第5章「攻略」
「攻略」1
第5章「攻略」
<1>
孔鶴は大いに喜び、3人をもてなした。
街の半分は燃えたままだが、仮の建物が建ち始め、復興に向けて動き出そうとしている。
「県城から守備隊が来たのは良いんだけどな」
人手が増えるからな。孔鶴はそう言いつつも不満を隠さなかった。
「どうも気に入らねぇのは、あれこれ調べてやがるってことだな」
まあ、調べるのは当然なんだけどな。酒の杯を片手にしつつ孔鶴が口を尖らせる。
「それをおれらには何も言わねぇってのは、気に入らねぇな」
「情報を独占している、ということですか?」
星鉱が口を挟む。
「どくせん?ああ、独り占めな。そう。そうだな。そんな感じだ。何か企んでいる気がする。これは
星鉱と晨鏡が顔を見合わせる。県城で星鉱もそのような話をしていなかったか。
「県の役人である私が言うのもなんですが、ここ北西支城に送られた守備隊は数が多すぎる気がします。復興の手伝い、と言えば名目は通りそうですが、それにしても300は多い。100で足りるでしょう」
「そう。それよ。おれもそれを思っていた。あんたも話が分かるな」
孔鶴に背中を力強く何度も叩かれ、星鉱が目を白黒させる。
県城守備隊3000のうち、1割に当たる300が支城に出張ってきている。
孔鶴が言うには、守備隊は城を封鎖し、住民は一歩も近づけない状態だという。
晨鏡たちも守備隊が厳重に城を包囲している姿を見ていた。
「
星鉱の問いかけに答えられる者はいなかった。
***
翌日、晨鏡たちは昼前に県城に入った。
「またお前か」
例によって緑延は苛立ちを隠さない。しかし、初対面の時と違い、話を聞こうとする気持ちはあるようだ。
「今度は何だ」
問いかけに晨鏡が答える。
「先日報告申し上げました『鉄の怪物』について、『電気禁止法』と関係があるのではないかとの情報を掴みました」
余計な情報は要らない。単刀直入こそ緑延は好むと知って、晨鏡は簡潔に伝えた。
「『でんき』禁止法だと?」
晨鏡をじっと見つめる緑延。
他の者が口にしたら、この時期でなかったら、緑延は鼻で笑っていただろう。
だが、緑延は考えた。
説明のつかないもの。今まで説明がつかなかったもの。
「なるほどな」
一つ頷き、緑延は続けた。
「『でんき』とやらがどんなものなのか。検討がつかぬものに興味はなかったが、『でんき』とやらが何らかの力であり、何らかを動かす力である、という理屈付けが可能なら、鉄の化け物はそれに当たるのかもしれん」
だが…。
「それを知ったところでどうにもなるまい。『でんき』とやらの存在も、仕組みも、我らには分からぬのだからな。とはいえ、一つ言えることは、そいつが旧時代の、『でんき』とやらがあった時代の産物かもしれぬ、ということだな」
緑延が口の端で笑う。
「では、我らに手が出せぬものかと言われれば、そうでもなかろう」
緑延が立ち上がる。
「来るがよい」
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