「さあ、それじゃあ中には入れろうか。あはは、緊張してる?
大丈夫、初めてだし優しくするよ。勿論気持ちよくもね。
トラウマになったりしたら大変だからね。どうせやるなら
互いを思いやって楽しくいこうよ。ね?」
男はどこか愉快そうな顔持ちで彼女に話しかける。
一方彼女は不安そうに俯いて、両手をぎゅっと握りしめていた。
怖いのだろう、当然だ。これから行われるのは未知の世界。人は未知なるものに恐怖を感じるものだ。
でもそうはならない。何故ならこの僕、
「クルト・クルーソーがいるからさぁぁぁぁぁ!!」
僕は大声を上げて二人の間に突っ込んだ。
「な、なんだ貴様!ここがどこだと思ってる!歓楽街だぞ!
その制服、ランクルヴェンディ学院の生徒だな。学則により
夜間の歓楽街のたち歩きは禁止されているはずだ。
先生に報告されたくなかったら今すぐここを立ち去れ!」
「どの口が言ってんだこの変態!
その子まだ未成年だろどう考えたって、もう自警団は呼んである!
そっちこそいますぐここを立ち去らなかったら犯罪者として
摑まるけどいいのか?」
割入ってきた勢いで言葉を飛ばす。自警団を呼んだのは勿論嘘だが
相手は嘘かどうかなんてわかりはしない。
この勝負もらった。
相手は一瞬僕の言葉に驚いたが、すぐに落ち着いた様子にある。
そしてふらっと僕に近づき、僕の頬を舐めた。
・・・え?
「き、きったねーーーーーーーー!なにすんだてめえ!?」
よく見るとやつの舌がわずかに光り魔術式がそこに浮かび上がっている。
まさか。
「私の魔術は相手の頬を舐めることで相手が嘘をついているか分かるというもの。
こんなゴミ魔術のせいでいままで苦労してきたがまさかこんな形で役に立つとはな。
お前のさっきに発言は嘘だ。まだ自警団は呼んでいない。
ならば、お前さえ口封じしてしまえば何の問題もない!」
や、やばい。
間違えた。こんなことになるなんて。くそ、プランBじゃなくて
プランAでいくべきだった。選択を間違ってしまった!
男がじりじりと近くに寄ってくる。
僕は戦闘能力がそこまで高くない。殺されはしないだろうが
言いなりになるまで相当ボコボコにされるだろう。
不味すぎる。
一縷の頼みにすがるしか方法はない。こうなったらコン=ロリーに
本当に自警団呼んでもらうしかない!
後ろを振り返るとそこには・・・
すでに自警団に捕縛されているコン=ロリーがいた。
ん?どうなってるのかな?良く状況が掴めないぞ?
コンの近くには一般住民のかたがいて大声で
「こいつと、あとあっちの!あっちの少年がさっきからずっと尾行みたいなことしてたのよ!あのお嬢さんと男を!というかよくみたらここ風俗街じゃない!
それじゃああっちの男も性犯罪未遂で逮捕ね逮捕!」
あーそういうことか。つまり僕が危惧してたことが起こったわけか。
そうかそうか。
往生際の悪い男がこの場から逃げようとするので身体にしがみつく。
「おまえ!はかりやがったな!まんまと騙されたぞ畜生が!」
本気で焦ってるみたいだ。言葉遣いが汚い。
まあ、想定外偶然があったけどこれで一応目標である
彼女を魔の手もとい変態の手から助けることは達成できたし結果オーライかな。
・・・だけどさ。
「勘弁しろ!性犯罪者め。そっちの自分の罪を認め大人しくしている
少年を見習え!」
違うよ、僕は罪を認めて大人しくしてるんじゃない。あまりの理不尽に悲しんで
抵抗する気が起きないだけさ。だって、だって!
僕は何も悪いことしてないっ!
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